「初めての歌舞伎を楽しもう」munakatayoko’s blog

すばらしき日本の芸能、歌舞伎。初心者にわかりやすく説明します♪

仮名手本忠臣蔵 七段目観劇レポ ~秀山祭

私は仮名手本忠臣蔵が大好きで、中でも七段目は特別好き。五、六段目から打って変わってパッと明るくなる華やかな舞台に目が覚めるよう。

 

昨年の七段目

去年の1月。吉右衛門の由良之助で見たんだなあ。

え?ホント?と思ってしまうけれど、ホント。私が見たのは7日。17日から休演したのだった。去年はまだ舞台に立っていたのに。

今回の七段目

 仁左衛門の由良之助、雀右衛門のおかる

おかるは雀右衛門。前回の雀右衛門はどうもおかるにしては地味のような気がしたが(ただし評判は前回も上々だった)、今回はすごくよかった。華やかでかわいらしくてちょっと軽いおかるらしさが出ていた。

 

今回は、仁左衛門の由良之助。吉右衛門の由良之助はもちろんすばらしいけれど、仁左衛門の由良之助もこれまた素晴らしい。今回東席から見ることが多かったが、七段目を見るなら下手か上手かなら、上手だろう。

 

扇で顔を隠して横になる由良之助、扇で隠して影で怒りに震える由良之助、おかるを心ならずも斬り殺すつもりで身請けを約束し、「申し訳ない」という気持ちが顔にふっと現れるところなどが、上手からだとよく見える。

 

おかるを身請けする約束をして「三日じゃな」とおかるに念を押されて「三日様、三日様」と言いながら去っていくところの、三を作る手が美しい。家にあった白鸚の由良之助の録画を見てみたら、あのような手はしていなかった。扇でパタパタ「三日様、三日様」とやっていた。仁左衛門は、三を手で作って、ひらひらと返していた。

 

最後の九太夫打擲のところの、怒りのすさまじさ。メラメラと怒りの炎を燃やして「五体も一度に悩乱し、四十四の骨々も砕くるようにあったわい。ええ夜叉め、魔王め、人外め」と打ち据えるが、それ以上外には出さない。仲居たちが戻ってくればすっと由良様に戻るのだ。そして「水雑炊を、、な。食らわせい」と真顔で。

 

すばらしい。

 吉右衛門はどう演じたか

ところで吉右衛門は、どう由良之助を演じようとしていたのか。最後のところ。

 

「先輩方は、どなたも本性を見せて覚醒しているようになさっていましたが、できることなら私は酔いを残した芝居がしてみたい。(中略)酒のにおいがプンプンするような由良之助を出すことが出来たら素晴らしいなと思いますね」(「中村吉右衛門舞台に生きる」より)

 

わー。そうだったか。もう一度吉右衛門の由良之助を見て確認してみたいと思った。

 平右衛門

さて、もう一人の大事なキーパーソン、平右衛門。今回は海老蔵で、残念ながらあまり声が通らず、特におかるとわからず、おかるに会わせてくれ、頼む頼むというところは三味線の音に被って聞こえない。しかし、くぐもった声は今回に限ったことではない。7月の夏祭浪花鑑のときも3階まで声が届かず、さっぱり心に響かなかったのだ。

 

とても残念。平右衛門と言えば、仁左衛門がおかる玉三郎でやったとき(2018年歌舞伎座)はもちろんすばらしかったが、2016年国立劇場又五郎の平右衛門もよかった。とっても愛嬌があって、由良之助を心から信頼して、リスペクトしているまっすぐな性根がよく表れていて印象的だった。由良之助にお布団かけてあげるところも何度も何度も布団の裾をポンポンと直したりして。

 

そんな平右衛門は今回どこを探しても舞台上にはおらず、海老蔵がいただけという感じでとても残念であった。

海老蔵も日々いろいろと変えてはいた。私は4回観たので、声はだんだん出るようになったし、最初はずいぶんと猫背でへいこらしているような平右衛門が、次第に足軽っぽくなっていたので、それなりに工夫はしていたのかと思うが、どこか上っ面という感じが否めない。

ちなみに2018年歌舞伎座でのにざたまの平右衛門おかるがよかったと前述したが、このとき偶数日は海老蔵菊之助の平右衛門おかる。私はこれは見ていない。このときも今回のような平右衛門だったのだろうか?見た方に聞いてみたい。

 

何回観ても全く飽きない七段目。今回は、いろいろな意味で記憶に残る七段目となってしまった。

七段目のあらすじとみどころは、

munakatayoko.hatenablog.com

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