北斎館のすぐ近くにあるのが、日本のあかり博物館です。今回、「浮世絵に見るあかり」という展示をやっていたので、観てきましたが、常設展示も面白かったので、おすすめです。
日本のあかり博物館とは
日本のあかり博物館は、北信濃およびその周辺の灯火具―金箱正美灯火具コレクション」963点が昭和55年に国の重要有形民俗文化財に指定されたことをうけて、昭和57年に開館しました。明治時代に立てられた米蔵2棟と昭和初期の倉庫を改装したというだけあって、雰囲気出てます。
古代からのあかりの歴史
古代からあかりの移り変わりがとても興味深かったです。
小布施は菜種の名産地で、小布施で生産された菜種油が、江戸までも運ばれていたのですね。
工夫を凝らした油さし
明かりそのものだけではなく、行灯や油刺しなど、昔の人は工夫して作っていることも紹介されていました。特に感心したのは、ネズミの形の油さし。ピストンを使ってちょうど油がなくなるとネズミの口から油がたらされる仕組み。その仕組みも丁寧に紹介され、緻密で手先の器用な日本人の技術の確かさに驚きます。
旅枕あんどん
またちょっと気に入ったのは、旅枕あんどん。旅をするとき用の箱枕に、小さな引き出しがついており、墨、すずり、筆、櫛などのほか、ミニ行灯までセットになっていました。
豆ランプの数々
またズラリと棚いっぱいに飾られた豆ランプの数々も圧巻でした。「縮み志向の日本人」なんて本がありましたが、本当に日本人って小さくするのが得意ですよね。小さくてかわいい豆ランプって、日本で考案されたものだそう。
あかり体験ルーム
大昔でなくても明治になって電気やガス灯が出るまで、とても夜は暗かったのですね。こういうことは頭の中ではわかっていても、なかなかリアルにはわからないもの。体験ルームでは、
奥州行灯(10ルーメン)。ぼんぼり燭台(20ルーメン)。台ランプ(43ルーメン)。白熱電球(810ルーメン)と、次第に明るくなっていくのがわかる展示がありました。
こ、こんなに暗かったんか!と驚く暗さ。そしてそれがほんの150年ほど前まで当たり前だったということが驚きです。私など、白熱電球の明るさでも活字が読みにくいほどでした。
電気のなかった150年前までは、今とは全く違う世界だったのだとしみじみ感じました。
夜は魑魅魍魎が行きかう世界。悪党が跋扈する世界。想像力の発揮される世界とも言えますね。歌舞伎のだんまり(真っ暗闇であることが前提の動き)や、権助に襲われる桜姫などが生きる世界がリアルによみがえるようでした。
昔の人は暗さにも慣れていて、ぼんぼり燭台でも本を読めたのかしら?
視力が現代人より、野生に近かったのかしら?
いやいや栄養状態が悪くて、暗くなると目が見えなくなる「鳥目」なんて病気もあったはず。
など、いろいろと思いを巡らせました。
企画展示「浮世絵に見るあかり」
2階の企画展示室に行くと、いよいよ「浮世絵に見るあかり」です。
浮世絵とともに、同様の明かりが飾られ「この絵に描かれているこれが、これです」という展示で、わかりやすくて面白かった。普段浮世絵を見ているときには全く脇役である明かり。その一つ一つがクローズアップされていました。
たとえば「曽我物語出立の図」で灯台のほのかな明かりをたよりに筆を執る絵があります。その絵の前にその実物(に近いもの)がある。ほ、ほおという感じでした。
他にも、「助六由縁江戸桜」「鞘当」から「五十三次の内吉原宿」などの浮世絵とあかりが展示されていました。
4月に歌舞伎座でかかった「三国志」での有名な場面「蜀の三勇士 桃園に義を結びし故事になぞらえ梅林に宴会を催す図」を演じる役者の浮世絵もありましたよ(歌川豊国作)。
坂東しうかの横に描かれた金物製の「ガラス燭台」。それが絵の前にも置かれていました。ガラスの中で灯されるろうそくは、ゆらゆらときれいだっただろうなあ。
これから、浮世絵を見るときに、その中に描かれているあかりにも注目してみたいと思いました。
■日本のあかり博物館
■住所381-0201 長野県上高井群小布施町小布施上町973
■電話026-247-5669
■入館料:大人500円
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