「初めての歌舞伎を楽しもう」munakatayoko’s blog

すばらしき日本の芸能、歌舞伎。初心者にわかりやすく説明します♪

木ノ下歌舞伎~糸井版摂州合邦辻~すばらしく面白いよ!

本日は、KAAT神奈川芸術劇場で「木ノ下歌舞伎 糸井版摂州合邦辻」を観てきた。
再演も3回目とのことで、さすがに練り上げられた素晴らしい作品だった。私は初めてだったけれど、とても感動した。

 

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▲あ!勘十郎さんからお花!

古典と現代とのまぜこぜなのに、違和感なし

私、摂州合邦辻は、歌舞伎では観ていない。文楽では何度も観ているし、なんだか今年だけでも藤蔵さんの素浄瑠璃で聴いて、道行再考の俊徳丸でも観て、すでに3回目な感じ。なので口語でないところは逐一セリフを床本(と詞章)で確認するという嫌味な客。もちろんカットする部分はあるが、古典での台詞部分は、きちんと逐一なぞっており素晴らしいと思った。情景描写含めてまるで浄瑠璃を聞いているよう。

 

浄瑠璃の摂州合邦辻,

あらすじなどもこちらに書いています。

munakatayoko.hatenablog.com


特に合邦庵室の段は狂気じみていた。

「あっちからも惚れてもらう気!」の「気!」のところはやはり気が入っていた。

玉手と浅香姫が争うところでは人形ぶりとなり、「蹴殺す!」のところでは、まるで人形がパーンと足を振り上げたみたいに、玉手の足が天井まで届くかと思ったほど。

 

古典に沿っているかと思えば、過去の回想場面では幼子だったころの玉手が「パパ、パパ」と抱きつく。まさか玉手と合邦が「パパ パパ」「娘よ」とダンスを踊るとは思わなかった。ここにもグッときてしまった。

小さいときにはあんなにかわいかったのに、反抗的になってしまって…みたいな気持ちは、ある程度子どもが大きくなった親ならわかりすぎるくらいわかる描写だものねえ。


こうやって書くと、いかにも突拍子もない演出だと思われるかもしれないが、それが全然そうではないのだ。


木ノ下歌舞伎は、まずすべて歌舞伎の台本にのっとって完コピをするというので、古典と現代のまぜこぜはいつものことだけれど、今回は再演3回目とあってホントにセリフがスムーズ。現代風の衣装をまといつつ、現代語パートと古典パートの使い分けがまったく違和感ない。そしてセリフが皆さんうまい!

歌が素敵 優しいメロディラインと胸に届く歌詞

劇中歌がそれぞれとてもよかった。

すべて作詞は糸井幸之助。作曲は?
「バウワウソング」は俊徳丸の気持ちが切なく迫る。
「パパっ子」もグッときてよかったけれど、最後の「街の墓」の歌詞がなんといっても。

歌詞ってここに書けないので残念だけれど、なんだか歌舞伎界にとって大切な人がいきなりいなくなってしまったという状況の今、すごく心にしみる歌だった。

役者さんたち

内田慈(玉手御前) 

狂気に満ちた愛、恐ろしいほどの色気、迫力、切なさ。すばらしかった。


土屋神葉(俊徳丸)

声優もやっているだけあって、声の音域広い!野太い声から幼少期のかわいい声まで、驚くほど幅広かった。愛しくてはかなげで運命に翻弄されながらも幸せになってよかった。


永井茉梨奈(浅香姫) 

かわいくてすてき。お姫様らしい品の良さと凛とした強さがあった。


谷山知宏(奴入平)

個性的な声とアクションでとっても印象に残る俳優さん。前回(桜姫)から注目!おちゃめなところもグッド。


武谷公雄(合邦)

こちらの俳優さんも前回(桜姫)から注目!役所広司ばりの実力では?
合邦の武士としてのプライド、それを捨ててまで生きる強さ、そして娘への不器用な愛。「浄瑠璃にのって演じている人形」のような完璧なしぐさに圧倒された。


西田夏奈子(おとく)

玉手のお母さん。すばらしい演技力!玉手は愛のためにか、それを忠義にかえてか、死んでしまったのだけれど、母親にとっては「なぜ」死んだのかというのはもはやどうでもよく、とにかく娘が死んだことがただただ悲しい。最後の最後に、情けないほど鼻水を出して、悲しい顔をしているお母さんに、胸が詰まって泣いた。

 

他の皆さんもみな素敵でした。

 

神奈川KAATでは、4日までだそうで、未完成ながら慌てて感想を書きました!

まだお席はあるようです!行ける方はぜひ!

 

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