「初めての歌舞伎を楽しもう」munakatayoko’s blog

すばらしき日本の芸能、歌舞伎。初心者にわかりやすく説明します♪

道行初音旅~義経千本桜(吉野山)華やかな舞台に心躍る

美しいですねえ!パッと華やかな舞台に心が躍ります。

 

お話

吉野山は、義経千本桜の長いお話の中の一部で道行です。

簡単にいいますと、義経のいる吉野山に向かって、静御前佐藤忠信が旅をするところを美しい舞踊で魅せるというもの。

 

佐藤忠信といっても、ここに出てくる忠信は偽もので、実は狐です。ずいぶん美しく化けたものですが、時々ひょっこり狐らしさが出るので見逃さないでくださいね。

 

重要なアイテムは、初音の鼓です。初音の鼓は、後白河法皇から義経が平家討伐の褒美としていただいたものでした。けれども頼朝に疎んじられるのを恐れて、義経静御前にこの初音の鼓を託しました。

 

静御前が鼓を打つと、なぜか忠信が姿を現すのです。なぜでしょう。それは、実は初音の鼓は狐の皮でできており、忠信に化けているのはこの初音の鼓の狐の子どもなのです。両親である初音の鼓を追って、静御前のあとをついて回っているのです。

 

ただ、この「吉野山」では、「何と、狐であったるか~」みたいな劇的な話はありません。それは「吉野山」に続く「川面法眼館」でわかることです。「川面法眼館」は1月の歌舞伎座でやるので、ぜひ続きを見てくださいね。「吉野山」では忠信らしい忠信です!

川面法眼館は、めちゃおもしろいですよ。

こちら。

munakatayoko.hatenablog.com

 

吉野山では、忠信が継信(忠信の兄)が戦死をした情景を静に語ったり、戦場でのエピソードを語ったりするところがあって、意味がわからないと大体そのあたりで眠くなりますので、何をしているのか押さえておきましょう!

 

忠信は、義経にもらった鎧を切り株の上に乗せると、静御前はそこに初音の鼓を乗せます。それを前にして、忠信は、兄継信のことを思い出します。なぜならその鎧は兄継信が勇ましい働きをしたからこそ賜ったからなのですねえ。

そして、激烈な壇ノ浦での戦場の様子を語ります。

まずは悪七兵衛景清と三保谷四郎のとても勇壮な戦いぶり。ちょうちょうはっしとやりあって、刀も折れるほどで、一人が兜のしころ(兜の横の垂れ)をひっつかんで引っ張れば、一人はむずと前に踏ん張ったものだから、しころが切れて二人はしりもちをついてしまい、

「お前の腕が強いから」

「お前の首こそ強いから」と思わず笑い合ってしまったそう。

そのあとはくんずほぐれず、敵味方が入り乱れての戦い。

そこへ来たのが平家の能登守教経~!

(清元がいっそう声を張り上げます。のとのかみ~のーりーつね~って。)

教経は、弓の使い手。ぴゅ~と放った矢先は義経をねらっていたが、そこに兄継信が立ちはだかり、その矢を受けて亡くなったのです。

兄を思い涙に暮れ、再び二人は吉野山を目指して旅を続けるのでした。

 

見どころ

とにかく美しい

文句なく美しい。景色も美しいが、静御前と忠信が美しい。というか美しい方々にやっていただきたい。今月は、七之助松緑ですよ~。

幕開けは、ほんとは清元があって、そのあと静が花道から登場するのですが、今回はコロナ対策か、最初から舞台におりました。静御前。美しいです。

気になる静御前と忠信の関係

イケメンと美女の道行なので、一見男女の仲に見えますがそうではありません。主従の関係です。女雛、男雛でビシっと決まったところも「いかにも!」という感じですが、ずっと忠信は鼓のことを気にかけていますし、静は義経のことを思っています。

 

2代目松緑は「松緑芸話」の中でこう語っています。

 

「絶対に二人が出来ているように見えてはいけません。(中略)六代目(菊五郎)は〽女雛、男雛  のところで、『けっして静の後ろへ入るなよ。後ろへくっつくと、訳ありの男女みたいに思われるぞ。だから、蟹じゃないが横から入るんだぞ』と厳しく言いました」と言っています。

 

〽女雛、男雛 というところは、バシっと二人は立ち雛のようにポーズが決まり、そこは拍手がわき、必ずお写真も売り出され、ハガキにもなるというところですが、確かにバックハグではないですね(笑)。じゃ、なんでやるんだろ?という疑問はさておき、かっこいいからだろということで、バックハグじゃなくて、横からすっとポーズにはいるというところに注目していただきたいと思います。

ー(今回はなかった?)

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▲(R)かぶきねこづくし(C)SHOCHIKU(C)Ai Yoshida

このポーズ。このハガキでは逸見藤太もいますー!

 

忠信が鼓に頬ずりをすると、後ろから静御前がすっと手を出し、忠信がキッと振り返るところがあります。最初は向かって左から、次に右から。ここについても2代目松緑は6代目に「そのときにそれをふっと見上げて『何しゃあがんだ』という目つきをしろ、『ちょっかい出すな』というところをみせるんだということです。『この時は静を忘れるんだよ』と言われました。それ以外はつねに二人は主従でいなくてはいけません」ということだそうです。

 

キッと後ろを見るところありますね。今月は、孫の松緑ですから、きっとキリっ!
何をしゃあがるんだという風に見せてくれることでしょう。

ー(はて、どうだったかな?昨日見たけど割とあっさりめだったような?)

楽しい後半も、今回はなし

そのあと逸見藤太と花四天が出てきて、面白おかしいやりとりがあって華やかに楽しく終わるのですが、今回はそこは出ません。もともとこの部分は、後から付け足されたところだそうですが、楽しいから私も大好きなので、残念だな。

 

時々出てくる狐の本性

吉野山では、ほとんど忠信としてのみの狐クンですが、コーフンすると時々しっぽが…ではなくて、本性がでてしまいます。たとえば鼓を見たとき、聞いたときなど。そのときは、おててが狐手といって、グーの手のように丸まっていたり、ヒョコタンヒョコタンと変なジャンプをしたり、ドロドロという鳴り物といっしょに妙な雰囲気を出しつつ、ハッと気づいて元の忠信に戻ったりします。注目してくださいね。

 

「なんだろう~これは??」と思ったら、ぜひ来月も歌舞伎座にGO!ですよ。

 

義経千本桜そのほかの段についてはこちら

munakatayoko.hatenablog.com