「初めての歌舞伎を楽しもう」munakatayoko’s blog

すばらしき日本の芸能、歌舞伎。初心者にわかりやすく説明します♪

中村獅童のHOW TO かぶき『鞘あて』『供奴』『橋弁慶』観劇レポ

今日は、松竹特別歌舞伎に行ってきました!6月30日(日)から7月31日(水)まで全国を回る巡業です。

 

 

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本日の会場は、小平市ルネこだいら。私は20年ほど小平市に住んでいたので、懐かしいルネこだいらです。子供の合唱祭とか成人式とかで、おせわになりました。

 

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▲大きな丸ポストが有名です

 

 

さて、プログラムは

 

でした。3時間半くらい。今回はスクリーンがうまくつながらず、10分ほどのびたようです。毎日場所が違うというのは機器の面でも本当に大変。スタッフのご苦労も忍ばれます。

中村獅童のHOW TO歌舞伎~化粧から着付けまで舞台で披露

まず舞台正面中央に正座でご挨拶。その後は終始リラックスムードで、話す内容も毎日変えるとか。質問も受けながら対話形式で進む。

歌舞伎の歴史を簡単にポイントを押さえて説明したり、くまどり、見得、ツケ打ちなどの説明も。

 

本日は何と夏幹くんがスペシャル登場。幼稚園降園後に来て、どうしても出たいとのことで打ち上げの見得を立派にやってくれました。場内大歓声。

考えてみたら、どの会場にも行けるわけではないと思うので本当に今日夏幹くんの見得を観られた私たちは超ラッキーだったかもしれませんね。

【追記】その後の巡業では夏幹くんも同行していた土地も多かったようでした。

 

蝶紫、國矢、獅一が浴衣姿で登場し、今から演じる鞘あての化粧を舞台で一から行ってくれました。見にくいだろうからとスクリーンで大写し。これがちょこっとトラブったんですね。それほどのトラブルでもなかったけれども。

 

化粧ってテレビの撮影などではメイクさんがやるけれど、歌舞伎役者は全部自分でやる。それは自分で自分の顔を研究して、より大きく見せるように工夫するからだそう。また、写実になりすぎないという口伝もあるそうで、目の前で見るなんてことはなかなかないので、面白かったですね。

 

パッパと手際よく化粧を終えると、次は衣裳。不破伴左衛門役の獅一さん、堂々と立派に見せるために、肉襦袢をつけてました。まさに座布団をしょってるようなもので、見るからに暑そう~~~。衣裳係も手伝いながら着つけていきます。最後に鬘をかぶせて出来上がり。

 

通常は、お化粧をし、着つけていくうちに次第に役に入っていきますが、今日は舞台上ですから役にすんなり入るのは大変だったでしょうね。

 

役者さんによって、役への入り方はさまざまだそう。静かに黙って音楽を聴き、化粧をしながら役に入り込んでいく人もいれば、ずっと野球の話などをしているのに、寸前にピタっと役にはいれる人もいるそうで。誰かしら(笑)。気になりますね。野球好きと言えば歌舞伎役者さんの中にはたくさんいるけれど……(笑)。

 

獅童丈が軽快なトークで盛り上げながらのHOW TO歌舞伎でした。

そのまま大道具の転換があってすぐに鞘あてが始まったのはよかったです。いつも歌舞伎教室では「歌舞伎の見方」のあと15分くらい休憩となってしまい「おいおい、まだ歌舞伎は観られないのかい」と失笑がわきますから。

 

大道具の転換で、舞台はあっというまに吉原へ。鞘当てと供奴がどちらも吉原なので、大道具の転換がないのも省エネでよかったですね。

■鞘あて~一触即発の危機回避

名古屋山三と不破伴左衛門が吉原仲の町というあでやかな色町ですれ違い、刀の鞘が当たったということで喧嘩になり、お茶屋女房が止めに入ります。

 

実は名古屋山三と不破伴左衛門は、一人の傾城をめぐって恋敵となっていました。そりゃ、刀が当たっただけでも喧嘩になるわな。その上、山三の父親を殺したのが不破伴左衛門ということがわかってしまいます。

刀をお互いに取り換えて差したところ、すんなりと鞘に収まったので、

「これは、父が殺された時に紛失した刀だ!ということはこいつが犯人だ!」とわかるのです。

 

でもここでは留女に喧嘩を止められて、二人はひとまず別れていくというのが『鞘あて』のあらすじです。

もとは長いお話の一部なので、なんだか中途半端なストーリーのようですが、獅童丈も「歌舞伎って意味がないような話に、いかに意味を持たせるかという面もあるのでおおらかに楽しんで(大意)」というように言っていたし、私も本当にそう思います。

 

なんとなくぼや~っと見るのも歌舞伎を楽しむ一つの手なんですよね。あまりぎちぎちに突き詰めようとするとしんどくなったりするので、ぼやーっと楽しむのはおススメです(笑)。

 

さて、色男の山三國矢、声がよくとおって綺麗でしたねえ。不破の獅一は堂々と立派でした。そして留女蝶紫!凛としていてよかったです。

 

蝶紫丈は先の化粧のときも舞台で、披露してくれたのですが、「女方ですので」舞台での着替えは遠慮していたんですね。舞台に引っ込むときにはすでに女性になっていたので、すごいなと思いました。留女はそれなりに格のある女方が演じることになっています。あんまり新人のお女中さんが止めに入っても、喧嘩を止められそうにもありませんものね。ビシっと決めますよ。

■供奴~あわてんぼう奴(やっこ)さんの楽しい踊り

これは舞踊です。種之助がきびきびとした踊りを見せてくれてとてもよかったです。

吉原にでかけたご主人のお供をしていた又平、途中ではぐれてしまいおいかけてきました。なかなかご主人見つからず、自分の奉公ぶりを自慢したり、ご主人の自慢をしたりして踊っているうちに、肝心の御主人のいる揚屋を通り過ぎていってしまったという内容です。

 

奴という恰好がピッタリすぎて(いや、種之助は女方もなんでもうまいのですが)本当に人形にして持ち歩きたいほどです(笑)。アクスタ欲しいなあ。

 

奴又平種之助はがっちりした筋肉質です。

軽やかなのに力強く、キレがあるのに、ブレがない。

そして男らしいのに愛らしい。

両足を広げてバンっとお尻から落ちたり、クルっと回ってピタっと横ギバで落ちたり(横向きの姿勢で落ちる)、一つひとつの所作がピリっとしていて生ぬるくない。

ラストも提灯を持ってギリギリギリっと腰を落としての停止。ナイスポーズでした。

 

ちょっと最近低空飛行でしょぼついていた私の心ですが、スッキリスカッとしました。

うしろの席の方の「すごいわねえ」とのつぶやき。そして何度も拍手が起こり、幕がしまったあとはほお~っとジワが起こりました。

■橋弁慶~パパ弁慶たじたじ。はるクン牛若丸大活躍

五條大橋で人を斬りつけると言えば弁慶を思い浮かべますが、「橋弁慶」は、逆に斬りつける少年が牛若丸。やっつけようとするのが弁慶。やっつけられて牛若丸の家来になるというのは同じです。

 

2023年3月に国立劇場で牛若丸を演じたのが種之助でしたねえ。

2022年6月の博多座では、萬太郎でした。

 

さて、今年の牛若丸は!?なんと7歳、中村陽喜クンなのでした。

トテトテと歩いて、ピッと顔を決め、パパ弁慶と丁々発止。なんともほほえましい、今までに見たことのない『橋弁慶』でした。

 

それこそお人形のよう。弁慶は最後、牛若丸を見送ってその雄姿にほれぼれして「はあ~」とため息をつくのですが、今回に限ってはパパがホッとしたため息に聞こえましたね(笑)。

 

幕が下りても拍手はなりやまず。カーテンコールで再びパパ弁慶とわんぱく牛若丸が出てきてご挨拶。小さい子どもから歌舞伎ファンにもますます楽しんでもらえるようにと言った獅童のずっと変わらぬ想いが語られて、打ち出しとなりました。

 

惜しむらくは、花道が短く、特に本舞台に入るところが一段と狭くなっていて、供奴の最初のところがとても踊りにくそうだったし、パパ弁慶は長い刀がコツンなんて壁にぶつかってしまい、気の毒でした。

思う存分、奴さんには歌舞伎座で踊らせてあげたい!弁慶さんにもブンブン刀をふりまわさせてあげたい!と思いました。とはいえ、巡業はどこの会場でも同じような問題があると思いますので、頑張ってください。

 

獅童丈の言った通り、園児から歌舞伎ファンまで楽しめる内容ですので、どうぞ皆さん楽しんでください。すでにチケ松ではチケットは完売ですが、現地の会場に問い合わせるとまだ購入できるかもしれません。(そうやって取ったことが過去にありました。)

 

長い巡業となりますね。大人でも大変なのに、小さな陽喜クン体調を崩さぬよう頑張ってほしいです。朝起きたらお芝居ごっこ、帰ってきたらお芝居ごっこととっても元気な様子も獅童パパの口から語られましたが、ともかく家庭とは違う環境での長丁場、無事に千穐楽を迎えられますように。

日程はこちら。

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