昼の部と夜の部と両方見て、どちらもよかったけれど、どちらかというと祝祭感が高めだったのは昼の部のような気がする。
やはり、祝成田櫓賑(いわうなりたこびきのにぎわい)のような演目で、役者たちがいっぱいでてきて皆で襲名を寿ぐ感じがいい。
祝成田櫓賑(いわうなりたこびきのにぎわい)
襲名のために作られた演目(大体いつも襲名のときは似たような感じのものが上演される)で、役者たちが役名をもじったような名前で出てくるので、半分素みたいな感じでそれもほほえましい。
例えば、梅玉の役が鳶頭梅吉 とか鴈治郎が鳶頭智吉(鴈治郎の本名は智太郎)、錦之助が鳶頭信吉(錦之助の本名は進次郎)など。
若手も萬太郎が鳶の者萬吉、種之助が鳶の者暁吉(種之助の本名は暁久)、鷹之資が鳶の者鷹吉というふうに。
なぜかファンはこれだけでも「キャッ!」的なうれしさがあります。
深川不動尊の前で、それぞれ鳶の者や芸者が華やかに踊っている。それは木挽町の芝居小屋で成田屋襲名と初舞台を祝う舞台があるというから成田屋に所縁の不動尊に参詣に来たという趣向。そこへ芸者と鳶頭、さらに鳶の者も加わって踊り、木挽町へ行こうとなる。
二幕目は木挽町前でさらに芝居茶屋の亭主、女房、頭取も集まるなかで獅子舞が披露され、男伊達、女伊達と次から次へと現れて、襲名と初舞台の祝儀を述べる。
芝居茶屋女房は、福助。ニコニコと大きな声で祝いを述べれば、めでたいムードも増し増しである。
そして鳶頭のもと、観客も一体となって手締めを行い、一同芝居見物に向かう。
半分素で、半分観客ともいっしょになって、一体感でお祝い。
最後に團十郎と新之助が出てきて、やあやあおめでたいとなるかと思ったら出なくて残念。
私が見に行った22日から、種之助が休演となり、鷹之資とのふたり獅子舞はひとり獅子舞に変更。残念見たかった。
とはいえ、にぎやかで、華やかで、ぐっと盛り上がった祝成田櫓賑(いわうなりたこびきのにぎわい)でした。
歌舞伎十八番の内「外郎売」
これまた曽我五郎。どれだけ五郎出てくるんや。どれもこれも背格好から何から何まで違いすぎるぞ(笑)。歌舞伎は「世界」という考え方があって「曽我物のセカイ」「隅田川のセカイ」といろいろな世界から物語が出来ているのですが、それにしても「曽我物のセカイ」からの演目が多いですね!
小さな新之助くんの鮮やかな言い立てに会場からも拍手です。
声も朗々と、見得も立派に決まりました。
思い起こせば2歳の初お目見えのときは「ほりゃこちかんげんにごじゃりまつ」みたいな、それでも2歳だから立派だったなあ。あっという間に9歳。もう大人の役も立派にこなす歌舞伎大好き少年に育って、大したものです。
新之助くんは2013年3月22日生まれ。
ちょうど新之助くんと同じ世代には、
坂東亀三郎くん(2013年2月5日)
中村長三郎くん(2013年5月22日)
尾上丑之助くん(2013年11月28日生まれ)
小川大晴くん(2015年10月28日)
小川綜真くん(2016年2月26日)と、ズラズラ未来の歌舞伎界の至宝がひしめき合っているのですよね。ちょっと上には
中村勘太郎くん(2011年2月22日生まれ)
寺嶋眞秀くん(2012年9月11日生まれ)
市川右近くん(2010年4月18日生まれ)。どの子もとっても上手。将来が楽しみです。
ぜひ、ちびっこ白浪五人男でもやってほしいものです。またいろいろな家の先輩にも習ってたくさんのものを吸収してほしいですね。
勧進帳
幸四郎富樫と團十郎弁慶の、丁々発止に息をのむ、火花がとびかうような演目となりました。
勧進帳の発表があったとき、四天王があまりにもほそっちくて頼りなさすぎるのではないかと心配になったのですが、なかなかどうして奮闘していました。
亀井六郎 巳之助
駿河次郎 左近
という四天王です。清新な四天王という印象でした。
巳之助は大音量の声で圧倒。存在感も見せつけました。染五郎と左近が心配でしたが、それほど心配することはなかった。左近はこれでもかというほどに、がっつり濃いめの化粧をしており、力強さを表現していました。体を大きく見せる工夫などもしているのでしょうね。
染五郎も、ギリギリギリギリと詰め寄って関を押し通ろうとする血の気の多い若さをうまくだしていました。
とっさの機転で、危機を脱した弁慶に義経は感謝しますが、主人を打擲した弁慶はすっかり恐縮してしまいます。義経はそれを慰め、手を差し伸べますがその時の猿之助の手が美しい。恐れ多いと後ずさりして涙する弁慶です。
このあと富樫が非礼を詫び、酒をすすめ、弁慶はその酒を飲み干し、延年の舞を舞い、先に義経たちを行かせます。そして舞い納めたあとで、後を追っていくのです。
「うれしい、無事に関所を通れた。みなさま、今、追いつきますぞ~~~」という気持ちがあふれた六方です。
これからも幾度となく演じるであろう勧進帳。どうか大きな團十郎となってほしいですね!
同年代が、若い年代が、先輩が、歌舞伎界全体で襲名興行を盛り上げている感じが出た11月昼の部でした。
周辺の様子
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