「初めての歌舞伎を楽しもう」munakatayoko’s blog

すばらしき日本の芸能、歌舞伎。初心者にわかりやすく説明します♪

楼門五三桐 歌舞伎座夜の部

わずか15分の演目なのに、目にも心にも焼き付く。そんな演目です。

一幕見でみれば、たったの500円!

はじめての歌舞伎にいかが~?

 

ただし4階席だと、最後に五右衛門が見切れちゃいます!

まずは、解説を~~。

 

■作者: 初代並木五瓶

■初演: 1778(安永7年)4月、大阪角座。

「金門五三桐」という長いお話の中の一シーンで、たったの15分!

 

■登場人物 ()内は今回演じる人

石川五右衛門吉右衛門

真柴久吉(菊五郎)

右忠太(歌昇)

左忠太(種之助)

 

■あらすじ

(1)京都の南禅寺の門の上。ここに石川五右衛門が住んでいます。都の景色を眺めて「絶景かな。絶景かな」とその景色を愛でていて、ゴキゲンです。

 

(2)そこに一羽の白鷹が飛んできました。くわえているのは白布。それは大明国の宗蘇卿(そうそけい)の遺書でした。そこに書いてあったのは、

・五右衛門が大明国の宗蘇卿(そうそけい)の遺児であったこと。

・父宗蘇卿(そうそけい)も、育ての親武智光秀(明智光秀)も、どちらも真柴久吉(豊臣秀吉)が殺したということ

 

(3)五右衛門は父と育ての父の仇が久吉と知り、討とうと決意します。わなわなと震えながら

「たとえこの身は油で焼かれ、骨は微塵に砕けるとも、この恨み、今にぞ報させくれん」と怒り心頭です。

 

・怒りに震えているところに、敵が襲い掛かります。

「これは、うぬら。何者なるぞ」

久吉の忠臣、右忠太、左忠太でした。盗賊石川五右衛門を探しながらなかなか見つからないでいたところ、白鷹を追ってきて、五右衛門を見つけたのでした。

立ち回りになりますが、あっという間に二人を蹴散らかす強い五右衛門。

 

(4)そして、ここで山門がぐっとせりあがります。

 

楼門に書き付けた和歌を詠む巡礼の声が聞こえてきます。

「石川や浜の真砂は尽くるとも、世に盗人の種は尽きまじ」

 

「なんと!?」むっと思った五右衛門。

 

「巡礼に」と久吉。

五右衛門。かっと声のする方に小刀を下に投げつけます。

ひしゃくでパンと小刀をキャッチ。

「ご報謝」と久吉。

二人ともポーズを決めて幕。

これで全部です。

 

え?これだけ?と思うのも当然の、ほんの15分の演目です。でもすごいんですよ。

ザ・歌舞伎ですね。

 

■見どころ■

幕開け

定式幕があくと、水色の幕がはられています。浅葱幕といいます。浅葱幕は、ぱっと一瞬で大道具や役者を見せるために使われます。ex幕が切って落とされる

通常の幕だと、徐々に中の様子が見えてしまいますからね。

 

浅葱幕の間に大薩摩の演奏があります。今回これが素晴らしいので堪能してください。

 

朗々として素晴らしい大薩摩

「だんまり」や荒事の前に幕の外で三味線一人と長唄一人が立って演奏するのが大薩摩。舞台の幕が開いたのに、またまた幕がかかっているし、一体これから何が始まろうとしているんだろう?と思うと、スタスタと若者が縦長の木の箱のようなものを持ってきます。そして、すっと幕の中に入っていきます。入れ替わり入って来るのが、裃を付けた三味線と長唄の方。今から大薩摩(おおさつま)が始まるのです。

 

べべんべんべんべん。日本のロックってこれじゃないですかね!

すばらしい三味線のテクニックに拍手が起こります。今回は長唄も朗々としたお声。

4階幕見席までガンガン響き渡り、大向こうもかかります。

 

そして、すっとお辞儀をして幕の中に入り、先ほどの若者が木の箱をしまいにもどります。

 

豪華絢爛な大道具

そして、浅葱幕がチョンと切って落とされると、舞台には華やかな楼門。どまんなかに石川五右衛門人間国宝 中村吉右衛門!)です。

 

(楼門のセットは、現在歌舞伎座ギャラリーで展示されているので、五右衛門になり切りたい人は、ぜひ歌舞伎座ギャラリーへ!)

 

これは楼門の2階部分という設定です。あとで、久吉が現れてくるところから楼門ががーっとせりあがる大がかりな仕掛けです。

 

存在感のある役者

芝居の内容が「景色をながめて上機嫌。仇がわかる。カッとする。仇が下にいた。刀を投げつける。

というだけの芝居(笑)。しかも大道具が絢爛豪華。とすると、役者によほどの存在感がないといけません。

 

今回の役者は吉右衛門菊五郎。動きもなければセリフも少ない。ストーリーもこのシーンだけ。それでも、これだけの存在感、あとになってもぐっと心に残る残像。それはこの二人の人間国宝の演技のたまものなんです。一分の隙もありゃしません。

吉右衛門74歳。菊五郎76歳。背筋も伸び、声にも張りのあるお二人の演技を心にしっかりと刻み付けましょう。

 

手裏剣投げに瞬き厳禁

五右衛門が投げた手裏剣(小刀だけどね)を、ひしゃくでハッシと受け止める久吉。ここは、瞬き厳禁でお願いします。3階B席以上だと、投げつける五右衛門の顔が見切れてしまうのがまことに残念…。

 

にくいぜ、久吉「巡礼にご報謝」

ひしゃくは、よく我々も神社で手を洗うときに使うひしゃくです。久吉は巡礼をしています。巡礼の途中で、人からお金や食料などをいただくときに使うこのひしゃくを使って、手裏剣をキャッチして、「ご報謝」と手をあわせる。「小刀サンキュー」みたいな感じでしょうか。にくいですね。

 

しかし小刀を投げて、必ずひしゃくでキャッチできるものでしょうか?これは小道具の仕掛けがあります。絶対に成功する仕掛けです。(^^)/

 

昨日の状態では、そんなに待たなくても幕見のチケットは買えましたが、4時過ぎにはお立見になった模様。15分なので、立ち見でもそれほどつらくはないと思いますが、何せ、見切れちゃうので、なるべく前のほうの席をとったほうが良いかと思います。

 

 

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