「初めての歌舞伎を楽しもう」munakatayoko’s blog

すばらしき日本の芸能、歌舞伎。初心者にわかりやすく説明します♪

観劇!感涙!仁左衛門・千之助の 連獅子

すばらしい連獅子を観た。

 

「え、連獅子。仁左衛門!?」 発表の時はそう思った。

「高齢なのに、無理じゃないの?あんな激しいのに」。そう思った。

 

今、私は頭を垂れて、反省するのみである。

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連獅子と言えば、このブログでちょこちょこ書いてきたけれど、その時々の役者で随分雰囲気が変わるので、とても面白い。

 

正統派、王道を行く又五郎歌昇 2018年
クールでシャープで熱かった 幸四郎染五郎 2019年
スピード感で随一 猿之助・團子 2020年

けなげでまっすぐな勘九郎勘太郎 2021年

 

そこに今回は、77歳の仁左衛門と孫・千之助という新たな伝説が生まれた。

 

間違えないでほしいのは、77歳で連獅子をやったからすごいのではない。77歳でやった連獅子が完璧に美しくて圧倒されたからすごいのだ。しかも今まで見たことのないような連獅子だった。

なんという美しさ。なんという華麗さ。なんというおおらかさ。もう言葉もなく感動してしまった。

優美でたおやかな仁左衛門・千之助の 光り輝く連獅子

 まずポスターがすごい。

普通は、ガっと両手を広げて前に子獅子、後ろに親獅子。ハッタと正面をにらむ図柄でしょう。

今回のポスターは違う。こんな連獅子のポスターありや?

画像は載せないけれど、あちこちで見られると思うので見てほしい。獅子親子の情愛があふれんばかりではないか。このポスターに象徴される慈愛に満ちた連獅子が今回の連獅子だった。

                                                  

「この歳ですから、昔のようには動けません。ただ、(親獅子は)仔獅子と同じように跳ねる必要はないと思っています。十七世勘三郎のおじさまは、ゆったりと、親獅子としての貫禄を出しながら演じられて、その演技と、ピチピチと動く仔獅子との対比がとても素敵だった。お客様にとっては、親獅子の動きが物足りないかもしれませんが、年代相応の連獅子をお見せできれば」と意気込みを述べた。

s://natalie.mu/stage/news/448569より

 

とまた引用してしまったが、11月の幕が開く前に、インタビューでこう述べていた。十七世勘三郎の連獅子を観たときから同じ歳で連獅子をやりたいと思っていたという。

ちなみにこれは1986年6月歌舞伎座仁左衛門はこの時42歳だった。

 

この記事で言っていたとおりだった。

「連獅子は、飛んだり跳ねたり、毛振りをしたり、大変なエネルギーを使うのに、どうやってやる気かしら!」と思ったけれど、そんな心配は全くの杞憂に終わった。

 

ふりも違うから観ていても全然無理がない。跳ばず、歩む。美しく回る。角度で魅せる。後ろ姿、正面、斜め横、斜め後ろ、すべて、どこから見ても美しい。まさに絵。

 

仁左衛門は、一粒の汗もかいていないのではないかと思われるほど(そんなことはないだろうけど)、まるで水が流れるようにすらすらと、涼やかに進んでいくのだった。

とてもたおやかで優美で美しくて、蝶々が戯れて止まりに来ると、キラキラと光り輝いているようにすら見えた。

 

一方、子獅子の千之助は、対照的にぴょんぴょんピチピチ飛び回るのかと思えばそうでもなくて、仁左衛門に寄り添うように、合わせるように、美しく舞う。そして時々「ここは任せて」とでもいうかのように、力強く。メリハリの利いた、仁左衛門の横にいても遜色のない子獅子だった。千之助クン、相当しごかれたのだろうなあ。今月の連獅子を一生忘れずに、これからもがんばってほしいものだ。

 

前シテが、今まで見た連獅子の中でも格別に良かったが、後シテもまた。

 

二畳台は、二つの上に一つ。オリンピックの表彰台のような形。親獅子はぴょんと飛び乗らない。すっと腰をかがめて、太鼓のテテンですっと台に乗る。降りるときは、ポンと飛び降りた。

親獅子うなずきながら、子獅子を呼び寄せるようなしぐさ。

そして毛振り。大きく大きく、おおらかに。まるでスローモーションでも見ているかのようにゆったりと。そして次第に力強く。これまた素晴らしいものだった。

 

すみません。細部がうまく書けないので、もう一度観たいのだけれどもう千穐楽まで3階席は席がない。

幕見プリーズ!!

観終わって

 77歳で連獅子やるなんて、無理でしょう。と思った私は、何に対しても自分から壁を作ってしまっているのだなと知った。

 

行きたい山の頂点があるならば、そこまでに至るにはいろいろな道があるはず。まっすぐ短距離できつい坂を登るだけではなく、ゆっくりと回り道をしながらでも、道を探して、道具を工夫して、気持ちを平らかにしてとにかく進んでいけば、必ず頂点には行けるはず。もちろん毎日のたゆまぬ努力は、惜しまず。

仁左衛門の連獅子を観て、そんなことを思った。

 

無理でしょうと思った自分を恥じた。実は私、最近老化が激しくて、それを理由にいろいろとできないことを数え上げては、落ち込んでいたのだ。仁左衛門より15歳以上も若いのに、恥ずかしいではないか。

小さいことにこだわらず、少し遠くを見て目標をたて、コツコツがんばろうと思えた。

 

今、体力的にも万全で脂ののっている役者さんたちも、仁左衛門の連獅子をみて、77歳になっても踊りたいと思ってくれたらうれしいなあ。ちょっと老化が気になっている役者さんも「よし、俺もがんばろう!!」と発奮してくれるとうれしいなあ。

 

というわけで、見ると元気がでる仁左衛門の連獅子。すべての人に、無限の可能性と希望を与えてくれます。見られる人はぜひ!

 

すごいな仁左衛門

 

その後、千穐楽でもういちど観ることができました。

その時のことはこちらに

munakatayoko.hatenablog.com

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