先ほどちょこっと書きましたが、今銀座ミキモト本店で、「二代目 中村吉右衛門写真展」を開催中です。銀座に行かれることがあればぜひ寄ってみてください。
銀座ミキモト本店は銀座駅からすぐ。7階のミキモトホールは、それほど広いスペースではないのですが、そこに吉右衛門丈の宇宙が広がっています。
撮影したのは鍋島徳恭氏。2012年からすべての吉右衛門の舞台で撮影を行っているそうです。その中からの選りすぐりの何点かな。20~30点(記憶あいまい)の吉右衛門丈。
俊寛、河内山、弁慶、富樫、大蔵卿、知盛、五右衛門。舞台の上。楽屋内。花道前。
単なる写真と違うところは、2.4メートルという巨大な伊勢和紙にインクジェットで印刷されていること。伊勢和紙が、プラーンと上からぶら下がっており、説明も演目と年月が記されている程度で、最小限なのが大変よろしい。
その圧倒的な存在感。「迫力」という言葉では言い尽くされない、「宇宙」感。
運慶・快慶作の東大寺南大門の金剛力士像って、圧倒的な存在感でしょう?あんな感じです。1枚1枚の写真が。
今「写真」と書いたが、あれは写真だったのか? 存在そのものだったのでは?
一番奥にはスクリーンがあり、弁慶と富樫のやり取り、俊寛が、コマ送りの画像で展開されます。これがまたいいのです。動画ではなく、コマ送り。弁慶も富樫がどっちも吉右衛門。
みょうちきりんなBGMが物悲しくて、なんだか切なくなります。死んだ人を悼んでいるみたいで哀しくなるのですが、吉右衛門丈はまだまだ生きていて元気いっぱいで今月は歌舞伎座。来月は国立劇場でその雄姿を見せてくれるのだから、ああよかったという気持ちになります。ちょっと違う音楽にしてほしかったな。
私と同じような気持ちなのか、はたまた違う気持ちなのか。
同じ空間にいた人々は、皆一様に呆然と立ちすくんで、吉右衛門丈に見入っていました。呆けたように、なす術もなく、見上げていましたよ。
「楼門五三桐」を一幕見てからこの写真展を見るなんて最高ですね。
あるいは、東劇で、11月末日までやっているのが「ふる雨に袖はぬらさじ」ですから、これを見てから吉右衛門写真展に行ってみるなんてのも、なかなかオツですね。
ぜひぜひ。
◆11月7日(水)~12月9日(日)
◆午前11時~午後7時(最終入場 午後6時45分)
◆ミキモトホール