「初めての歌舞伎を楽しもう」munakatayoko’s blog

すばらしき日本の芸能、歌舞伎。初心者にわかりやすく説明します♪

中村種之助 花道会セミナー

今日は歌舞伎座3階「花篭」で開催された花道会セミナーに参加しました。

花道会セミナーは、花道会会員ではなくても単発で参加することができます。

 

今月、昼の部も夜の部も出番がある忙しい中、種之助氏の登場。

どんな装いで来るかな~と思ったら、スーツだった。お似合い。

 

登場するといきなり「播磨屋!」と声がかかり、会場がわっと沸く。温まったところでさっそくイヤホンガイドの吉崎典子さんを聞き手に、始まった。

 

10月の歌舞伎座夜話歌昇さんが、ガッツリまじめだったのに比べると、どことなく飄々としていて、柳に風みたいな感じ。うまく受け流したり、かわしたり。かと思うと、気が付いてみたら意外とまじめに話していたり。興味深い話もあり、楽しめるセミナーだった。

メモ書きそのままですが、記録として残します。

 

<まずは今年の演目より>

 

【11月歌舞伎座

出番は、素襖落、楼門五三桐、法界坊。

・素襖落

あこがれていたので関われてうれしい。

 

・楼門五三桐

吉右衛門菊五郎というおふたりの舞台に出られるのはありがたい限り。完成された中に新しい風を吹かせたいが、まだまだまだまだ。

 

・法界坊

野分姫は2回目。お姫様らしくやるようにと言われたけれど、「お姫様らしくって、何?」。せかせかせずにゆったりとした動きを心がけた。

 

猿之助さんとは昨年の浮世風呂以来?浮世風呂のときは、なめくじ役。出番は短くていいお役だった(笑)。猿之助さんに「いいなあ、僕なめくじやりたいんだよ」と言われた。

猿之助さんは、三助もなめくじもどちらもやっている。どちらもやっているのは、猿之助さんと父親又五郎くらいのものなので、僕もいつか三助をやりたい。

 【10月】

10月の酒呑童子もいずれやってみたい。あれは中村屋さんのためにあるような演目ですねえ。

 

―10月は、勘三郎さんの追善公演だったが、勘三郎さんの思い出は?

6年前に亡くなったので、あまり関わっていないが、2010年のさよなら公演のときに、道成寺の所化をやったときのこと。揚幕のところに坊主がずらっと並んでいるときに、勘三郎のおじさんに「みっちゃん(又五郎さんの本名は光輝)そっくりだね」と言われた。(それでなんとなく喜んでいたら)中日に部屋に呼ばれて「セリフがなんかおかしいんだよなあ」と言われてしまった。で、「今いくつ?」と言われたので16、だか17だかと答えたら「当時のお父さん、もっと上手だったよ」と言われて…。

でも、あの時初めて大人の仲間に入れてもらったような気がしました。

筆者注)これは、葛西聖司著「僕らの歌舞伎」にも語られているエピソードですね。「僕らの歌舞伎」では、そのエピソードのあと、

勘三郎さんって、いいですねえ。

本当に雲の上の存在。その勘三郎のおじさんが僕のことを気にしてくれて、身近な父が実は遠い存在で、けれども同じ舞台に僕が立っているんだと再認識されたんです。

「僕らの歌舞伎」より

 と語っています。忘れられないエピソードですね。

【9月幽玄】

いやあ、すごい演目でした。「そこではいって」と言われても「どこで?」という感じで、どこから入っていいかもわからない。日体大の集団行動を作った感じ。左右の人たちと、一つのモノを作り出そうと頑張った意欲的な作品です(と、棒読みだったので、本心は違うのかな?笑)

獅子についても、「高ぶるのを抑えて」と言われたのは初めてだったので、「高ぶるのを抑えて」やりました。

毎年8月しか休みはないが、今年は幽玄のけいこが双蝶会終わってすぐに始まったので、ぼくの夏休みはどこ~みたいでしたね。

 

(筆者)幽玄は、大変だったのかな。こりごり…なのかな?

 

【双蝶会】

事務方からすべて自分でやっている。

 

教えてくれた人のたくさんの引き出しができた。大きな財産だ。

来年あるかわからないつもりでやっているが、

幸四郎さんに、最初に出てもらったときに「10回続けることを条件に出ます」と言ってくれたので、10回はやらないと…。でも毎年1回だと10回目が30歳になっちゃうから、さすがに30になっても勉強会と言ってられないので、来年、3回連続、同じ演目でやろうかな(笑)

 

吉右衛門さんからはどんな教えを受けたか?

本当は、こうだけれど、こうやろうなんて教えてくれたこともありました。それはなにかは秘密です(笑)。

 

狐忠信が難しかった。出ただけで説得力を持たなければいけないと言われたが。狐言葉、義太夫。セリフと義太夫とのつながりが難しかった。身体的な難しさは、高く飛んだりすればいいけれど、セリフと義太夫のつながりは、まだむずかしい…。

 

【7月大阪松竹 車引 勧進帳

車引の杉王丸は、やんちゃに見えるようにがんばりました。勧進帳の四天王は、他の四天王とはまったく違う。名曲でもあるし、すごく好きなので、やることができてうれしかった。これからずっと四天王でもいいくらい。(弁慶とかではなくて)

幸四郎さんが、ずっとずっとやりたかった弁慶。舞台稽古のところから幸四郎さんの雰囲気、顔からしてすごくて、「本当にやりたかったんだなあ」とひしひしと感じた。

 

【6月 夏祭】

放蕩息子の磯之丞役。その前に、相撲場の与五郎(双蝶々曲輪日記に出てくるお金持ちのボンボン)をやっていたので、そのイメージで入りました。けれども梅枝さんから「あまりに柔らかすぎる」と言われてしまった。磯之丞は、与五郎とは違う。なぜならば磯之丞は侍なんです。だから、そこまでやわらかくせず、でもどこか、かばいたくなるような奴。

「大体お前がそもそもあんなことをしていなければ、こんなことにならなかったのに!」って奴なのに、どこか許しちゃうような、そんな風になるように考えました。

 

【2019浅草歌舞伎】

―まずポスターができましたね。

 

いやもう大変でしたよ。朝7時に浅草集合。ほぼ全員集合しました。ほぼです(笑)

 

―ちょっと合成っぽい感じですけれど、本当に浅草の橋で撮影したんですね?

 

はい。天気が悪くて、道の濡れているのを隠すために、この色(ピンクと黄色)を道に重ねて、それと合わせるために、上の新春浅草歌舞伎を派手めのピンクにした…みたいな…。で、結局本当に撮っているのに、逆に合成っぽくなってしまった…みたいな…。(笑)

 

f:id:munakatayoko:20181119001942j:plain

演目について

昼の部は戻駕色相肩、義賢最期。夜の部は番町皿屋敷と乗合船恵方萬歳に出ます。

番町皿屋敷は、もうもうびっくりしました。

へえ、番町皿屋敷なんだ。ふーん、ふーん、ふーん。え―――――!?俺がお菊~~~!?

って感じ。

ふり幅が広くて…。お菊からの才造ですから。

番町皿屋敷の後でやる割にはいいわね。と言われないよう、一つひとつがんばります(笑)

 

どれも大きなお役なんで、一つひとつ考えて行こうとおもいます。

 

特製弁当ができるらしいです。

ポスターの撮影撮りのときに、全員から好きなおかずを聞くように言われて、僕が一人ひとり聞いていったんですが、梅丸がふまんじゅうとか(笑)。それを全部盛り込んだ弁当ができるらしいです。ほとんど肉、肉、肉でしたけれど…(笑)。僕は銀だら煮つけ(笑)

 

【新作に対する思いは】

Q以前、赤目の転生が面白かったと言っていたが、新作が好きなのか?

「あれは、面白かったです。以上」というだけの話。よく「歌舞伎役者がやれば なんでも歌舞伎なんだ」という言い方をされるが、僕はそれはちょっと違うと思っている。歌舞伎をしっかりできる人がやれば、何でも歌舞伎になるかもしれないが、まだまだ自分は「歌舞伎ができます」とは言い切れない。だから、まずは歌舞伎ができるようにならなければいけないと思う。新しい作品には出てみたいし、声がかかればありがたいが、そんな気持ちでいる。

 

新作は視野には入っているということですね?

 

視野に入っていても、その役が来るとは限りませんのでね(笑)

 

【父・又五郎さんの指導とは】

ここはこうした方がいいという言い方は、ない。「これはダメ。これはおかしい」という言い方のみ。

 

筆者注:最低ラインは押さえていて、あとは自分で考えるというのは、いい指導だな。

 

歌昇兄とのやりとりは?

ないです(笑)。先月中村屋と一緒にいたが、勘九郎七之助は楽屋でもずっとしゃべっていてびっくりした。仲良すぎですよね。あんなに仲良くはないです(笑)。

今月は「おはようございます」しか会話はないです(笑)

 

ー甥っ子はかわいい?

かわいいです。「将軍」と呼ばせています(笑)。将軍って言えるかな?と試してみたら言えたんで、そのまま「将軍」に。自分を指さして「誰?」と聞くと「将軍」っていう(笑)

 

まだ「ありがとう」も言えないのに。将軍って言える笑。プレゼントは生まれたときに毛布をあげたくらいで、他には何もあげていない。ありがとうと言えるようになったら、おもちゃとかあげようかな。今は電車がすきです。

 

ーこれからお年玉とかも上げるようになるのかな?

お年玉?お金はね~~。行先が違うとこに行っちゃうからあげない(笑)

【今後やりたいお役は】

そんなに先のコト考えてもしょうがない。今は「来月の役を早くやりたい」と、毎月そう思っています。12月は国立。

 

でも、踊りはずっとやりたいなあ。芝居は、考えすぎてしまうんです。「考えすぎて表に出ていない」と梅枝さんに言われた。踊りは、音がどんどん迫って来るから考えている暇がないのがいいのかな。

 

―やりたい役は?

俊寛

 

尊敬してやまない吉右衛門のおじさんのやっていることが僕のやりたいことでもあるが、吉右衛門にはなれないです。体格も、ニンも違う。

けれどもおじさんの舞台で生きる心構え、そういうところが播磨屋の芸。そういう部分を大事にして、継承していきたい。

 

僕は「歌舞伎が好きで好きでしょうがないというタイプ」ではなくて、「あこがれている先輩みたいになりたい」という気持ちが強い。舞台がうまくいかないときもあるけれど、それを舞台で引きずらないように、ヤケクソでもいいのでプラスに変えてやっていきたい。

【尊敬する人】

吉右衛門さんのほか出てきたのが、天王寺屋さん。

天王寺屋さんが大好き。(富十郎さんのこと?要確認)

人柄も好きだけれど、「歌舞伎役者は額縁からはみ出しちゃいけない」と言いつつ、自ら額縁を広げちゃう人。

 

(筆者注:これは奥深い言葉ですな。額縁からはみ出してはいけないけれど、自ら額縁を広げる…。うーむ。深い…)

 

浅草の戻駕色相肩は、山城屋さん。乗合船恵方萬歳は、天王寺屋さんに従ってやるつもり。あこがれに向かって進みたい。

 

Q&A

ー今年のお正月の操り三番叟が素晴らしかったのですが、梅丸さんとの息もぴったり合っていましたね。あれは、どうしてみてもいないのにあんなに息が合うのですか?また、人形の浮遊感はどうやっているんですか?体重を全然感じませんでした。

 

かかとをつけると、体重を感じるので、つまさきで移動したり、着地の音を出さないようにするなどの工夫をしました。

梅丸との息を合わせるのは…、実は隠れた秘密があります。ひみつです(笑)

あとは、雷門助六の操りの踊りなどを参考にしました。

 

ーーーーー

こう書いてみると、結構まじめだなあ(笑)。はぐらかされているようで、ちゃんと言っていることは言ってますね(^^♪

 

睡眠不足気味で、いつも眠そうって言われちゃうという種之助クン。休みの日にはひたすらダラダラしているそうです。

 

吉右衛門のおじさんをこよなく愛していて、播磨屋として継承していきたいというのは歌昇さんと同じご意見でしたね。

 

まだまだこれからの伸びしろをたくさん感じる種之助クン。なめくじ以降、女形のお役も増えたと嬉しそうに言っていたので、当分かわいいお役が見られそうで楽しみです。

浅草では踊りも番町皿屋敷も、堪能できそう!

 来年も播磨屋をますます盛り上げていってくださいね!

 

※2018年11月19日、追記修正しています。