ゴールデンウィーク最終日。
片岡仁左衛門 片岡孝太郎 能登半島地震チャリティーイベントに行って来ました。
場所はホテルニューオータニ東京です。
これは、元日に起きた能登半島地震で被害を受けた人たちのために何かできることはないかと仁左衛門丈が考えて企画したイベントです。
■舞踊「松の緑」孝太郎
司会の中井美穂さんが本日の趣旨と勧進帳の説明などをしたあと、孝太郎丈の舞踊「松の緑」素踊り。
簡素に設えた舞台の向かって右には長唄連中。左にはお囃子連中。
千回春を迎えても、そのたび青々と茂る松の緑。被害を受けた地域にも早く緑が青々と茂りますようにという思いを込めて。凛々しくしっかりと踊っていらした。
お話。
最近の仁左衛門さんの様子など。80歳となっても妥協をしない、しっかりと芸に精進している様子や、後輩に伝える様子などが楽しく語られました。
■聞く勧進帳 仁左衛門
お話。
勧進帳を聞く会というのは40年前にも行ったことがあり、大阪でも行い、今回は3回目だそう。それは勧進帳の歌詞をじっくりと聞いてほしいという気持ちもあるそうです。今回は、勧進帳の舞台の安宅関は、石川県でもあり、鎮魂の気持ちを込めて語ってくれるとのお話がありました。
仁左衛門丈は、武蔵坊弁慶、富樫左衛門、源義経、四天王、番卒を一人ですべて声の質を変えて人物を演じ分けて聞かせてくれました。番卒も!という驚きでした。
低音から高音まで、何人もの声を演じ分けることができるのは、若い時からの義太夫の鍛錬のたまもの。子どものころから父、13世仁左衛門と兄弟みんなで楽しみながら声の質を演じ分ける練習をしていたとのこと。そのお話もほのぼのと楽しいものでした。(どこまで詳しく書いていいやらわからないので詳細は書きませんが)
いよいよ、「一人勧進帳」。すっくと中央に立った仁左衛門さんの立ち姿の美しいこと。80歳でもこんなに立ち姿が美しいのは驚きです。なんの飾りも背景も衣裳もありません。すっと立っているだけ。スポットライトを浴びているだけ。朗々と語る。その美しさよ。
実はどのようにして語るのかなと思っていました。結構「勧進帳」は長いので、イスに座ってかななどと思っていたのですが、違いました。
富樫の凛々しい少し高い声、番卒ひとりひとりの声の演じ分けから、長唄連中のパートにはいると、すっと一旦はけます。
その後も、出番になるとすっと出てきて語り、すっとはける。弁慶の野太い声、義経の気品に満ちた落ち着いた声、凛々しく知的な富樫の少し高音の声、いずれもすばらしく、目の前に歌舞伎座の舞台が広がっているような錯覚さえ覚えました。
本日のホテルニューオータニの芙蓉の間はかなり広いと聞いていたので、遠くからしか見えないのではないかと案じましたが、横に広くイスが並べられ、多くの人がごく間近に舞台を拝見でき、とても贅沢な時を過ごすことができたと思います。
最後には、収入と支出の詳細な報告があり、まとまった金額が石川県庁に寄付されたということです。元旦の地震からすでに4か月もたっているのに未だに復興が進まぬ能登半島。一日も早い復興を願います。
極力無駄な経費を排して、スタッフも長唄連中もボランティアで参加とのこと。関係者の皆様、大変お疲れさまでした。そしてありがとうございました。