国立劇場の歌舞伎教室は、毎年中高生のために行われている事業で、歌舞伎好きな人はもちろん、観たことのない人にも超おススメだ。
そういえば、昨年は中止になったが、該当の学生たちはもうチャンスは奪われてしまったのだろうか。残念なことだ。学生さんたちは、あれもこれも行事がなくなり、気の毒でならない。
国立劇場歌舞伎教室のおススメ理由。
解説がある
前半、歌舞伎の見方の解説がある。舞台機構や歌舞伎独特の物事について、また後半で上演される演目のちょっとした解説も、若手俳優がしてくれる。
わかりやすい演目
後半は演目だが、大概わかりやすいもの。
2時間で終わるので、楽
解説20分。休憩20分。演目100分程度。短いので初めてでも負担なく観られる。
パンフレットが無料
かいせつとあらすじのほか、出演者の写真と簡単なインタビューのほか、今年でいうと、江戸町人の暮らし、50両って今だといくらくらいなのか、原作者の円朝と歌舞伎の関わりなどが、とってもコンパクトにまとめられている。
とにかく安い
とにかく安い。一等席が4100円なのだ(2018年は4000円だったからいつの間にかじわっと値上げしているけれど)。2等席は1800円。学生は一律1600円! 歌舞伎座の一幕見が今ない状況で、この値段で観られるのは本当に貴重!しかもいいお席。
子どもを連れていくにも、歌舞伎座だとまるまる大人と同じ料金を取られてしまうので、結構お財布がキビチイ。
今年6月は文七元結
さて私は初日に行ってきた。この日はどこかの学校でキャンセルになったのだろう。前の席がガッポリ空いていてもったいなかった。日によってはまだ席も空いているので、ぜひ気軽に行ってみてほしい……と思っていたら、初日以降も前の席が結構空いている模様。キャンセル多いのかー。残念。
国立劇場は傾斜があるのか、後ろの方の席でも、見やすいので、空いている席があれば後ろでもなんでも取って行ってみてほしい。
今年の演目は、6月は「文七元結」。7月は「義経千本桜」の四の切だ。
6月の解説は中村種之助クン! いえ~い。
意外にも鑑賞教室は初めてだという種之助。解説は、きっと一昨年の(げ!もう一昨年)のナウシカ後編での道化の進行役の評判が良かったから抜擢されたのだろうと思ったが、役者にとっては、素顔か、化粧をしての登場かでは、全く違うらしい。
先日紀尾井町家話で種之助が語っていたが、「いやもう素顔(で出るの)は、苦手。恥ずかしい」と相当照れながら言っていた。そんなものなんですねえ。
解説は、毎年学生たちが興味を持てるように様々な工夫をしており、苦労がしのばれるが、今年もなかなかよかった。
ダイナミックな太鼓が鳴り響き、セリをガーンとアップ、回しながら上下に動かし、印象づけた演出からの、なぜか伽羅先代萩のねずみ、そしてすっぽんから種之助くん、ドロドロで素顔で仁木弾正の体(てい)で登場。なんで?(笑)。
後半世話物だから、ちょっと時代物の演出もみせたかったのかな!
〇〇を売りに来た商人と種之助のやり取りは、ただの前座じゃござんせん。次の演目のポイントにもなる説明が入っている。「掛け」ってなんだ?とか「50両って今でいうといくらくらいになるのかな」など、わかっていると後半の演目の理解が深まるので、しっかり聞いておこう♪
文七元結
文七元結は、江戸時代の現代劇で世話物というジャンルになる。言葉もわかりやすいし、内容もわかりやすい。
歌舞伎の突拍子もない筋立てや、隈取、見得などをみたい人にはお勧めできないが、「歌舞伎はむずかしい。敷居が高い」と思っている人にはぜひ見てほしい。
「え。これも歌舞伎なの?」と認識を新たにできるはず。
文七元結については別稿こちらで。↓
今日の周りの中高生も、熱心にお目目キラキラさせておとなしく見ていた♪寝ている子もいたけれど、大体歌舞伎座で寝ている大人と、比率は同じかな(笑)。
蛇足ながら
「歌舞伎の見方」のあとの20分ほどの休憩は、いらないと思う。学生たちが解説を聞いて、「よっしゃ。いよいよこれから歌舞伎が始まるぞ」と前のめりになったところで20分の休憩になるため、気がそがれる。今年は特に「ええ~」みたいな失笑が広がった。すぐに演目になだれ込んでいいのではないかと!