「初めての歌舞伎を楽しもう」munakatayoko’s blog

すばらしき日本の芸能、歌舞伎。初心者にわかりやすく説明します♪

観劇!江戸糸あやつり人形結城座古典小劇場「壺坂霊験記」

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江戸糸あやつり人形結城座古典小劇場「壺坂霊験記」を見てきた。コロナも少しおさまり、千穐楽まで無事に開催できたこと、本当に良かったと思う。

 

ザムザ阿佐ヶ谷

結城座の舞台を観るのは2度目だけれど、会場のザムザ阿佐ヶ谷は初めてだった。

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地下の会場に入るには、狭い階段をそろそろと降り、暗がりに目が慣れるまで少し時間がかかったが、赤い提灯、木の梁、階段状の客席など、一種独特の雰囲気の劇場でいっぺんに不思議な世界に引き込まれた。(赤い提灯は、結城座だからだろうけれど)

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観客から人形がよく見えるように、なるべく小さな劇場でやりたいという12代目結城孫三郎の希望でここが会場に選ばれたそう。文楽人形よりぐっと小さな操り人形の繊細な動きをじっくりと観ることができた。

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▲お人形は、文楽人形と比べても小さい

結城座とは

結城座は、1635年に旗揚げ。今歌舞伎座でもよくかかる「伽羅先代萩」は、結城座のために書き下ろされたものだし、平賀源内も結城座のために何本か書いているという。歌舞伎3座を含めて江戸幕府に公認された「江戸五座」のうち、今現在「座」として活動をしているのは結城座のみというとにかく歴史ある一座なのだ。今回385周年記念公演だって。そんなの普通あります?(笑)

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明治時代9代目の結城孫三郎のあたりから、新作にどんどんチャレンジ。あらゆる演劇を取り入れながら活動を継続してきたのだ。海外にもバンバン行くし、シェイクスピアだろうが新作だろうがなんだってやっちゃう。私が見た2020年秋の公演は石川啄木が題材だった。

 

文楽とも違って、一人で20本から50本もの糸を操り、歌舞伎でいうところの引き抜きや、様々な技を後見なしで、一人でやってのけるし、セリフまでしゃべっちゃう。人形遣いがセリフまでしゃべっちゃうようになったのも、9代目あたりかららしい。

 

それなのに、人形はあくまでも滑らかに歩き、語り、泣き、笑い、「壺坂霊験記」では崖から身投げまでやってしまう。

今回の舞台「壺坂霊験記」

新作ではその都度人形の顔から演出まで全然違うから一度見ただけで「結城座はこういうものだ」と断じることはできない。タクボクのときは、たくさんの演者が出て、音楽も洋風だったし、人形の顔もすこぶる個性的だった。

けれども今回初めて結城座の古典を観ることができて、古典の人形の美しさは、また格別だなと感じた。

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今回の出演は、沢市が13代目孫三郎、お里が3代目両川船遊(12代目孫三郎)、観音様(私が見たのはAプロ湯本アキ)が出てくるだけ。それでも濃密な舞台だった。

 

お里の歩き方、首の傾け方とか、まるで歌右衛門みたい。

シンプルな舞台。かわいらしい小道具。あたたかい照明。デジタル映像の美しさ。

 

そして、語り。

結城座の「壺坂霊験記」は、当代の祖母にあたる竹本素京の語りで上演していたそうだが、今回30年ぶりで上演するにあたり、女義太夫の方たちをお迎えしたとのこと。竹本綾之助、三味線は鶴澤津賀花、鶴澤弥々。これがまた実によかった。やっぱり、いい。女義太夫と三味線。腹の底にずっしりと響く。

楽しかったアフタートーク

終演後、葛西聖司さんと、13代目孫三郎と両川船遊さんとのアフタートークがあった。さすが葛西さんの司会は絶妙にうまくて、ちょっぴりおしゃべりの苦手な13代目から話を引き出すわ、話をもって行きがちな船遊さんを抑えるわ、おもしろい話を引き出すわ、結城座の歴史から、見どころまでいつの間にか網羅して、うまく聞き出していて、さすがしゃべりのプロはすごいなと舌を巻いた笑。

 

葛西さんのおかげで分かったところ。

目の見えないときの沢市の演技と、見えるようになったときの沢市は、人形も別だそうだが演技も異なるそうだ。

歩き方だけではない。目の見える人は他の人と対するときに相手の目を見るけれど、目の見えない人はおでこで話を聞くと。なるほど~。確かにそうかも。細かい演技だ。

 

また演者が身につけている袴も、普通の袴とは少々違うようだったが、それは裾が邪魔にならず、素早い演技ができるようにすぼまっているとのことだった。385年間のいろいろな工夫と創作の連続の上に、今日の舞台がある。感慨深い。

結城座とのご縁

私と結城座とのご縁は、コロナがきっかけだった。コロナで結城座がにっちもさっちもいかなくなって、クラウドファンディングを始めたという記事を新聞で見て、取材を申し込んだのだ。コロナもなかなか不思議なもので、こんなご縁も作ってくれている。

このインタビューでは、船遊さん(記事のときは孫三郎さん)が、すごくがっちりお話をしてくれていて、糸を見ずに語るということや、また古典ばかりではなく、新作もやることについて「守りに入るつもりはない」とはっきりおっしゃっていたことも印象的だった。

 

ご本人にとっての人形との関係について伺うと、「命」とか「自分自身」とかいうお答えかなと予想していたら「しがらみかな」とちょっと突き放すように言ったこともとても心に残っている。

smtrc.jp

若き13代目もぐいぐいがんばってほしい。

そして12代目も、いつまでもお元気で舞台に立ち続けてほしい。

来年の3月には新作、カフカの「変身」を上演するとのこと。今から楽しみだ。