さあ!名作平家女御島 2020年11月国立劇場は、序幕の六波羅清盛館の場からです!
登場人物
平相国入道清盛 言わずと知れた平清盛。憎々し。俊寛の妻の美しさに一目ぼれ。
東屋 俊寛の妻で、捕らえられて清盛の前に差し出される。絶世の美女。
能登守教経 清盛の甥。 平家の中でも1.2を争う文武両道の御大将。
越中次郎兵衛盛次 東屋を捕らえてくる。
有王丸 俊寛の家来
鹿ケ谷の陰謀とは
平家女御島は、鹿ケ谷陰謀事件をモデルにしたお話です。覚えていますか?歴史で習った「鹿ケ谷の陰謀」。
平治の乱(1159年)で、源義朝氏を破った平清盛は武士として最初の太政大臣となります。(1167年)「此一門にあらざらむ人はみな人非人なるべし」と平時忠が言ったというのもこのころ。おごる平氏に、次第に貴族や院などから反感が高まりました。
そして起こったのが、鹿ケ谷の陰謀で、俊寛は藤原成経、平康頼と鬼界ヶ島へ配流となります。
鬼界ヶ島に流された俊寛のお話ですが、今回は序幕の六波羅清盛館の場もあるので、よりわかりやすいですね。
あらすじ
東屋の美しさに、清盛一目ぼれ。自分に仕えるように命じる
幕開け。重臣たちが語り合っています。
清盛の威勢について。後白河院の謀反も、俊寛たちを流罪にしたので一件落着。
徳子さまも懐妊した。
これで、男子誕生なら万々歳
などと、語り合い、状況説明をしてくれます。
そこへ越中次郎兵衛盛次が俊寛の妻、東屋を生け捕って連れてきます。
控えた東屋を見た重臣たち、思わず見惚れてしまうほどの美しさです。
御簾があがり、清盛が登場。謀反の張本人である俊寛を憎む清盛は、
「その女房の面、とくと見ん」
とにらみつけます。するとその美しさに一目ぼれ。どのくらいドキュンと来たかというと。
〽三十ばかりの乱れ髪、盛り過ぎたる妖桃の、春を傷めるその風情、入道は気をとられ、思わず大口かっと開け、とろとろ見惚れおわします
ですって(笑)。すぐに成敗しようとする越中次郎兵衛盛次を押しとどめて、
「俊寛には罪あれども、女房に咎はなし。」なんて言って、我に宮仕えせよと迫るのです。
東屋、拒絶する
しかし、東屋は毅然とそれを断ります。この東屋におのれらの手を触れさせてなるものか。
〽はったとにらむ目に涙、包みかねてぞ見えにける。
清盛は、なおも迫ります。
「やあ、入道を情け知らずとは、そりゃ汝の了見ちがい」
わしは、そんな非道な人間ではないぞよ。だって、義朝の妻の常盤御前を見てみろ。と清盛は言うのです。
仇である自分に甘え、そのおかげで牛若丸の命は助かったではないかと。そして、俊寛を島から戻せるかどうかは、お前の答えにかかっている。なんていうのです。エロ爺っぷりに磨きがかかりますねえ!
待っておるぞよ、なんて言って奥に引っ込みます。
女房どもも東屋に同情し、越中次郎兵衛盛次も、
「時勢につくも一つの道、身の果報。あの常盤御前の仕合せがよい証拠」と説得しますが、
東屋は
「エエ、言うな言うな。常盤御前の仕合せとは、武士の口から聞きがたい。仇の妾となるようないたずら者とこの東屋、比べらるるも口惜しい!」
と、両手で耳をふさいでしまいます。
東屋 自害する
さて、夫、俊寛に操を立てる東屋。家来の有王丸が助けに来てくれることを待ちわびます。そこへ来たのが教経。一門の棟梁である清盛の言葉に背いてはならない、さりとて女の操を守る心も、立派なこと。どちらも立てる道は何かと問い、東屋は教経の温情に感謝しつつ、自害し、教経は介錯をします。
そこに突入する有王丸。清盛の首打ったるで~と大音声ですが、そこに教経が落ち着いて登場。俊寛のためにも無駄死にするなとさとし、立ち去らせるのでした。
このとき、通常では出てこない菊王丸が有王丸と立ち合いをしますが、初演ではあったそうです。今回中村歌昇が有王丸、弟の中村種之助が菊王丸で立ち合いをします。気迫のこもった立ち会いが見られそうですね。
見どころ
好色ぶりが見どころの清盛
続く鬼界ヶ島では、俊寛を演じる役者が、この場では清盛を演じることが多いのかな。古い時代はわかりませんが、2018年の平家女御島でも、芝翫が両方を演じています。
真逆の人間を演じ分けで、役者の力が出ますね。この場では、単にエロ爺…。
東屋の美貌と、決然と操を守る凛々しさ
2020年11月の東屋は、菊之助。観る前から清盛を決然と拒絶するあたりの情景、目に浮かびます。凛々しく、美しく、毅然として、正しい。菊之助にピッタリですね。大きな目に涙をたたえ、バサバサと長いまつげはふるえるでしょう。ちええ!
常盤御前と東屋の生き方の違い
東屋は、常盤御前を相当批判していますが、その常盤御前は、今月歌舞伎座3部に出ていらっしゃいます。(^^)/
常盤御前を批判する東屋ですが、常盤御前だって、子どもたちを守るために必死だったわけで、そう責めては気の毒。現に常盤は、第三段三場で宗清から不義放埓を責められると、「常盤が不義とは情けなや。俊寛が妻の自害は身の貞女を守るばかり。死んで源氏のためにならば東づれに負けうか」と反発していってのける。
自分のことだけ考えて死んだ方がよほど、楽。生きていく方が大変なのよ!と常盤は言いたかったのでしょうか。
どちらも悲しい女の生きざまですが、最後の段で東屋は亡霊となって、千鳥と一緒に清盛を滅ぼします。悔しい、辛いと涙するだけでは終わらない女たちの戦いですね。
2020年10月の配役
平相国入道清盛 中村吉右衛門 芸の人。「いっときコロナを忘れてもらい、皆さまに泣いていただけるカタルシスをお届けできれば」と、決意も新たに語りました。
東屋 尾上菊之助 美しき人よ。ああ。
吉右衛門は性格の真逆の人を演じ分けますが、菊之助は、この場では東屋、鬼界ヶ島の場では、丹左衛門尉基康。こちらは性の演じ分け。丹左衛門尉基康は、涼やかな常識のある役です。東屋を演じるにあたり、「東屋の麗しさ、美しさをいかに出せるか」と意欲を語っています。
菊之助にとって、吉右衛門は義父。多くの物を学び続けています。
能登守教経 中村歌六 東屋に操の道をたてさせ、有王丸を説得するというお役。存在感がなければ、なんだかうやむやになりがち。貫禄の演技で有無を言わせません!
有王丸 中村歌昇 一本気の有王丸。東屋を救えず。無念のリタイア。その後東屋の首を携えて、俊寛一行に会いに敷名の浦磯部に行くのですが、ここで俊寛が鬼界ヶ島に取り残されたことを知り、切腹しようとして、また周囲に止められるんです。まだまだずっと有王丸は重要人物として最後まで出てきます。(鬼界ヶ島には出てきませんが)
菊王丸 中村種之助
二幕目の 鬼界ヶ島の場はこちら。ぜひ、話の続きを読んでください。圧倒的なスケールです。
11月の国立劇場のほかの演目についてはこちら
上演スケジュール。チケット購入など
【第一部】12時開演(午後2時20分終演予定)→平家女御島はこちら♪
【第二部】午後4時30分(午後7時終演予定)
各部、30分の幕間あり。
チケットの取り扱いは、以下にて。
または、電話(10時~6時) 0570-07-9900 03-3230-3000
または、国立劇場窓口(10時~6時)
国立劇場所在地、アクセスはこちら.