「初めての歌舞伎を楽しもう」munakatayoko’s blog

すばらしき日本の芸能、歌舞伎。初心者にわかりやすく説明します♪

『仮名手本忠臣蔵』 七段目 祇園一力茶屋の場

世に「一力茶屋」とか「七段目」とか言われているのは、仮名手本忠臣蔵の七段目のこと。

それほどむずかしくはなく、本当に魅力いっぱいの舞台ですが、まったく話を知らない人は予習しておいた方が楽しめますよ。

 

忠臣蔵とは。

浅野内匠頭が松の廊下で吉良上野介に刃傷に及び、切腹、お家断絶となり、その1年後に家臣大石蔵之助以下46人が仇討ちに成功しました。この事件から47年後に上演された「仮名手本忠臣蔵」は、時代を足利時代、関係者の名前も変えて上演されます。
浅野内匠頭→塩冶判官
大石内蔵助→大星由良助
吉良上野介高師直

七段目登場人物


大星由良助 主君塩冶判官の仇、吉良上野介を討たんと密かに狙うが、それを吉良側に知られないために、毎日芸者を揚げての夜遊びでカモフラージュ中。

お軽 塩冶家家臣勘平の妻。勘平の仇討ち参加の参加費を捻出するために、一力茶屋で遊女となっている。勘平はすでに切腹して果てたが、まだそれを知らない。

平右衛門 お軽の兄で足軽。なんとか仇討ちの仲間に入れてもらいたくて、ウロチョロしているが相手にしてもらえない。妹のお軽が一力茶屋で勤めているんじゃないか、会えるものなら会いたいと思っている。

三人侍 塩冶家家臣の赤垣源蔵、矢間重太郎、竹森喜多八。殿の仇を討ちたいのに、リーダーたるべき由良助は、毎晩夜遊び。やる気があるのかないのか、本心を伺いに一力茶屋にやってくる。由良助にその気がないのなら、一刀両断する覚悟でピリピリしている。

大星力弥 由良助の息子。由良助の本心を知る数少ない人。内匠頭の妻顔世御前からの密書を由良助に届けに来る。

鷺坂伴内 高師直の家来。斧九太夫とともに、由良助の動向を探りに来る。
斧九太夫 塩冶判官の家老でありながら高師直側に寝返った。

 

どうです。登場人物の紹介だけで、ワクワクしてきませんか。舞台は京都で評判の一力茶屋。今でも祇園にある名店です。

五、六段目の舞台がお軽の実家、山奥のわび住まいで、しかも誤解の果ての切腹など、暗いストーリー展開ですが、七段目になって幕があくと、一変!それはそれは華やかな舞台で、夢心地になります。
その華やかな一力茶屋を舞台に、探りを入れに来る敵、味方、密書を届けるもの、密書の中身をのぞこうとするもの、そして大星由良助その本心は? 妹と兄の愛、敵味方の憎、夫婦の哀、誠を知る喜、が入り乱れるのです。

あらすじ

 ・由良助の心底を確かめに、塩冶家家臣がやってくる

由良助は、仇を討つ気はあるのだろうか。

塩冶判官の家来である3人侍が、由良助の本心を探りに来ました。3人について回っているのは平右衛門です。

仲居達とワーワーキャーキャー大騒ぎしている由良助の様子に、3人侍はいら立ちを隠せません。

平右衛門は、仲間に入れてほしいと頼みますがそれもまた、聞いてもらえず、3人侍はかくなるうえは、と由良助を切ろうとしますが、平右衛門は押しとどめます。

 

 ・力弥密書を届けに来る

庭先からこっそり忍んできたのは、由良助の息子である力弥です。由良助は、今までとは別人のように、すっと目を覚まし、周囲に目配りをしながら力弥の持ってきた御台所からの密書を受け取ります。

 ・由良助の動向を確かめに、敵もやってくる

由良助の本心を確かめに来るのは、味方ばかりではありません。敵の鷺坂坂内と斧九太夫もやってきました。

太夫は、以前塩冶家の家老でしたから、由良助とは元同僚。芸者遊びをしつつ一献酌み交わす体で、九太夫は探りを入れます。命日が翌日であるにもかかわらず、生ものを食べるように勧めると、由良助も生ものを平気な顔で一口で食べてしまいます。

 

 ・→今月は、ここから。「吊り灯篭」からです。

また、刀を置き忘れていったりするので刀がどんな状態なのか調べてみると、赤さびだらけ。全く緊張感のない様子に九太夫たちも敵討ちの気はなさそうだと判断しますが、九太夫は、縁の下にもぐり、さらに調べを続けます。

 ・密書を読む→それを読むお軽と九太夫 =名シーン

一人になった由良助は、先ほど力弥が持ってきた密書を読みます。明かりの下で巻紙をスルスルと読み進めます。スルスルと下に降りてきた手紙を読むのが、縁の下の九太夫。そしてもう一人、その手紙を読んでいる人がいました。酔い覚ましに、2階の窓を開けて涼んでいたお軽。なんと、鏡を使って、由良助の読んでいる手紙をこっそりのぞき見。

何というか好奇心が旺盛な女性なんですね。お軽は。

ココが有名な、由良助が手紙を読み、縁の下で九太夫がするすると落ちてくる手紙を読み、2階からはお軽がのぞき見しているという名シーンです。あんなに注意深かった由良助がずいぶん間抜けな状況じゃないかとつっこみたくなりますが、とても絵になる場面です。

コト! お軽のかんざしが下に落ちて、静寂が破られます。

 ・由良助、お軽に身請けの相談

由良助は、お軽に密書を読まれたことに気づき、身請けして殺そうとします。
身請けして、3日もたてば自由にしてやると言われ、単純に喜ぶお軽。そして、それを夫、勘平に報告しようと筆をとる。
そこへ来た平右衛門は、妹お軽に身請けの相談があったことを知る。やはり、由良助に敵討ちの意思はねえのかと意気消沈する平右衛門ですが、お軽は
「兄さん、(意思は)あるぞえ」と耳打ちをするのです。

手紙を見たお軽は、由良助に敵討ちの意思があることはわかった。けれども自分の身請けとなんの関係があるのはわかっていません。

平右衛門は、はたと気づきます。由良助は、手紙を見てしまったお軽を殺すつもりだ。

 ・平右衛門いきなりお軽に斬りつける

お軽にいきなり切りつける平右衛門。密書を読んだお軽を殺して、由良助に差し出せばお供を許してくれるかもしれないと平右衛門は考えたのです。

夫も親もいるのだからと逃げ惑うお軽に、平右衛門は、実は勘平も父も亡くなったことを涙ながらに告げます。

大変なショックを受けるお軽ですが、夫も父もいないとなってはもう生きていても仕方がないと、覚悟を決め、兄のお役に立とうと死ぬ気になったところで、由良助が現れます。

平右衛門とお軽兄妹の本心がわかったと、平右衛門には仲間に加わることを許し、お軽には、夫の代わりに仇を討てよと、刀にお軽の手を添えさせて、縁の下の九太夫を討たせるのです。


見得よろしく、幕。

見どころ

 ・緊迫感と華やかさとほのぼのが絶妙のバランス

ストーリーで書くと、緊迫感のほうが勝ってしまうようですが、その緊迫感を和らげる華やかな茶屋の雰囲気。また、お軽のかわいらしさや実直な平右衛門とのほのぼのしたやり取りが緊迫感を和らげます。

 ・名シーンは、何度見てもすばらしい構図

手紙を読む由良助。鏡を使って盗みみるお軽。縁の下で上から降りてくる手紙を読む九太夫。絵になる構図です。かんざしは、いつもちゃんと「今この時!」というときにちゃんと落ちるのは、不思議ですね。トリックあるのかな(あります)。

 ・少し軽いお軽と実直な平右衛門の兄妹愛

それほど思慮深いとは言えないこの兄妹ですが、勘平ラブなお軽と、仇討ち仲間に入れてほしい平右衛門、どちらも一途で正直な憎めない兄妹です。
遊女となったことを恥ずかしく思うお軽ですが、平右衛門に目を細めて「きれいになったなあ、ちょいと立ってその姿をこの兄に見せてくれ」なんて言われると、立ち姿を見せ、「こうでござんすか」なんて、くるりと回って後姿を見せたりするところが、この上もなくかわいい。その後、兄に突然切りつけられて、うわーと木戸の向こうまで逃げて、そろそろ戻るところの兄妹のやりとりも、とてもかわいい。

その後夫も父親も死んだと知って、兄に殺されようとするお軽ですが、打算もウソの何もない、正直な二人が、由良助の心を打つのです。

 ・最後に見せる由良助の怒り

味方さえ欺く由良助は、九太夫の誘いにも乗ることなく、生ものを一口で食べて、ヘラヘラとしていますが、その恨みは最後に爆発します。

最後に、九太夫に対する恨み、無念のセリフで、いかに由良助が五臓六腑を絞り出すほどの怒りを抑えていたのかがわかります。とりわけ、生ものを食べさせられたときには「五体も一度に悩乱し、四十四の骨々も砕くるようにあったわい。ええ夜叉め、魔王め、人外め」と九太夫を打ち据え、お軽に仇を討たせます。そして、仲居達の手前、なにもなかったかのように平右衛門に
「食らい酔うたるその客を、加茂川で、な。水雑炊を食らわせい」と命じるのです。

この後、八段目、九段目、十段目と話はさらに続き、十一段目の討ち入りに向かって突き進みますが、華やかさでいえば、七段目が一番かな。

 

六段目は「勘平腹切の場」はこちら!

munakatayoko.hatenablog.com

2022年9月秀山祭の七段目観劇レポはこちら!

munakatayoko.hatenablog.com

上演スケジュール

初日1月2日(土)→千穐楽1月27日(水)

休演日12日(火) 19日(火)

 

2部は、午後2時45分開演※開場は開演の40分前を予定

 

チケット金額、売り場

1等席15000円

2等席11000円

3階A席5000円

3階B席3000円

1階桟敷席16000円

 

チケットは、歌舞伎座木挽町広場チケット売り場、または

チケットWeb松竹

 にて購入できます。

 

歌舞伎座アクセス

東京メトロ日比谷線・都営浅草線銀座駅[3番出口]
東京メトロ銀座線・丸ノ内線日比谷線 銀座駅[A7番出口]徒歩5分
◯ JR・東京メトロ 東京駅 タクシー10分

 

感染予防対策

歌舞伎座は厳重な対策をとっています。くわしくはこちら

https://www.kabuki-bito.jp/news/6137/

 

1月のほかの演目はこちら。

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