「8月の納涼歌舞伎は、初めて見る人向け。秀山祭は重厚だからむずかしい?」そんな変な思い込みがどこかにあるとしたら、まずとっぱらってください。
今回の秀山祭、初心者でもとっても楽しめます。(そして、幕見も空いているので、気楽に見に行けますよ( *´艸`))
まずはあまりポピュラーではない「再桜遇清水(さいかいさくらみそめのきよみず)」をご紹介。
これがすごく面白くて、これが歌舞伎の楽しさだ!と満喫できます。
早変わり(染五郎さんご苦労さん!)、見得、ずらりと花道に並ぶ奴ども、ていねいなしぐさ、言い回し、だんまり、
なにもかもいい!宙乗りなんてありませんが、歌舞伎のよさを満喫できます。
「遇曽我中村」というお芝居をもとに松 貫四が書いた作品ですが、この松 貫四というのは、当代の中村吉右衛門その人であります。
今回監修も担当し、並々ならぬ熱意で出来たこの作品、とてもおもしろくて笑いあり、早変わりあり、丁々発止のやりとりあり、恋あり、失恋あり、ついでに幽霊ありのもりだくさんな内容です。
【内容】
天然で、ピュアで、真摯、真面目なお坊さんが、お姫様に一目惚れ。イカンイカンと思いつつ、恋の病にとりつかれ、よかれと思って引き受けた身代わりだったが、そこからどんどん堕ちていく。人間って浅ましい!でも、どこか笑って見ていられる楽しいお芝居。
【出てくる人々】
清水法師清玄(染五郎) とっても純粋でピュアなお坊さん。あるときお姫様に一目惚れ。でもそんな邪念は振り払って修行しなくちゃと思っている真面目な青年。ところが運命の歯車はー!
奴浪平(これまた染五郎)千葉之助清玄の奴。気の利く奴。とにかく清玄とクルクル早変わりだから、染五郎さん忙しい!
桜姫(雀右衛門)千葉之助清玄にぞっこんのお姫様。清玄に恋文を出して、しっぽりしけこんでいるところを見つけられて、さー大変。
千葉之助清玄(錦之助)イケメン。お坊さんの清玄はせいげん。こちらはきよはると読みます。桜姫といい仲なところを見つかって、万事休す!
山路(魁春)桜姫のお付のお女中。清玄あての恋文をいやな野郎に見つけられ、万事休すのところ「あ、そ、それ。きよはる宛じゃないから。坊さんのせいげん宛だから」とごまかして、窮地を救う。
【見所】
・染五郎の、奴浪平と清水法師清玄の早変わり。何度となく(笑)何度となく(笑)。次第に慣れてくると「そろそろ引っ込んだほうがいいんじゃないか」などと余計な心配も(笑)。
よく早変わりが過ぎると、観客の頭の中でどっちがなんだかわからなくなってきますが、今回はストーリーがすっきりしていて混乱しません。
・染五郎の、ピュアで天然で真摯な坊主清玄が、お姫様に一目ぼれして、「嫉妬」や「所有欲」などイケナイ感情がムクムクと湧き上がり、イケナイと思いつつコントロールできなくなり、自滅していく様。
・山路(お姫様のお付の女中)が、すご腕の参謀。
ほかにも見所はたくさんです。
・児太郎、米吉がかわいい。特に児太郎がエロ坊主となり果てた清玄の庵室で慰みものになってしまい、庵室から出てくるところは、セリフがなくてもすぐそのことがわかるヤサグレ感、色っぽさ。
・歌昇、相変わらずの声のよさで、弟の種之助クンとともに舞台を盛り上げ。
吉右衛門丈に関しては、昼の部の幡随長兵衛と、夜の部のひらかな盛衰記に出演。
ちょっとふらつく場面もないことはないが、その存在感と、人間性の素晴らしさがにじみ出るんです。舞台に出ていなくても、その存在感に揺ぎがありません。
ぜひたくさんの方に見ていただきたい秀山祭です!