昨日、浅草演芸場で行われた第10回清道會に行ってきました。
清道會というのは、清元斎寿さんの自主公演です。
斎寿さんは、清元延寿太夫さんのご長男。三味線の奏者で、弟は尾上右近さんです。
清道會は、10回目だけれど、実は11年かかっているそうです。それはある年ガンにかかってしまい、公演が行えなかったためだそうです。
無事、ガンを克服され、また清道會を続けることができたことはすばらしいですね。
演目はふたつ。
隅田川は、斎寿さんが長年目標にしていた大曲だそう。
人さらいに、子どもをさらわれた母の悲哀です。
子どもは12歳。子どもをさらわれた母は、子どもの姿をもとめてさまよい歩き、隅田川のほとりにたどり着きます。そこで船人に、病気で人買いに捨てられた少年の一周忌が行われていることを知らされます。その子が、まさに会いたかった我が子。お墓で少年の亡霊と出会いますが、幻は消え、母だけが残される。
悲しい悲しいお話ですね。
踊りもなく、背景もなく、三味線と浄瑠璃の美しい声だけが響きます。お父さんの延寿太夫さんの高い澄んだ声は、母親。栄寿太夫さん(右近くん)の太くしっかりした声は、舟人です。
普段、ついつい舞台ばかりに目が行ってしまいますが、こういった会に出ると、鳴物、清元などを堪能できて、とてもいいものです。
二つ目の演目は、三社祭。
小声で正直に言うと、これが目当てであったわけですが。
三社祭は二人の漁師に天から降ってきた善玉・悪玉が乗り移り、軽快に踊るという演目です。今回はこれを、若手で踊りの名手、右近くんと中村種之助クンが踊るということで、楽しみにしてきました。
実際素晴らしかったです。
通常は、前半は漁師の拵え、そして後半は悪と善のお面をつけてコミカルに踊るのですが、今回は、素踊り!素踊りというのは、衣裳などをつけずに紋服で踊ることです。化粧もしていないので、踊っている素顔を堪能できます。また背景や小道具もない分、踊りにごまかしがきかないともいえるでしょうね。扇とかいくらいでしょうか。
二人ともとても踊りが上手なので大好きなのですが、素顔を見ていたら、まあ軽やかに、そして楽しそうに踊るんです。テンポは速いし、何をどうやったら、こういう振り付けができるのだろうと思うくらい、飛んだり、クネクネしたり、華やかで、軽やかで、おかしくて、楽しくて。
たった20分の演目ですが、いつまでもいつまでも観ていたい、そんな三社祭でした。
二つの演目が終わると、最後に斎寿さんが舞台でご挨拶。
自主公演って、大体10回もやれば卒業となることも多いので、これが最後なのかなという思いが頭をよぎりましたが、30回でも50回でも続けたいという心強い宣言に、会場からは拍手がわいていました。
演目は少なくともぎゅっと凝縮、詞書もいただけて読みやすく、近くの席で見られて踊りも三味線も清元も堪能できました。