昨日のNHK古典芸能への招待。ご覧になりましたか?
「中村吉右衛門の至芸・熊谷陣屋ほか」
名シーンのダイジェストをいくつかと、熊谷陣屋のノーカット版。無駄のないたっぷり2時間でした。
仮名手本忠臣蔵~大星由良之助
いきなり四段目の血気にはやる浪士たちを抑える由良助のシーン。花道からズラリと並ぶ浪士たちの姿にも胸が熱くなりますが、たったひとりで抑える絶対的に大きな吉右衛門の存在感にのっけから圧倒されましたね。
このほかのダイジェストは
伊賀越道中双六 沼津 十兵衛。(2019年9月)
歌六さんとのシーンに、涙振り絞りでした。
勧進帳 弁慶(2014年3月)
菊五郎の富樫との丁々発止。四天王に菊之助、松緑。
極付幡随長兵衛 長兵衛(2009年6月)
玉太郎クンが長松。今と同じ顔だけどかわいい。水野が仁左衛門!
どれもがっつり涙振り絞るシーンで、これをひと月やるのだから相当な体力がいるなあと感じるものばかり。少し軽妙洒脱なシーンもみたいような気もしないでもなかったけれど。(沼津なら前半とか)
まねるのは外見ではなく、芸のこころ
吉右衛門を長年取材していた小玉祥子さんからは、その芸談も語られました。
「個性はほっておいても出てくるもの。最初は個性を押さえて、あるレベルに達してから個性を出す。そうすれば個性にとどまらずそれ以上のものが出てくる。」
「『まねるのは外見ではなく、芸のこころ。先人の芸をしっかり学んでその上で自分の個性を出す』ということだと思うのですが、『なぜ先人がその型を作り上げたのか、なぜそのセリフになったのか、を見極めることが大切で、でもそれが難しい』と。」
といった話が語られました。
今の若い人たちにも「吉右衛門の心」が伝わってほしいなと切に思います。伝わると信じています。
そしていよいよ。
熊谷陣屋のノーカット版。(2013年)
とても素晴らしかったとしか言いようがない。脇を固める玉三郎、菊之助、柔らかな仁左衛門義経、一徹な歌六。なんて豪華な…。
熊谷陣屋は、今の価値観とは異なるドラマですけれど、子どもを亡くす親の気持ちは不変です。
熊谷陣屋については、以前書いたこちらをご覧ください
昨日の「古典芸能への招待」は、NHKプラスで見られますので、昨日見損なった方、録画を失敗した方、もう一度観たい方。ぜひぜひもう一度みてください!
さて、熊谷陣屋ではもうひとつお知らせが。
「熊谷陣屋」を作者と劇評家のコトバで読み解こう
作者と劇評家のコトバで読み解く「歌舞伎のセカイ」第2回目が2月27日(日)にあります。木ノ下裕一さんと田中綾乃さんによる講座です。
今回は劇評家編で
劇評と芸談という視点で迫る「熊谷陣屋」です。
熊谷陣屋が、近代以降どう評されてきたのか、複数の劇評家が出会った舞台を映像も見ながら、田中綾乃さんと木ノ下裕一さんの対談形式でお話がすすみます~。とても面白いと思いますのでぜひ皆さんもご参加を!
今回の放映がよい予習になりましたね。
熊谷陣屋は、芝翫型と團十郎型といって、型の違いがあります。役者はどのような工夫で演じ、どう評価され、吉右衛門、芝翫らはどう演じているのでしょう。
この講座が企画されたときは、吉右衛門さんが生きていたのですけれど、思いもかけず、吉右衛門さんへのレクイエム講座となってしまうかもしれませんね。(わからないけど)
いずれにしても、同じ芝居に対してもさまざまな見方ができるということがわかると、これから観るお芝居も、グッと面白くなるはず!
私もとても楽しみにしています。
◆開講 2022年2月27日(日)13:30~15:30
◆受講料 4000円
◆登壇 木ノ下裕一【木ノ下歌舞伎主宰】
◆申し込み https://lets-grace.com/contact