11月歌舞伎座の顔見世興行は、どの部も見ごたえがあってお代わりしたいものばかりだった。
その中でも私が一番いいと思ったのは、やはり「連獅子」。2部の寿曾我対面も1部も3部もよかったのに、連獅子で全部ぶっ飛んでしまい、お気の毒な気がするほどだ。
「よかった」とか「楽しかった」といった感想をはるかに超える「感動」は、やはりそうそうあるものではない。今年のマイベストにはいるだろうなあと思う。
2日目と千穐楽に観られたのは、本当にありがたいことだった。
千穐楽では、感動のあまり、我も忘れて手がちぎれんばかりにたたいていたら、一旦しまった定式幕がするすると開き、「え?え?」と観客もすでにスタンディング。幕が開くとなんと千之助、仁左衛門の二人が正座をして額を床につけていた。
カーテンコールをしないことで知られている仁左衛門。あれほど過酷な舞台をした後にこうしてカーテンコールに出てくれたこと。今思い出しても涙がでる。
上手をさし、下手をさし、正面を向き、礼。
実はそのとき私は、3階のてっぺんにいたので、幕が開いたところで「すわ!カーテンコール!生で見るか!オペラグラスを出すか!どこ!オペラグラス!しまっちゃった!」となり、一瞬舞台から目がそれたところで、やわらかな笑いが起きて、もう一度舞台を観たところ、頭に手をやっていた。ちょっと頭をかき、観客からは柔らかな笑いが起こった。あれはなんだったんだろう?どんな心理で頭をかいたのかなあ。
手も合わせていたなあ。もしかしたら毛振りで止まってしまったことを詫びているのかなと思った。しかし、そんなことはどうでもいい。こうして千穐楽まで無事勤められたこと、素晴らしい連獅子であったこと。すべてが感動でしかない。
もう一度、床に額をつけ、そのまま幕は閉まってしまった。もう一度ご尊顔を拝したかった。
本当に、こうやって書いていても涙が出そうだ。
今年はにざ玉の「桜姫」があり、「四谷怪談」があり、マイベスト上位は仁左衛門がかっさらいそうな勢いだ。どうぞお体を大切に、いつまでもお元気でいていただきたいと切に願う。千之助クンのためにも。
・1月の演目が発表になった。同時にコロナ下での対応についても発表になった。
席は、2席続きで1席空き。少し入場人数を増やした。1月から幕見が復活するのではないかと踏んでいたが残念ながらお預け。松竹さん慎重である。
国立劇場には行けなかった。
いよいよ師走。コロナは今のところ激減のままだけれど、アフリカの方で不穏な動きもある。あまり騒ぎ立てたくないけれど、用心はしておいたほうが良さそうだ。
くわばらくわばら。
そういえば、仕事上必要があって、昨日PCR検査を受けた。今日結果が届いて「陰性」だった。東京の感染者が本日も9名という現状で、陽性はあり得ないだろうと思っていたものの、結果を見るときはドキドキするものだ。いやはやなんとも。皆様もご無事で。