「初めての歌舞伎を楽しもう」munakatayoko’s blog

すばらしき日本の芸能、歌舞伎。初心者にわかりやすく説明します♪

浮世絵で楽しむ邦楽「河竹黙阿弥の世界」~紀尾井小ホール

13日に、浮世絵で楽しむ邦楽~大谷コレクション2「河竹黙阿弥の世界」に行って来ました。

 

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浮世絵好き。黒御簾音楽好き。黙阿弥好きの私としては行かない手はないじゃないですか?

午後、吉右衛門写真展で魂を揺さぶられ、その後1件取材をして、6時半から紀尾井小ホールに駆け付けました。

 

大谷コレクションとは、ホテル・ニューオータニにゆかりの深い実業家大谷米太郎氏のコレクションのこと。現在はご子息の孝吉氏の所蔵で、浮世絵だけでも3000点あるとか。

その中から今回は「河竹黙阿弥」に関係のある、迫力のある芝居絵12点を観ることができました。

浮世絵で楽しむ「白浪五人女」??

冒頭は「河竹黙阿弥の女たち」というタイトルで、渡辺保先生がある演目に所縁のある浮世絵をスライドで大きく映しながらの講演でした。

その演目とは「白浪五人女」

「白浪五人男」と言えば、黙阿弥の名作でご存じの方も多いでしょう。しかし、「白浪五人女」という演目があることを私は知りませんでした。江戸時代から今までに3回しか上演されたことはないそうです。

 

「白浪五人男」は「雁金五人男」という話をもとに作られました。

では「白浪五人女」は?というと「雲霧五人男」をもとに作られた演目だそう。

「雲霧五人男」は雲霧仁左衛門率いる泥棒集団の話で、テレビドラマの「雲霧仁左衛門」が大好きだった私は、内心大興奮。

雲霧仁左衛門が雲切お六という女性の女窃盗団の頭になっているというではありませんか。

そのほか、須走り熊五郎が須走お熊、木鼠吉五郎が木鼠お吉という具合です。(引き続き大興奮)ぜひぜひ、「白浪五人女」、歌舞伎で観てみたいものです!

 

で、白浪五人女のお話も、五人男のパロディというわけではなく、おもしろいストーリー展開となっているのでした。これらを浮世絵をスライドで大きく写しながら、演じている役者のエピソードも交えながら、柔らかな口調でわかりやすく語ってくれる渡辺保先生よ。

黒御簾音楽で聴くサワリの部分

で、今回の趣向では、幕開きや、ゆすりの場面での登場、ゆすりの場面、まんまと金をせしめた後、勢ぞろいといったおなじみの場面での「五人男」と「五人女」の違いを、生で聴きます。

三味線/杵屋巳太郎、和歌山富之、杵屋優人

唄/杵屋巳勇次、杵屋彌六朗、杵屋喜三助、杵屋佐陽助

お囃子/田中傳佐衛門社中

 

たとえばゆすりの場面。

五人男の弁天小僧菊之助が盗人の正体がばれての居直りのところで演奏されるのは、端唄「さつまさ」。原曲とも聞き比べ。聞き比べてみると原曲の方はずっとテンポアップしており、五人男で歌われているときはねちっこいのだなとわかります。

ここらへんの演奏を生で聞いていると、目の前に弁天小僧菊之助が浮かび上がってくるようです!横で聞いている渡辺先生もニコニコです。

 

「五人女」でも同様に原曲は長唄の「月の巻」ですが、やはり原曲の方がテンポが速いのでした。

 

いつも何気なく聞いている黒御簾音楽ですが、実に場面ごとに適したBGMが流れていることに今更ながら気づかされ、又目の前に舞台が広がるようでもあり、大変興味深い企画でした。

豪華!長唄「茨木」

巳太郎さんと渡辺保先生のトークの後、休憩をはさんでいよいよ長唄「茨木」。

渡辺綱に腕を切り取られた鬼が、腕を取り返しにやってくるという話ですね。

鬼が来ると知り、門を固く閉じていた綱ですが、叔母がやってきてあけるようにいいます。最初は、入れるわけにはいかないと拒んでいた綱ですが、

 

〽生みの親にも勝りたる、恩ある叔母をこのままに、帰すも本意ならざれば閉ざせし門を押し開き。

 

中に叔母を入れます。叔母は鬼神の腕を見せてほしいといい、唐櫃の蓋を開けて見せると

 

〽次第次第に面色かわり 隙を伺いかの腕を、取るよと見えしが忽ちに、鬼人となって飛び上がれば

 

とかなたに飛び去っていくんですねえ。

 

笛に太鼓に三味線に!迫力のある演奏に、拍手喝さいでした。今回、この企画のために巳太郎さんが構成をし直してくれ、詞章もついており、より楽しめました。

 

いつもと違った視点で、観て、聞いて、感じて、ますます歌舞伎の奥深い魅力に触れた気がしました。

それにしても豪華な企画でした。

 

また次の機会があれば、ぜひ行ってみたいです。