「初めての歌舞伎を楽しもう」munakatayoko’s blog

すばらしき日本の芸能、歌舞伎。初心者にわかりやすく説明します♪

第28回 稚魚の会・歌舞伎会合同公演レポ

毎年夏のお楽しみ。稚魚の会・歌舞伎会合同公演初日に行ってきました。国立劇場小劇場にて8月12日~16日

 

稚魚の会・歌舞伎会とは

国立劇場の研修修了者による「稚魚の会」。そしてそれ以外の一般出身者の名代・名代下の役者による「歌舞伎会」。合同での公演は、平成11年以降毎年開催されています。

なかなか主役をはれない若手・一般出身の人たちの晴れの舞台となる「稚魚の会・歌舞伎会合同公演」は、とても皆さん一生懸命で、毎年観ていますが観劇後はすがすがしくさわやかな気持ちになれます。

また、いつもの歌舞伎の舞台ではどうしても推しや主役に目が奪われがちですが、こうして支えている人たちの演技をじっくり見ると、またそれが素晴らしいことに気づき、歌舞伎の世界の底力を改めて感じさせてくれるきっかけにもなります。
そして、新たな「推し」を見つけるチャンスにも♪(^^)/

私もここ4回くらいは毎年楽しみにしています。


一昨年の様子はこちら

munakatayoko.hatenablog.com

国立劇場小劇場は、今年も満員でした。若い男性女性も多く華やかなロビーです。
若手さんたちのお友達とかお稽古仲間とかかな?

すてきなパンフレットの表紙デザインは米十郎さん。

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今年の演目は

双蝶々曲輪日記 角力場・引窓

俄獅子

でした。

双蝶々曲輪日記


引窓のあらすじとみどころはこちら

munakatayoko.hatenablog.com

角力小屋の長五郎は喜楽、引窓では松三、いずれも大きな長五郎、どっしりと立派な長五郎を演じていました。今回の監修は白鸚とのことだけれど、さすがの白鸚仕込みでしょうか。

長吉は角力部屋では家之助、口跡がよい。はっと会場が引き締まるほど張った声のメリハリがとってもよかったです。

山崎屋与五郎は中村蝶也。ナウシカのメイキングを観ていて米吉クンにぴったり寄り添う蝶也くん(着替えを手伝ったり、宙乗りの事前テストをやったり)なかなかいいなと思っていました。与五郎を熱演。ちょっとはんなりした様子は米吉クンにアドバイスをもらったのかな?などと妄想。

吾妻役は米十郎。ぽってりしていていい色気を出していました。与五郎がぞっこん惚れてしまうのもむべなるかなと思わせてくれました。

 

やゑ亮が、南与兵衛!義母の思いと自分の仕事と義理の兄弟のはざまで悩む実直な南与兵衛がよく表れていました。

 

引窓の場で何と言っても出色だったのは、お早の好蝶ではないでしょうか。
昔は芸者で、今は与兵衛の妻だから、芸者のころの色気は慎んでいるけれど、言葉やしぐさにちらっと出てしまうその色気。夫の南与兵衛、優しい義母のお幸、古くからの知り合いの長五郎の間に立って、オロオロとしてしまう。

誰の気持ちもわかるだけに、ただオロオロしてしまう優しいお早って、演技が難しいと思います。

とてもよかった。美しいんですよね、好蝶さん。一昨年の「修善寺物語」でのかつら役も印象に残っています。きれいでうまくて言うことなし。

俄獅子

ちょっと緊張気味の初日でしたが、次の「俄獅子」では、皆さんのびのび。
「俄獅子」は、歌舞伎の相生獅子の歌詞をもじって替え歌にして、吉原っぽく粋な歌詞に変えた歌に合わせたものに、かっこいい鳶頭と芸者が華やかに踊ります。

いやいや、粋なこと気持ちのいいこと。音蔵、翫延、音幸といつもはトンボを切ったり、やあやあと言っている側ですがこの日ばかりは若いものを軽くいなすかっこいいお役。

いやあかっこいいこと!
「『一番自分がかっこいいと思ってやりなさい』と教わって、楽まではナルシストに徹してやります」とSNSで見かけたのは音蔵だったか音幸だったか。。見つけられないのですが。

たぶんみんな「俺が一番かっこいい」という気持ちでやっていらっしゃる。そしてその気持ちがあふれた、粋な舞台でした。

幕がしまるとジワがおこっていましたよ~。私の前の小学生の女の子は引窓で寝てた(笑)のですが、俄獅子では跳ね起きて凝視して大喜び、そのまた前の若い女の子は爆大喜びで、ばたばったと拍手していました。

楽しかるべし。若手の皆さんも気持ちよかっただろうなあ。吾妻を演じた米十郎さんはまたまた色気を振りまいておりました。

気持ちよく打ち上げ。

今年もまた、普段、どれだけ皆さんが頑張っているのか、どれほど歌舞伎に深い想いを抱いているのかがよくわかる清々しい公演でした。

楽までどうぞ無事に迎えられますように~~~!