「初めての歌舞伎を楽しもう」munakatayoko’s blog

すばらしき日本の芸能、歌舞伎。初心者にわかりやすく説明します♪

初日「真景累ヶ淵 豊志賀の死」を観る

8月花形歌舞伎2部の「真景累ヶ淵 豊志賀の死」、初日に観劇しました。

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先日のブログで、過剰に笑いを取るような化粧や演出はしないでほしいと役者さんにお願いをしました。詳しくはこちら。

munakatayoko.hatenablog.com

 見事に願いはかなえられていた!

七之助よ、ありがとう!

 

私が見た、以前の「豊志賀の死」では、お化け屋敷的な豊志賀の化粧と「ほらほら、どうだ」という過剰な演出に観客も笑っていたので、かなり違和感がありました。

 

美しい!七之助豊志賀

それで、おっかなびっくり昨日初日の「豊志賀の死」を観てきましたが、見事に美しい豊志賀。

目の腫物が痛々しいけれど、口はおちょぼ口で美しかった。(以前の豊志賀は、口もひん曲がった化粧にしていた)

お化け屋敷的な演出も過剰ではなく、あくまでも豊志賀は女らしく美しく、ただ心の中はメラメラと猜疑心と焦りでいっぱい。だからこそ、哀しさが倍増すると思うのです。

演技で魅せる幽霊

幽霊の場では、幽霊そのもの。もしかして足ないんじゃないの?とオペラグラスでのぞき込んでしまったほど。新吉についてくるときは、ススス~っと。勘蔵の家で座っているときは微動だもせず、それなのにゆら~りとしたたたずまい、そして美。その存在は幽霊そのものです。

ことさら怖い声を出さなくても、化粧でごまかさなくても演技で見せる。とても怖い!

 

怖れる!鶴松新吉

お化け屋敷的な演出としたら、腰が抜けるほど驚いたり、震えたり、慄いたりする鶴松クン扮する新吉だけれど、これはこれでいい。多少笑いが出ても、それはいい。

 

新吉の、一生懸命尽くしたい、でも限度がある。もう耐えられない。でも耐えられない自分が悪いのではないか。

豊志賀が怖い、気持ちが悪い、逃げ出したいと思う自分が悪いのではないか。もっと耐えなければいけないのではないか。という気持ちがツライです。哀しいです。哀れです。

 

今、そんな気持ちでいる人、逃げてくださいね。

 

義理を忘れるなという伯父勘蔵の言葉にも追い詰められます。

 

そんな新吉の哀しみというのも出ていたと思う。

上手い!勘九郎

ずっとお父さんの背中を追っている勘九郎ですが、最近はお父さんよりいいような気がします。ただの思い入れかな?

何せ声がそっくりで、本人も一生懸命真似をしているからどうしたって似ているんですけれども、比べてみても今回のお役 さん蝶、よかったです。

 

しいて言うなら、扇雀扮する伯父勘蔵、大切な役どころですがいまいち存在感が中途半端な感じがしました。善意の人ですが追い詰めますよね。

 

最後はギャー!で終わります。これも以前よりはよかったけれど、本来7人の妻も殺してやるという遺書を書いて豊志賀は死ぬんです。その呪いは実現されていくという話なので、その遺書を発見して、呪いを知って、ブルブル~で終わりでもいいと思うんだけれど、どうでしょうか。ない方がいいかなあ。

 

鶴松クン大抜擢。

興奮したので七之助のことから書いたけれど、今回の話題はなんといっても鶴松クン大抜擢。

本人も

身に余る大役をつとめさせていただけること、心から有難く、嬉しい気持ちでいっぱいです。(中略)勘九郎の兄、そして師でもあり父でもある勘三郎さんが勤めてきたお役、全身全霊で勤めたいと思っております。(筋書より) 

 

と語っています。

文字通り、頭のてっぺんから足の先まで全身全霊で奮闘している覚悟のお役、ぜひ観てあげてくださいませ!

 

上演時間はこちら

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