菊之助の魚屋宗五郎。よかった!
けれどどうしても菊五郎と比べると、いや比べたらかわいそうなのだけれど。
どこが違うのかなあ。
菊之助は美しくて綺麗すぎるから
「ええっと。君は魚屋だよね」という気になる。若いのをいっぱい従えた鳶頭みたいになっちゃう。
呑むまでの真面目でイケメンなところはいい。けれど酔っ払っていたのが醒めて、しょぼくれちんとなるところは菊五郎には敵わなかった。そこで醒めたのか、醒めていないのかがいまいち判然としなかった。
そして殿様に支度金を200両もらったことでとっても助かったと感謝していることを言うこのセリフ
「魚は芝の活ものを安く売るので直に売れ、毎日銭がもう買ってね、好きな酒をたらふく飲み、なんだか心が面白くってね、親父も笑や、こいつ(おはま)も笑い、わっちも笑って暮らしやした」ってところはいまひとつだった。
セリフが印象に残らずサラーっと流れてしまう感じ。
菊五郎が宗五郎をやってこのセリフを発したときはずっしり心に残ったし、楽しそうな、ささやかな魚屋一家のしあわせな風景が目の前に広がった。
その時のブログはこちら。
でも菊之助のセリフではそこまでにはならなかった。幸せそうな魚屋の風景は見えなかった。
1回目みたときに、サラーっと流してしまう感じだったので、2回目、どこが菊五郎と違うのか、しっかりと見ていたのだけれど、本当に!ちゃんと!一生懸命!じっくりと!セリフを言っている菊之助。でもなにが違うのかわからないけれど、親父様には敵わないのだ。声もいいしねえ。
経験でしょうかね。ニンってことかな。
でもカッコよくて、いい宗五郎。親父様が偉大すぎるのだろう。いずれにしても、親父様が元気なおかげで「まだまだ勉強中です」と言えるテイの菊之助は、幸せなことであると思う。あと30年待とう。待てるか…。
そして梅枝のおはまはとってもよかった。前回の時蔵おはまと比べても遜色なくよかったと思う。
おなぎの米吉も、三吉の萬太郎もよかった。三吉は、何回「すっこんでろい!」と言われるんだかw。橋弁慶の凛々しい牛若丸からのギャップがよかった。
おはまが好きなところは、酔っぱらって殿さまの屋敷に乗り込む宗五郎を追いかけてすっ飛んで行く途中、花道で櫛をさっと取ってふっと息をふきかけて袂にしまうところ。
気合十分はいりました~~~っ行くわよ~~~て感じで、決まっていた、梅枝!
今回の博多座は、ある意味梅枝祭でもあった。いがみの権太のお里も、関扉の小野小町も。あらゆる役が完璧!な感じであった。
それはまた別稿で。