観てきました!
前作に最大限のリスペクトを捧げつつ、今の時代に合うようにリメイクされた傑作だった!
2022年ウエストサイドストーリー
ウエストサイド物語は、中学生のころにリバイバル上映を見て感激し、たぶん生まれてから、2枚目のLP購入だった(1枚目はポールモーリア(笑))。文字通り擦り切れるほど毎日聞いたものだ。50年前!?
だから、上映中、歌詞はわからなくてもすべて脳内で共に歌い、過去に戻ったり、現実に帰ったりしながら楽しんだ。
ちなみに、舞台版は見たことはない。
移民問題
当時は、「チンピラ同士の喧嘩」と「ロミオとジュリエット」の話だと認識していたけれど、今回見たら「これって、移民問題だ」ということに気づき、子どもだからわからなかったのかなとか「60年前の話だけれど、今の時代にも通じる!」と思ったりしたのだが、どうやら私が子どもだからわからなかったのではなかった。
前作オリジナルでは、必ずしもプエルトリコ系の人たちが納得するような作品ではなかったので、今回はプエルトリコ系、ラテン・アメリカ系の人たちが「正しく自分たちが描かれている」と感じてもらえるような作品作りにすることを製作陣は肝に銘じていたという。
それで、シャーク団はプエルトリコ系移民、ジェット団はイタリア系移民。移民が増えたことで仕事が奪われるなどの状況や、お互いコトバが通じなくて「英語で話せ」と言われたり家でもなるべく英語で話す練習をしたりするようなシーンが入っている。(前作ではこれらの描写が全くなかったのか、少しはあったのか覚えてない)
お互いに生活圏を侵される相手だから憎み合い、常に不安だから仲間同士くっついてピリピリしている。短絡的で、信じあえず、約束を守れず、武器を持つことがどんな結果をもたらすかという想像力も働かない。
あれ?今の大国も同じことをやっているではないか。
アメリカの底力
中で、「アメリカ」というナンバーがある。プエルトリコ系のシャーク団が歌うのだが、女子グループは、アメリカのいいところをバンバン高らかに歌う。「なんでも自由なアメリカ」、すると男子が「君が白人ならね」というふうに、茶化す。アメリカの負の一面を描いているのに、なんでこんなに明るく描けるのと思うと、いやあアメリカの明るさには、根本的に適わねえなあという気がする。とはいえ、今回この作品が成功しているのはそのアメリカの底なしのノー天気な明るさだけに頼っていないからだろう。スティーブン・スピルバーグは言う。
「今回の映画は『ロミオとジュリエット』的な物語であると同時に、我が国の国境沿いで起きていることや、白人でなければ様々な恩恵を得られないようなこの国のシステムを強く反映した寓話でもあります」(パンフレットより)
そこが、すごく説得力を持たせている。最初のシーンが、縄張り争いをしていた場所の解体シーンというのもね…。
原作の音楽のすばらしさ
音楽は変えていない。多少テンポやアレンジは変えていても、根本的に変わらず。思うことは、音楽のレナード・バーンスタイン!なんてすばらしいの!に尽きる。
どのナンバーも、すばらしい。もちろんアレンジや歌手あってのことだろうけれど、私のひからびた脳内に残っている記憶の中で輝く音楽と、違和感なく、それでいて全く古びていない。
俳優陣のすばらしさ
ベルナルド(デビッド・アルバレス)
最初、ベルナルドを見て「ジョージ・チャキリスの方がかっこよかったなあ」と思った私は、後で大いに自分のルッキズムを恥じた。ガツンとした男っぽいおっかない兄さんであり、リーダーであるベルナルドは、デビッド・アルバレスで良かった。
トニー(アンセル・エルゴート)
不良グループから抜け出せそうで抜けられなかったトニー。すごく大人っぽかったり、ちょっと少年ぽかったり、情けなさそうな顔がかわいかったり、誰かに似ているような気がするけれど、誰だろう。大谷翔平かなあ…(笑)?
リフ(マイク・フェイスト)
ナイフのような、キレキレの危うさがよかった。いつも不安。ダンスは抜群によかった。
マリア(レイチェル・ゼグラー)
キュートなかわいらしさ、18歳だって! トニーが倒れたことも知らずに、デパートで
I Feel Pretty を可憐に歌っているところが泣けた。
アニータ(アリアナ・デボーズ)
アネゴ感がいい。存在感抜群。アメリカを歌うところが最高。最後につく嘘で悲劇が起こる。でもアニータのせいじゃないよ。
バレンティーナ(リタ・モレノ)
そして、若者たちの争いに胸を痛めているバレンティーナを演じるリタ・モレノは、前作でアニータを演じていた女優さん!今回、制作総指揮に加わっている。
ダンスシーンのすばらしさ
最初から、音楽にのって滑るようなダンス、指パッチンの何かが起こりそうな、ヒリヒリ感。盛り上がっていく危険な予感。警官のピー!
圧巻なのは体育館のダンスシーン。前述のアメリカ。クールのリフとトニーの喧嘩。屋外シーンもふんだんで解放感がありのびやか。有名な非常階段のシーン。ジーオフィサー・クラプキも楽しい。あれもこれも…全部いい。
映画は安い
これねえ、大作だけれど1,200円で観られる(われ、シルバーなり)。たまに映画を見ると「やっす!」と思う。
軽い気持ちでパンフレットを買おうとしたら、売店のお兄ちゃんが取り出したのが、やけに装丁が立派な本で2970円だった。映画より高いパンフレットとは…。引っ込みがつかなくて買った(;’∀’)。
製作の最初から、オーディションでどう選ばれて、どう思ったのか、作品作りまで詳しく書いてあるのでありがたいけれど、とにかく読みづらいのが難。まだ読み切れない。
トニーやマリアくらいなら配役と顔が一致しているけれど、スタッフの名前も、出演者の談話も出てくるけれど、どれが誰だか顔写真がないからさっぱりわからん。ほかのページで顔を探しつつ、パズルでもするように、時間をかけて楽しもう。これはパンフレットではなく、「本」です。当分楽しめそうだ…。
変わらないもの、変わっていくもの
曲の順番が変わっていたり、違うセットだったり、セリフだったり。違うところはあるけれど、芯は変わらない。
名作をリスペクトし、時代に合わせて変えていく。今月の「新・三国志」もそうだけれど、こうやって、名作は受け継がれ、変化しつつ、愛されていくのだなあと、しみじみ思った。