「初めての歌舞伎を楽しもう」munakatayoko’s blog

すばらしき日本の芸能、歌舞伎。初心者にわかりやすく説明します♪

時今也桔梗旗揚(ときはいま ききょうのはたあげ)

国立劇場3月の歌舞伎、時今也桔梗旗揚(ときはいま ききょうのはたあげ)は、歌舞伎初心者や、子どもにもおススメですよ!

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題材は、明智光秀。テレビの大河ドラマで昨年度人気となった「麒麟がくる」も明智光秀でしたね。世間的に注目を浴びている明智光秀で目をつけたところはナイスだと思います。

 

■簡単に言うと。

ご存じ、本能寺の変織田信長を倒した明智光秀です。今までにもいろいろな作品で様々な描かれ方がされていますが、「時今也桔梗旗揚」では、信長(作品では小田春永)のこれでもかこれでもかとパワハラをされて、耐えに耐えるお役。ただ最後にはメリメリと三方を踏み砕いて、爆発します。

■事前に解説あり

本編が始まる前に、入門「歌舞伎の明智光秀」と題して、簡単な概況、説明がありました。オープニングの音楽が、「麒麟がくる」で、おお!と会場がどよめきます。

 

片岡亀蔵さんが、鶴屋南北の弟子、鶴屋東西と称して出てきて、説明をしてくれます(思わず笑った。南北の弟子で、東西って…)

 

歌舞伎鑑賞教室みたいな感じですが、説明うまく、外題の説明から「ときはいま、あめがしたしる さつきかな」という有名な歌に関しての見方、馬盥についての説明など、ポイントをあらかじめ説明してくれるので、観ていてわかりやすいと思います。

 

馬盥にしても、舞台に出てくる馬盥は、塗り物のとてもすてきな桶なので「大きくてりっぱな盃」としか見えません。どれほど屈辱的な行為をされているのかというのが、わかりにくいですよね。東西さんによれば、「掃除をするバケツに酒を入れて飲ませられるようなもので」とのこと。なるほど、何たる恥辱!と納得です。

■わかりやすい人物設定

いじめる小田春永。耐える武智光秀。という図柄が非常に分かりやすいので、初めてみる人や、歴史好きの人、「麒麟がくる」を楽しんでいた人。お年を召した方から小学生くらいでも楽しめると思います。

憎し、強し、激しくて理不尽な小田春永

 小田春永を演じる坂東彦三郎は、とにかく声が大きくて、張りがあっていい声。大音声がビリビリと3階の隅々まで響き渡ります。その迫力で「黙れ!光秀!」とか「打って、打って、打ち据えい!」などと吠えるものですから、家来でなくとも縮み上がってしまいます←私。でもいい声だから不快にあらず。

 

どれだけ有能でも正しくても、「なんか気に食わない」という人なんでしょうか、春永にとっての光秀は。理路整然と言われれば言われるほど、カッカと頭に血が上る春永です。

 

麒麟がくる」は私も楽しみに観ていましたが、まん丸顔で「母上に認めてもらえなかった」と嘆く信長は、どうも私のイメージとは違う信長であったので、「感情の起伏が激しく、強く、いかつく、理不尽」な彦三郎春永は、腑に落ちるものでした。

美しく耐える光秀

真面目にやればやるほど、浮く。正義を説けば説くほど疎んじられる。そういう環境のときは、そこから逃げるしかないけれど、そうも簡単にいかないのがサラリーマンの辛いところですね。光秀を演じる菊之助は、このお芝居に先立ち、目白にある永青文庫に行って、光秀と信長の書を見てきたそうです。(国立劇場歌舞伎情報サイトより)

光秀の書は、「王道でわかりやすいが、あまり個性的ではなく、非常に実直な人物だということが読み取れるようでした。信長はあくまで強権的で(中略)その書簡はというと、非常に豪快な字で書かれていました。(中略)書簡を見る限り、私自身はどちらかというと光秀のタイプなんじゃないのかな(笑)と思いました」(国立劇場歌舞伎情報サイト【3月歌舞伎公演】『時今也桔梗旗揚』尾上菊之助が意気込みを語りました!より)

 

まあ!菊様ったら!まあ、確かに信長よりは光秀かもしれないけれど、個性的ではないなんてことはございませんですよ。

蘭丸・力丸兄弟がかわいい

 森蘭丸と力丸の兄弟は、歌舞伎の中での荒若衆といういで立ち。森蘭丸が、歌舞伎だとこういう恰好になるのかと興味深いかと思います。

蘭丸は、春永に「光秀を鉄扇で打ち据えよ」と命令され、ためらいながら打ち据えますが、同情しており遠慮がち。そこが人間らしくていいですね。

蘭丸役の萬太郎クンは、「主の小田春永の命とはいえ、武智光秀もずっと上の立場なので、板挟みで胃が痛くなるような思い(筋書、中村萬太郎の言葉より)」をよく演じていたと思います。ずっと萬太郎君を見ていると、春永と光秀のやりとりにハラハラしたり、目を背けたりしていて、その心の内が垣間見えるようでした。力丸は鷹之資クン。セリフがほとんどなくて残念ですが、凛々しくきっぱりと丁寧にお役を勤めていました。

安田作兵衛が、締める!

安田作兵衛は、光秀の家来です。地味な役かと思いきや、最後にぐわっと芝居を締めることができる役者だと、本当にグッと芝居の格が上がりますね。今回は中村又五郎です。

愛宕山連歌の場で、光秀からの文で密命を受けていったん戦の支度のために城へ戻り、最後に、準備が整ったことを告げに光秀のところに戻ります。

 

ピクリと表情を変えて、「奥方ごめん」と城に戻るときの作兵衛の気持ち、いかばかりでしょうか。そして、戻ってきたときの作兵衛がとても雄々しく立派です。

様子はどうだと尋ねる光秀に、

「わが君の下知に従い、今宵本能寺を十重二重におっとり巻き、一度にどっと押し寄せたれば、不意を討たれし敵のやつばら、防ぐとすれど裸武者、大方討ち死に仕れば、わが君にはこれよりすぐにご出馬あってしかるべし」

と朗々と告げるのです。思わず光秀も「おお、心地よし!心地よし!」と満足します。

 

そして作兵衛の「君のご出馬!」という大音声のセリフの、なんと誇らしげで、立派なことでしょう。そこには一片の迷いもありません。

 

ただ、又五郎さんがやせているような気がして、正月以来気になっています。

高笑い

光秀は作兵衛と顔を見合わせ、極まり、大きく高笑い!そして幕。なんとも余韻の残る最後の光秀の高笑いも素晴らしいものでした。

 

■監修は吉右衛門

今回の公演、監修は中村吉右衛門です。菊之助は、一つひとつ丁寧に岳父である吉右衛門から真似、学び、挑んだのです。一つの大きな挑戦を目の当たりにした思いです。

 

■おまけ

国立劇場のパンフレットが充実していましたが、中でも「明智光秀の虚像と実像」(呉座勇一)を興味深く読みました。明智光秀は古典的な教養を備えた常識人というイメージが強いけれど、実際どうなのかなという文です。もしかしたら、冷酷な野心家だったかもよーと、いくつかの資料から読み解いています。

 

■上演情報

3月4日(木)~27日(土)

休演:10日、11日、19日

■チケットは安い!

チケット 1等席 7000円(学生4900円)

2等席(2階)4000円(学生2800円)

3等席(3階)2000円(学生1400円)

チケット購入はこちらから

ticket.ntj.jac.go.jp電話なら国立劇場チケットセンター 0570-07-9900

託児室もあるよ~。←とってもおすすめです。

春休みを利用して、お子さんと行ってみてはいかが?

子どもと二人で1等席でも11000円だもん。

 

ではでは。