「初めての歌舞伎を楽しもう」munakatayoko’s blog

すばらしき日本の芸能、歌舞伎。初心者にわかりやすく説明します♪

妹背山婦女庭訓 文楽

大阪国立文楽劇場2部は「妹背山婦女庭訓」です。

▲お三輪ちゃん

4月公演では初段から三段目までを上演。今回は四段目。現在できる全てを2回に分けて上演です。

秋には、現国立劇場最後の歌舞伎で9月と10月に分けて「妹背山婦女庭訓」が上演されると発表されたので、予習としてみておくのもいいですね。と言っても13日で千穐楽だけれども。

金殿は、こちらに書いていますけれど(歌舞伎では三笠山御殿)、前後の関係も書いていますので、参考にしてください。

・悪い奴をやっつける 曽我入鹿 vs 求女実は藤原淡海&漁師鱶七
・ふたつの恋愛模様 橘姫→求女 お三輪→求女
・お三輪の恋の哀しい結末

がキーポイントでしょうか。そうそう、やっつけるために必要なものが何かということもこちらで押さえておいてください。

munakatayoko.hatenablog.com


昔は、こういういたいけな乙女の純情を踏み躙ったり、いじめるサディスティックな見せ物が庶民に人気だったのでしょうか。


お隣に座っていた方は、文楽が初めてだったらしく「なんだか、お話が、ぶっとんでいて、」と絶句していました笑。初めてなら1部か3部の方がよかったかもですね。
確かにぶっ飛んだ話ですが、内容を整理してわかってくると面白いですよ。

今回の文楽では、最初に「井戸替の段」がついていました。すごく重要な場面ではないのですが、チャリ場と言って、面白いです。全体的に緊張することが多い話なので、こういう段があると楽しいです。

長屋の借家人たちが大勢集まって井戸掃除をします。終わるとみなで踊るのですが、「ああ、やっとさ、よいよい」と踊っていると、家主があんまり騒ぎすぎとたしなめに来ます。それなのに、家主さんもしまいには一緒に踊ってしまいます。人形遣いの勘介さんが人形を遣りながら、楽しそうに踊っていました(笑)。

「道行恋苧環
浅葱幕が落ちると、遠くの山を背景に鳥居、そして道の両脇にはずらりと並ぶご神灯がぼうっと赤く夜道を照らし幻想的な舞台でした。橘姫、追う求女、そして求女を追うお三輪が会い、女同士の争いとなりお三輪は、橘姫を罵倒します。
「主ある人をば大胆な、断りなしに惚れるとは、どんな本にもありゃせまい。『女庭訓』『しつけ方』よう見やしゃんせ、エエたしなみなされ女中様!」

「妹背山婦女庭訓」というタイトルはこのときのお三輪のセリフからきています。

しかし、詞章が花尽くしで美しい。

〽園に色よく咲く草時は、男女になぞらへ言はば、いはれうものか夕顔の、
梅はもののふ、桜は公家よ、山吹は傾城。杜若(かきつばた)は女房よ。
色は似たりや菖蒲は妾、牡丹は奥方よ、桐は御守殿、ひめゆりは娘盛りと撫子の
さあなるぞえさなるぞえなるとならずと奈良坂や

この手柏の二人の女、睨めば睨む荻と萩、中にもまるる男郎花(おとこべし)。
『放ちはやらじ』と縋りつき、こなたが引けばあなたが留め、恋のしがらみ蔦かづら、
付き纏はれてくるくるくる

いやあ、日本語美しいですねえ。

太夫さん、この日ちょっと調子が悪くて、いつもの張りがなかったので、次の「夏祭」大丈夫かなと思ったのですが、夏祭では絶好調で、長町裏の段を朗々とした声で語りつくしたので、色々な意味でビックリしました。


「鱶七使者の段」
苧環から場面が変わって、急に鱶七が出てくるので、内容を知らないと戸惑います。
ここは、大元の話、つまり曽我入鹿 vs 求女実は藤原淡海・漁師鱶七 に戻るのだと思っておくと混乱しないと思います。

大丈夫、また苧環3人組のうち、求女と橘姫はこの後の姫もどりの段で出てきますし、お三輪は金殿の段で出てきます。(悲しいけれど)

歌舞伎で松緑がやったときの鱶七が印象的でした。松緑にピッタリで、松緑自身も鱶七が大好きなのではないかなと感じます。文楽人形が松緑にダブりました。

「入鹿誅伐の段」
宝剣が龍になって飛び去るのですが、その龍が小さい蛇みたいでウケます。ついに入鹿は首を掻き斬られますが、首がさらに空を漂うのが不気味。

〽首はそのまま虚空に上り火焔をくわっと吐きかけ吐きかけ、飛鳥の如く翔け廻る、一念のほどぞ恐ろしき

恐ろしい入鹿もついに淡海によって成敗されます。淡海って、求女ですけれど凛々しく強い男だったのですね。女関係はだらしなかったけれど…汗。