「初めての歌舞伎を楽しもう」munakatayoko’s blog

すばらしき日本の芸能、歌舞伎。初心者にわかりやすく説明します♪

義経千本桜 ~川面法眼館(かわつらほうげんやかた)歌舞伎らしい魅力がたっぷり!

義経千本桜」という全5段の長ーいお話のうちの4段目。とっても人気のある作品であるのは、内容の面白さ、早替わりやスピード感のある演出、美しさなどの見どころが多い故。

誰でも楽しめると思いますよ。

とはいえ、予習しておいた方がよりわかると思いますのでぜひ読んでいってくださいね。

このお話の主人公は狐です♪

 

 

登場人物

源義経  頼朝と仲たがいし、ただいま逃走中。 川面法眼の館にかくまわれている。
佐藤忠信 義経に命じられ、静のボディーガードを勤めていたが…
静御前  義経と別れていたが、吉野にいると聞き、忠信と共に会いに来る


背景

義経は、平家を打ち破る活躍を見せたものの鎌倉殿(頼朝)に追われる立場となってしまいます。恋人静御前には、家来の佐藤忠信をつけて伏見で別れ、自分は川面法眼の館にかくまわれます。静御前は、いったん京都にもどったものの、吉野に義経がいると聞き、忠信と一緒に義経のもとへと急いでいます。

 

あらすじ

謎!忠信が二人?どうなってんの?の巻

幕が開くとそこは川面法眼の館。
川面法眼というのは、鞍馬山義経若き頃、幼名牛若丸を守り育てたお坊さんの弟子。
義経記によれば、義経たちを襲撃するようですが、この作品では義経の味方です。ご安心召されよ。


義経に次第に鎌倉殿(頼朝)の追っ手が迫っています。

川面法眼は、本来は義経の味方ですが、評定で「鎌倉殿の味方」と言い放ち、館に戻ってきました。妻にもそう言って、妻がどう出るか試してみるなどしています。

なぜ試したりするかというと、妻飛鳥は、頼朝方に親類がいるので信頼できるかどうか、川面法眼は不安なのですね。

でも大丈夫、

義経をかくまっていることを鎌倉殿に知らせると思ったのですか、そんなお疑いを持たれるのであれば自害すると飛鳥が覚悟を決めてきっぱりというので、一安心。

「うそうそ、だまして試したんだよー」というのが最初のところです。

 

そこへやってきたのは義経
するとそこに忠信もやってきます。

義経は、恋人の静のことを忠信に託していたので恋人の安否が気になります。
「静はいかがいたせしぞ」と聞くのですが、忠信は「は?」といぶかしげ。

 

忠信が言うには、八島合戦のあと、母が病気になったというのでずっと、本国出羽に帰っていたというのです。そして、母が亡くなり、忌中の間に、今度は合戦で受けた傷から破傷風になってしまった。そのうちに、頼朝と義経の不仲が決定的になったと聞き、無念な気持ちで切腹をしようかと思ったけれど、せめてもう一度義経に会おうと思って来たんですけれど、何か?

というわけです。

義経大いに怒るの巻

さあ、義経は怒った。
伏見稲荷で、お前、国から帰ってきて静を助けたじゃないか。だから自分は鎧などをお前にあげ、「源九郎義経」の名前を名乗ることを許し、いざとなったら義経の身代わりになることを約束して、静を守るってことになっていたじゃないか(そのあたりは、2段目伏見稲荷で描かれます)何を言っているんだ?はー?

 

さては、自分を裏切って静を鎌倉(頼朝)に渡して、自分のことを調べ上げに来たな!よくもよくも、そんな白々しいことを言って、自分はそんなぼんくらではないわ。おのれ、ひっくくってやる!

とたいそうな権幕です。セリフはそうだけれど、品がいいから静かに怒ってます。

それはそうですよね。愛する静を託して、頼りに思っていたのに、「今来たんですけれど?」なんて白々しくいわれたのですから。

「えー?どういうこと?」と忠信が面食らっているところに、静が登場します。

静、しずしずと登場の巻

「わが君さま、おなつかしゅう存じまする」
〽 恋しゆかしのためだめを、涙の色に知らせけり

「忠信は、どうした?」と今度は静に聞く義経
さっきまで一緒にいたのに、と見まわして、忠信をみて、あ、なーんだ。ここに来ていたのですか。もう、さっさと先がけてきてしまうなんて自分勝手なこと…。と静。

ますます訳がわからない忠信です。

「あのー、いま国から来たばかりで、静殿にお目にかかるのも、去年お別れしてから今が初めて…なんですけれど…。」

などというものだから、「冗談ばっかり。今の今までいっしょだったでしょう」と笑われてしまう。ところが静と共に来た忠信を連れてこようとした亀井六郎が、忠信がいなくなったとぼやきます。

初音の鼓を叩いてみれば の巻

ここらでやっと義経も、あれ?ここにいる忠信は、静とともにいた忠信ではないのかなと気づきます。二人いるのもおかしい話。どういうことだろうか。
静も、忠信をよくよく見れば、
「そうおっしゃれば、どうやら小紋の模様も違うてある」と考え込む。

いい考えがあると静は、初音の鼓を出します。

道中、静が義経を思って鼓を打つと、必ず忠信が現れたというのです。しかも、鼓の音を聞いているときの忠信はなんとも酒に酔っているかのよう。打つのをやめれば、キョロリと目がさめたようになる。よくよく鼓が好きなのだと最初は思っていたが、2度、3度と重なるうちに、だんだん気味が悪くなって鼓を打つのをやめてしまったというのです。

そこで、義経はひとまずここにいた忠信は奥の書院で詮議するといって、もう一人の忠信の詮議を静に託して奥へ入っていきます。

静はゆっくりと鼓を肩に上げ、優雅に打ち鳴らします。
すると、鼓の音に誘われるようにもう一人の忠信が登場します。

この時、揚幕から「出があるよ!」という声がかかりますが、コロナ禍の今回どうでしょうか。

※追記。声かかりました。この時、揚幕シャリンとなって「出があるよ」と声があるので、思わず揚幕のほうを見てしまう。すると舞台に狐忠信が登場しているので、狐忠信が登場する瞬間を見損ないます(;^_^A その瞬間を観たければ、舞台に注目しておいて!

ドロドロ~っという太鼓の音とともに忠信の登場です。やはりコイツ怪しい!と静は感じ、斬りかかります。

ピュアな狐忠信の愛情にしんみりの巻

静に責められ、ついに忠信はしおしおと、語り始めるのです。

 

狐言葉といって、ちょっと妙ちくりんなイントネーションです。笑わないでくださいね。
なんと、静の持っていた初音の鼓は、この偽忠信の親狐の皮で作られていたのです。

「その鼓は、わたくしの親。わたくしめは、その鼓の子で、ござりまする!」

あっという間に、狐忠信は舞台から消え、そして狐に変身して再登場します!

鼓が朝廷にある間は、恐れ多く親孝行もできなかったが、義経の手に入ったことで子狐は忠信に姿をかえ、鼓と静を守ってきたのでした。しかしもう本物の忠信が出てきたからには、仕方がない。古巣に戻りまする。

せめてもの思い出に、大将より賜った名前源九郎をわが名前として…と涙。

義経も奥より出て、なんとも不憫なことだなあと感じ入り、もう一度呼び戻すよう静に命じます。

ところが、今度は打とうとしても、鼓の音が出ないのです
〽 打てば不思議や音は出でず、上(ちい)と平(ぽう)とも音せねば

親子の別れを親も悲しみ、音を止めてしまったのでしょうか。

喜びの源九郎狐の巻

義経とても、親は討たれ、今は兄とも仲たがいの身の上。親孝行ができたとはいいがたい。子狐に自分を重ね合わせて、静と嘆き悲しみます。

そこへ、再び子狐が姿を現します。

義経は、子狐の親孝行の思いと静を守ったことをほめ、初音の鼓を子狐に与えてやると伝えます。

ああ。どれほど狐はうれしかったことでしょう。喜んだことでしょう。
鼓を転がし、いとおしみ、体中で喜びを表現するのです。

そして、はっ!とあることに気づきます。
そういえば、悪僧たちがこの館を夜討ちする計画だったっけ。子狐は神通力で僧たちを引き入れ、義経と静を守ると告げ、必ず油断あそばすなと言い残し

〽飛ぶが如くに

去っていくのです。

見どころ

 

1 狐が愛しい


正体が明らかになると、狐忠信は、しゅんとして親への愛情を切々と語ります。愛しいですね。狐詞(きつねことば)は、狐のコーンという鳴き声をもとに考えられたと言われています。人間とは違う動物の話す言葉という雰囲気がでています。
母を思い、父を思い、ただただ純粋ピュアな狐に義経も心を動かされていく。私たちも同様ですね。

 

2 義経、忠信、静、すべて美しい


とにかく、美しい舞台です。義経は神々しく気品がある。静も美しい。本物の忠信はさっそうとしていて凛々しく、狐忠信はドロドロという太鼓とともに、手つきも動作も少々怪しさを感じさせます。

 

3 忠信と狐忠信、源九郎狐への早替わり

忠信と狐忠信は、一人二役です。だから、忠信は二人ですが、決して同じ舞台にはいません。必ずどちらかは引っ込んで、着替えて出てきますが、早い…。偽忠信から狐になるところが、とにかく早い。。歌舞伎の早替わりのすごさは、役者はもちろん裏のスタッフの努力の賜物。今回も引っ込んだと思ったら出てくる、そのスピード感を楽しんでくださいね。それから狐がどこから出てくるかも注目ですよ。
忠信と狐忠信も着替えが必要ですが、さらに狐になると「毛縫い」というぬいぐるみみたいな着ぐるみのような衣裳に早替わり。

四の切もお家の型がいろいろです。狐が最後に引っ込むところは、お家によってさまざまですが、何といっても派手なのは澤瀉屋です。これは昭和43年に、3代目猿之助(現猿翁)が4代目市川小団次の宙乗りを復活させたものです。源九郎狐は鼓をもってはしゃぎながら宙に消えていくのです。それに慣れてしまうと、他の家の型が物足りなく感じる方もいるかもしれませんが、私はどの型も好きです。どれも狐の親を思う気持ちがいっぱいこめられたひっこみです。

4 美を堪能!今回の役者

佐藤忠信 実は源九郎狐 獅童
源義経 染五郎
駿河次郎 團子
亀井六郎 國矢
静御前 莟玉

2020年11月は、この顔ぶれ。獅童はどんな忠信を演じてくれるでしょうか。楽しみです。
また、染五郎は類まれなる気品がありますから、義経はピッタリすぎるほどピッタリ!
染五郎と1つ違いで仲もいい團子(香川照之の長男)とも息の合った掛け合いを見せてくれるでしょう。
また、静御前は、まるること莟玉クン。優しすぎて、ちゃんと忠信に斬りかかれるかしら。

概況

義経千本桜」は、延享4(1747)年、大坂竹本座で人形浄瑠璃として初演。翌年歌舞伎として上演。2世竹田出雲、三好松洛、並木千柳の合作。全5段のうち、「川面法眼館」4段目の切なので、通称「四の切」と呼ばれる。

上演スケジュール

11月歌舞伎座
11月1日(日)~26日(木)休演は6日(金)、18日(水)
第4部 19:30~開演

1等席8000円
2等席5000円
3階席 3000円
1等桟敷席 8000円

 

※なお、コロナ禍で演出が変わっていることも予想されますので、あらすじ多少変わっているかもしれません。ご了承くださいませ。