思い起こせば1年半前。
初めて木ノ下歌舞伎を観に行ったときのこと。チラシの中にはいっていた地味なペライチに私は目をとめました。
それが「木ノ下裕一と岸井大輔と読む平家物語」講座募集のお知らせでした。。。
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「木ノ下裕一と岸井大輔と読む平家物語」講座とは
月1回、オンライン。平家物語の原作を1年かけて読み解いていくというもの。値段も安くてすぐに飛びついた。3万円。後から考えてみるととてつもなく安い。聴講生は1万5千円。これまた激安。(あとで岸井さんと木ノ下さんは、料金設定について後悔していたW むずかしいですよね)
コロナもあって、オンラインというのはとてもありがたかったな。
聴講生は安かったけれど、課題つきの受講生の方が面白そうと思い、迷わなかった。
休んでも録画付きなのも大変ありがたかった。
こうして始めた1年。途中で休講のときはその分延長になり、最後まで行きつかないので1回延長となり、結局1年3ヵ月。
めちゃくちゃ楽しかった。
平家物語の原作が面白い
まず、平家物語が面白い。
原文を読むなんてとても無理と思ったのだけれど、音読をするとなぜかするすると頭に入る。これが名文というものか。名前を指名されてみんなとつとつ、ぼそぼそとひとりずつ、つたなく読む。読み方を間違えても全然訂正されないし、怒られない。(これが学校の授業とちがうところ)
そのうち、回を増すごとにみんなスラスラ読めるようになってきた。
木ノ下さんの解説が面白い。講評は丁寧で優しい
そして、木ノ下さんの話がものすごく面白いのは周知のごとく。
平家物語を読んで木ノ下さんの深掘り、岸井さんのさらなる違う角度からの読みの深さなどを、自宅のパソコンを前にして聞く。お風呂上りに、仕事あとに。あわてて作ったカレーをかっ込んで。暑いときも寒いときも。眠い時も疲れている時もあったな。
月に1回、7時から10時まで。途中1回くらい休憩がはいるものの、あっという間の3時間。聴講生はこれにておしまいだけれど、受講生はさらにこのあとがある。
各回の講義に基づいて課題が出される。その課題提出締め切りが次回の講座の1週間ほど前。
提出された課題について、ひとつずつお二人から講評が述べられる。一番最初のときだけはベスト3作品くらいだったけれど、2回目からは全部について講評された。
この講評がまたいちいち丁寧で、熱い。そしてひとりずつだから12時を過ぎることもしばしば。
なんと、7時から10分ほどの休憩を2回はさんで、毎回5時間という長丁場。でも全く気にならない。本当に疲れていてウトウトっとなったことがないわけではないけれどよほどのことがない限り、眼はランラン。そのあと興奮して、1時2時まで寝られないほどだった。
いい作品なら講評のしがいもあろうが、私のようなしょうもない課題の講評は本当にツライだろうと思う。それでもいつもお二人は丁寧にいいところ悪いところを見つけてくれ、簡単に褒めるのではなく、きちんとここがこういう理由で良い、良くないと言ってくれ、あまりにも的確で倒れそうになるが、優しい言葉で立ち直れるという風であった。
受講生の面々がすごい
少しずつ受講生が脱落していった。最初は20人くらいいたかなあ。最後まで残ったのは半分の10人くらいかな?
受講生の質が高くて、最初は(てか今もだけれど)口があんぐり開いたままふさがらない。私は脱落しなかっただけエライぞの、大学生の中にたったひとり迷い込んだ小学生のようなもの。
以前からTwitterで福田あやはなさんだけは知っていた。当初、あやはなさんのイラストはすごいことを知っていたので「ふふふ、みんなおどろくなよ、あやはなさんの絵はすごいぞー」と思っていたら、最初の課題を見て文章や構成力もすごいので腰が抜けた。
課題は、その課題に沿っていれば、文章ではなくてもいい。絵でもイラストでも写真でもよい。なんでもいいのだ。カメラマンは写真で勝負だ。
みなさんの作品が本当にすごくて「ええええええ!」と目をむくほどだったのだが、どうやらすでに脚本を書かれている方、古典の先生、などなどなかなかの武者ぞろいだったようだ。以前に木ノ下さんの「道行プロジェクト」に参加されている人も多く、平家物語への知識がすでに半端なくあり、「馬の名前までそんなに知っているの?」と驚いたこともあった。
楽しかった1年3ヵ月
とはいえ、毎回出される課題をどうしよう、だめだ、今度こそ書けねえと頭を抱えたり、そのうちぽっとアイデアが生まれたり、こうしようか、ああしようかと考える楽しさ、創る楽しさ、やばいどうしよう!もうすぐ締め切り!の中で過ぎるあっという間の1ヵ月。そして当日。の繰り返し。それが1年以上続いて、本当に楽しかった。
私はライターだけれど、創作はしたことがなかったから新鮮な感動だった。したことがなかったけれど、しようとしたことは実はある。児童文学に公募しようと思ったのだけれどまったく書けずやめた。だから書けないと思っていたけれど、平家物語の中から零れ落ちたものにちょっと命を与えるという今回のような手法なら、できるのではと感じられたのは、今まで生きてきた中でもものすごく大きな発見だった。画期的なことだったのだ。
卒業制作
とこうするうちに、講座も終わりに近づき、卒業制作を作って文学フリマに出すということになった。文学フリマなんて知らないし、ワードの打ち込んだだけのテキストをどうやって立体物にすればよいのかもわからない。
というところから、なんとかできた制作物(この間のことも時間があれば書きますね)。
ほんの6000字程度だけれど、私にとってはとてつもなく価値のあるものだ。
鬼界ヶ島に流された俊寛に会いに行った有王。彼が帰りに乗った船での話。
明日、他のメンバーといっしょに文学フリマで出展します!(涙)
ほとんどのメンバーにはオンラインでしか会ったことがないので会えるのがとても楽しみ。文学フリマも、楽しみたいと思います。
文学フリマ東京35
ブースは第一展示場のO-04 です。
お待ちしています~。