「初めての歌舞伎を楽しもう」munakatayoko’s blog

すばらしき日本の芸能、歌舞伎。初心者にわかりやすく説明します♪

第26回稚魚の会・歌舞伎会合同公演

毎年夏に国立劇場小劇場で開催される「稚魚の会・歌舞伎会合同公演」に今年も行ってきました。

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筋書。傾城反魂香にちなんだ虎の絵

 歌舞伎役者というのは、親が歌舞伎役者でないとなれないと思っている方が多いかもしれませんが、そうでもありません。なかなか主役になることはむずかしいですが、一般家庭から出た歌舞伎役者はたくさんいます。

 

一般家庭から歌舞伎役者になるには、二つの方法があります。ひとつは役者さんの弟子になり部屋子になること。

片岡愛之助さんや中村莟玉さんがその例ですね。

 

もうひとつが、国立劇場の研修生になることです。昭和45年から歌舞伎俳優の養成研修を開始した国立劇場。今では97人もの一般家庭出身の役者が歌舞伎界で活躍しているそうです。これは何と歌舞伎役者の約32%を占めているそうです。

 

この研修修了者による「稚魚の会」。そしてそれ以外の一般の名代・名代下の役者による「歌舞伎会」。合同での公演は、平成11年以降毎年開催されています。

 

今年はコロナ禍もあり、通常の公演も5か月にわたり休止になりました。また8月から再開したものの、密を避け、最低限の人数での公演となるため、出演できない役者さんも多いのです。

 

この公演も開催できるか危ぶまれましたが、無事開催できて本当によかった。日頃の練習の賜物を見せるチャンス。そして、本公演ではなかなか味わえない主役を演じられるのもこの公演ならでは。どの役者さんたちも演技に熱がこもるのも当然です。

 

さて、今回は、「修善寺物語」「茶壷」「傾城反魂香」の3本です。

とりわけ私が心をつかまれたのは「修善寺物語」です。

 

3年前の2017年、名古屋の平成中村座公演の合間を縫って坂東彌十郎さんにインタビューをする機会がありました。その年の8月に彌十郎さんはお父さんとお兄さんの追善供養で修善寺物語をやることになっていたので、たっぷり「修善寺物語」への思いを伺うことができたのです。

 

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 2017年に追善供養をやることが決まったとき、彌十郎さんは、演目は迷わず修善寺物語に決めていたそうです。

詳しくは記事に書いてありますが、師事していた猿翁の当たり役であったこと、父好太郎が地方巡業で主役を演じた数少ない演目であったこと。それを知る故勘三郎からも「追善興行やれよ、やるなら修善寺物語だな。俺も出るからな」と言われていたことなどが、追善供養に「修善寺物語」を選んだ理由だと伺いました。また、勘三郎丈は亡くなり、その約束は果たせませんでしたが、息子である勘九郎が「親父がやると言っていた役は、僕がやりますよ」と言ってくれたそう。猿翁は出演はできなかったが監修をしてくれ、猿之助が出演。8月の舞台はこうして、追善供養にふさわしいものとなったのです。内容もとてもよい作品なので、私にとってもとても思い出深い演目となっています。

 

彌十郎さんにとって、とても大切な演目である「修善寺物語」。今回の公演では、その彌十郎さんが、指導を行っていました。並々ならぬ想いで指導したに違いありません。

 

若手にもその気持ちは伝わったのではないでしょうか。とても熱のこもった芝居となっていました。

 

主役夜叉王は、中村橋吾の熱演、声も姿もいい中村好蝶の姉娘かつら。声にはりがあって品よく美しかった源左金吾頼家は、中村梅寿。

 

実力はありながらなかなか主役につくことができない人たち、これからの歌舞伎界を支えていく人たちをこの機会に観て、知って、ひいきの一人に加えて応援していくのもまた楽しいものですよ。

 

ほかには、楽しい「茶壷」、上演機会の多い人気の「傾城反魂香」。

狩野雅楽之助を演じた市川新八や土佐修理之助を演じた尾上音蔵が、声もよく姿もよかったです。また、又平女房のお徳を演じたのは中村梅乃。実力派ですよね。どもりの夫を支える、口から先に生まれたようなおしゃべり女房を、情愛たっぷりに演じてホロリとしました。

 

小さな会場なので、役者さんの顔もよく見え、4500円とチケットも安く、新たなごひいきも見つけられと楽しみがたくさんあるので、来年もまた行きたいと思います。皆さんもいかがですか。

 

同じように8月は「音の会」の公演もあります。これは、竹本、鳴り物、長唄の若手演奏家たちの発表会で、こちらもおすすめなのですが、結構チケット取るのが難。当日に売り切れて、私は今年は取り損ないました。来年は、万全の体制でチケット取り、がんばりたいと思います。

 

<第26回稚魚の会・歌舞伎会合同公演>

2020年8月15日~19日

修善寺物語

・茶壷

・傾城反魂香~土佐将監閑居の場

観劇料 4200円(一般)2900円(学生)