「歌舞伎を観に行きたい」というお友達をご案内するために、7月4日に、国立劇場に急きょ行ってきました。お昼に待ち合わせ、ランチを食べてからゆっくりのんびり国立劇場へ。2時開場。2時半開演です。
今月は、歌舞伎座は大変な賑わいなので、一幕見を観るのもかなりの行列を覚悟しなければいけない。それならば、国立劇場でのんびり歌舞伎鑑賞教室を楽しんだ方がずっといいとの判断です。間違っていないと思います!
前月に続けての歌舞伎鑑賞教室。今月は前半の「歌舞伎の見方」の解説が坂東新悟くん。後半の演目が「日本振袖始」でした。
巳之助君ほどのパフォーマンス力はないとはいえ、まじめで誠実な新悟クン。とてもよい解説でしたよ。
「見得というのは、大切なシーンのクローズアップであったり、ストップモーションのようなものなんですよ」という説明はわかりやすくて、うんうんとうなづく中高生。
驚いたことは、義太夫の歌詞の説明でした。
「義太夫とは、行動や気持ちを役者と一緒に演じているんですよ」と説明をしたあとで、
「万古目前の境界、懸河びょうびょうとして、巌峨峨たり」という部分を、竹本が謡ったあとで
「難しそうですね。でも実はそれほど難しいことを言っているわけではないのですよ。では現代訳でもう一度うたってもらいましょう」。
「はるかな景色が広がり、川が伸び、岩が切り立っている~~」と、再度竹本が唸ります。
なるほど。わかりやすい。そこまではわかったのですが、なんとそれでは終わらなかった。
「ではもっと現代風にポップなメロディでやってみましょう」と
照明もポップなものにかわり、「ミッキーマウスマーチ」で「今でいうなら島根県!川は広がり、山は急!」とテンポよく歌ってくれたではありませんか!
これには観客も大うけ。心なしか竹本さんは恥ずかしそうでした。
これだよね。たしかにそうだ。わかりやすくて、意味を考える前から拒否反応を起こさずにすみそうだ!と思う反面、ここまでやらないと今の若い人たちにはわからないんだろうなあ。主催者側の苦労がしのばれるという気持ちも少々。
でも、とても腑におちる解説だったと思います。どっと観客席が引き付けられたのもわかりました。
そのあとは、休憩のあと「日本振袖始」になりますが一幕だけなので、そこに至る話をわかりやすく、新悟クンも舞台、通路、と走り回って観客を飽きさせず、説明してくれました。ご苦労様!
新悟クン以外にも、村の男たちが出てきてくれていろいろとセリフを言う中で、私の連れも「マイクなしで朗々と聞こえる生の声がとても気持ちがいい」と言ってくれました。
20分ほどの休憩のあとは、いよいよ日本振袖始。一幕なのであっという間ですが、斬新な衣裳、岩長姫が酒をどんどん飲みほして、寄っぱらっていくところ。ドロドロドロとヤマタノオロチに変身してしまうところ。スサノオノミコトと戦うところなど、見どころはたくさんです。子どもでもわかりやすいですし、どんどん見せてあげてほしいなと思います。
お話
ある村ではヤマタノオロチに、毎年美しい娘を生贄としてささげています。
今年の生贄は、稲田姫です。
夜が更けると、岩長姫が現れて生贄の稲田姫に襲い掛かろうとします。
ところが、8つの甕に入った酒の香りに気づき、グビグビ飲み干してしまいます。それでも稲田姫を一飲みに飲んでしまいます。
そこへ、稲田姫と恋仲のスサノウノミコトが現れます。岩長姫はヤマタノオロチとなって激しい戦いを繰り広げますが、ついに破れます。稲田姫は、ヤマタノオロチが飲み込んだ宝剣を探し出し、ヤマタノオロチの背中を切り裂き、飛び出て助かります。
カンタンに言うと、こんなお話です。
台本は300円で、大きな文字でわかりやすく、注釈もあるので親切。
私は、岩長姫が「やあん。◎◎。やあん◎◎」と言っているところが何と言っているのかわからなかったのですが、台本を見てみると
「やあん。楊柳枝、楊柳枝、やあん、鉄仙花、鉄仙花」というセリフでした。
何じゃらほい?と思って注釈を読んだところ、「楊柳枝は柳の枝のこと。鉄仙花は、つる植物鉄線のこと。大蛇は酔いがまわり、植物や花の名前を挙げ連ねて歌っている」と書いてありました。
えー。そ、それはつまり、酔っ払いが、「梅は咲いたか~、桜はまだかいな。あ、ちょいなちょいな」とうたっているようなものでしょうか!? なんだか親しみを感じてしまいました。
笑ってしまいますね、丁寧な注釈でとても深く楽しめますよ。
ついに毒蛇は「毒酒の酔いによろ、よろ、よろ。落ち来る木の葉は、はら、はら、はら」とよろよろしながらも戦いますが、スサノオノミコトにはかなわず倒れてしまいます。
演じるのは、稲田姫が先ほど解説をしてくれた新悟クン。
岩長姫が時蔵丈。スサノオノミコトが錦之助丈。時蔵さんと錦之助さんはご兄弟です。そんなことも知っていると尚楽しいですね。
今日の連れは、歌舞伎は2回目。きれいな衣裳やちょっと破天荒な展開をまっすぐに受け止めてくれて、とても楽しかったと言ってくれました。
「ん?なぜ、背中から出てくる?と思っても、それでいいんですね」
「うん。それでいい。あまり、むずかしく考えないで!」といったら納得してくれました。
そのあと、伝統芸能情報館で、千両箱を担いで記念写真も撮りました
先月も書きましたが、鑑賞教室は本当の役者の解説付き一幕見ツアーのようなもの。4000円で安くて、短時間であるのも魅力です。
3時半には終わり、お茶をしてあーだこーだと感想を言い合って帰りました。時間的余裕がうれしいですね。
7月24日まで。国立劇場にて。
7月26日・27日は神奈川県立青少年センター
日によってある「親子で楽しむ歌舞伎教室」は、お値段もお得です。
ぜひ小さいお子さんのうちから歌舞伎に親しんでみてくださいね!
http://www.ntj.jac.go.jp/schedule/kokuritsu_l/2018/3072.html