「初めての歌舞伎を楽しもう」munakatayoko’s blog

すばらしき日本の芸能、歌舞伎。初心者にわかりやすく説明します♪

『南総里見八犬伝』~円塚山の場(まるづかやま)感想 若手で力強く!

円塚山の場(まるづかやまのば)

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南総里見八犬伝』という長いお話の中の一場面で、上演時間は30分。この場面は仁義礼智忠信孝悌、一字ずつの珠を持つ八剣士の出会いを描くところで、だんまりのみ。

となると、正直言うと特に期待はしていなかったのですが、よかった。

夜の部の幕開きとして、よかったですね。

 

30分という短い時間の中でも、名刀村雨丸が次々と人の手に渡っていく様子を描く。

浜路が愛する犬塚信乃のために村雨丸を左母次郎から取り返そうとする。志半ばで息絶える。左母次郎が炎の中引きずり込まれていく。寂莫道人が手に入れるというのがスピーディーだし、わかりやすい。

そこへ次々と現れる剣士たち。今はまだ味方とはわかっていないけれども、あらあら不思議、皆がそれぞれ持つ光る水晶の玉は一体…!?

 

剣士たちは、浅草祖卒業組を始め、橋之助染五郎、左近という若手の中の若手もきびきびと気持ちよく。

 

30分でそこそこストーリーも見せつつ、見せ場もあり、よくまとまっていたなあと思う。まさに一幕見向けだった(残念ながら今月はツアー開催できず)

 

特に、染五郎がバーンと出てきたときには一瞬隼人かと見間違ってしまった。それほど背が高くなっていて、顔は鼻筋がとおっていて絵になっておりちょっとびっくり。本当にすぐ大きくなってしまうのだなあ。まだ19歳。空恐ろしい。

 

そして左近!昼の部の『時鳥花有里』で、あれだけ美しい白拍子姿で魅了していたのに、夜の部の犬江親兵衛では、がっつりとしっかりと立役でこれまた「誰だ!」と思ってしまった。こちらは18歳!

最近女方で滅法きれいなので(そして本人もまんざらではないらしいのでw)女方を推していこうと思っていたけれど、こういうのを観ちゃうとやっぱり兼ねる役者を目指してほしいかな♪ 

しかし、浅草卒業組(歌昇、隼人、松也、巳之助、米吉、種之助、新悟ーこの演目に出ているのは、歌昇、巳之助、米吉、種之助)が若い若いと思っていたのに、そろそろ30代で、下の代がまたどんどん出てきているのが頼もしいこと。

なんならU-10もひしめき合っているしね。楽しみです。

 

そして、この演目を最高に見どころ満点にしてくれたのが、最後の犬山道節(歌昇)の幕外の六方の引っ込みだった。

六方というのは、天地東西南北に手を伸ばし、迫力ある動きをしながら引っ込んでいく動作をいうのだけれど(勧進帳の弁慶の六方などが有名ですね)、これがなかなかすばらしくて、ホントにこれを見るだけのためにもう一度来たいと思わせてくれた。実際これを観たくて何回も行った。

 

今月パスポート購入したので何回か見られたのだが、皆思っていることは同じだったのか、ついに2階の東席をゲットはできず。。無念。(パスポートは2階の席のみ有効なのだが、東席だと花道が最後の最後の揚幕に引っ込むまでしっかりと観られるのだ)

 

六方で、体全体のエネルギー大放出。その顔にちょっと2世吉右衛門の姿が彷彿としたと言ったら、吉右衛門に「まだまだ~~~っ!喝!」と怒られるかな。

 

それにしても吉右衛門最後の舞台が『楼門五三桐』で、楼門の上で切り合う捕り手二人が歌昇、種之助だったことを思うと、花道で二人の力者をいなす歌昇を見て、やはりちょっとグッと来た。

 

播磨屋!」の掛け声もたくさん飛んでいた。

立派だった。歌昇道節。このままがんばってほしい。