「初めての歌舞伎を楽しもう」munakatayoko’s blog

すばらしき日本の芸能、歌舞伎。初心者にわかりやすく説明します♪

阿古屋~動と静、美とおかしみ、理知と邪知のアンサンブルを楽しむ

ブログが滞っていて、申し訳ない。すでに3月になってしまったのだけれど2月のことをぼちぼちと。

2月の演目の中で一番多く見たのは『阿古屋』6回。

一度、阿古屋(玉三郎)が出の花道でストンと腰を落としてしまったことがあり、驚いた。ところが全く流れが損なわれず、何の乱れもなく、粛々と芝居は続いていったので、何か見間違えたのかと思ったほどだった。阿古屋が引っ立てられていく途中で座り込んだとしてもおかしくはないし、自然と納得してしまった。捕手たちもあわてなかったのがよかったのだろう。

上手から、センターから、下手から見たが、上手では岩永(種之助)がよく見えて楽しく。センターでは重忠(菊之助)がほれぼれするほど品よく美しく、下手からは、階段で阿古屋がぽーんと体を投げ出した時の姿が最も美しかった。

美しい重忠と阿古屋が魅せる一方で、岩永と武田奴の動きが見せる。

一体に動きの少ない芝居だから、岩永や武田奴の趣向が生まれたのだろうが、昔の人は何と面白いことを考えるものだろうか。

武田奴は、岩永の家来として出てくる大勢の奴たち(文楽では人形遣いがひとりで操るツメ人形)だが、ぴょんぴょん飛び跳ねるような妙な動きと「ちちちちちち」という声を発して出てきてゆらゆら動き、重忠に不要であると言われてちちちちと戻って行くだけの役である。顔は、各自オリジナルな化粧をしていてユニークで面白い。

役者たちはここぞとばかりに目、鼻、口を出鱈目に配置したり、強調したりして、アピールしている。

これが1人のデザイナーが全員の顔を描くのであればここまで面白くならないだろうに、一人一人に顔の作り方を一任しているからこその面白さがある。

写真は出せないが、阿古屋と武田奴が表紙になっている本を紹介しておこう。以前にもブログで紹介しているが、古い歌舞伎座へのオマージュを込めた写真集でこれはこれで素晴らしい。

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