文楽は、人形と義太夫と三味線の三位一体で演じられる素晴らしい芸能ですが、義太夫と三味線をガン見したい私としては、素浄瑠璃の会、見逃せません。
10月22日に、初代国立劇場における「文楽素浄瑠璃の会」の締めくくりとなる会に行き、誠に気合のこもった演奏を聴くことができました。震えました。
演目は3つ。4月に切り語りに昇格した三人が、ベスト三味線陣とのタッグを組みます。
丁寧な千歳太夫に寄り添うような富助。
ガンガン飛ばす清介についていく気がないのか呂太夫。
あおって飛ばす藤蔵にくらいつくダンプ錣太夫といった3演目でした!大満足。
双蝶々曲輪日記~八幡里引窓の段
三味線 豊澤富助
ずしりと重い長五郎、いやらしい丹平、あわれ母、板挟み南与兵衛、オロオロおはやを音程高く低く巧みに語り分ける千歳太夫。寄り添うように合わせる富助。こちらのコンビもとてもよかった。
冥途の飛脚~封印切の段
三味線 鶴澤清介
迫力の清介に完全に引きずられている呂太夫。床本をただなぞっているだけに聞こえて、おいおい大丈夫?な感じ。
〽この忠兵衛が五十両損かけうかと気遣ひさに
あたりから清介に引っ張り上げられたか、次第にエンジンがかかったように見えた。
〽投げ返し、腕まくりしてぎしみ合ふ
あたりはよかった。
〽地獄の上の一足飛び、飛んでたもや
〽さあさあ、どこもかも埒明けた
では清介三味線が、冴えわたった。(ここだけじゃないけれど)。
しっかりついてこんか~いと言ったところでしょうか?
跡は野となれ、大和路や足に、任せて
という終わりもいいですね。(日本語すてき)
近頃河原の達引~堀川猿廻しの段
三味線 鶴澤藤蔵
ツレ 鶴澤清馗
ツレの清馗は、おしゅんのおかあさんが教える琴・三味線のお稽古のところと、最後に登場。よかったです。三味線が二人になるとまたグッと迫力が増すし。
しかしまあ、藤蔵と錣太夫、すごかった。超絶技巧とド迫力の藤蔵と、相性の合う「しころん」こと錣太夫。
今年の2月に、錣太夫と藤蔵の素浄瑠璃を聞きに行きました(素浄瑠璃の会:紀尾井町小ホール)。そのときのアフタートークで、錣太夫がなんか天然でかわいらしく、藤蔵さんに突っ込まれっぱなしでニコニコしていて愛らしく、藤蔵さんのことを「道案内をしてくれる三味線弾きで、とてもやりやすい」と語っていたんですね。相性いいんでしょうね。
素浄瑠璃の会 藤蔵 錣太夫の記事はこちら。しころんの魅力も(笑)
今回もまた、もちろん技術あってこそだけれど、その信頼関係もあってか、日本のロックここにあり!みたいなセッションが聞けてとてもよかったです。
藤蔵おなじみの「ウイヤ、ウイヤ、ウイヤ、ウーイ」な掛け声はもちろん、随所に出るキュルキュルキュルした超絶技巧はなんというのか?名前はあるのか?知らんけど。
〽待ちをれ、待ちをれ、待ちをれやい
藤蔵が、ウリャウリャとあおれば、グングンと錣太夫のボルテージも上がっていくのがわかるし、負けずに限界超えて奮闘して、いつもの襟元までぐしょぬれの熱演。
〽二人は何と詞さへ、涙に涙結ぼるる
途中、2回、感極まって会場から拍手が起こったし、
〽名を絵草紙に聖護院森を、あてどに辿り行く
で終わったあとは観客は手を挙げての拍手。ジワどころか、会場全体ウナリという感じですらありました。
最後となる国立劇場の文楽素浄瑠璃の会でしたが、アンテナたてて素浄瑠璃の会の情報をゲットして、また行ってみたいです。
あ!11月の国立文楽劇場には行く予定!「勧進帳」ですからね♪文楽の勧進帳についてはまた今度♪