「初めての歌舞伎を楽しもう」munakatayoko’s blog

すばらしき日本の芸能、歌舞伎。初心者にわかりやすく説明します♪

「京人形」が、歌舞伎初心者におすすめの理由 2020年10月歌舞伎座

2020年10月歌舞伎座の1部の演目「銘作左小刀 京人形」(めいさくひだりこがたな きょうにんぎょう)

 

初めて歌舞伎を見る方に絶賛おススメです。その理由は4点。

わかりやすい。美しい。ユーモラス。ユニークな立ち回り。

では、あらすじを追いつつ順に説明していきましょう。

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ストーリーがわかりやすい

 予習がなくてもわかりやすい。テンポもよく、それほど長い話ではないので、飽きずに楽しめます。

 

主人公は、左甚五郎。この名前もなんとなく皆さんご存じですよね。有名な名工で、東照宮の「眠り猫」をはじめとして名作を世に出しています。なぜ「左」なのか。その才能をねたんだ大工に、右腕をすっぽり切り落とされ、その後左手で彫り続けたからという説もあるとか。こわっ!

 

さてその、甚五郎。このお話では、花魁の小車太夫に首ったけ。あんまり好きだから、等身大の小車太夫を彫りはじめます。

 

出来上がった京人形を見て、

「は~。幸せ♪ 隣から常磐津が聞こえてくるし、小車太夫はそばにいるし。まるでお大尽みたい♪」

と甚五郎はすっかりご機嫌。女房おとくに、「仲居役をしてくれ」と頼んで、お大尽ごっこ

女房おとくも、「はいはい」と気軽に応じ、仲居役を請け負ってくれます(笑)。ノリがいい。

いい気持ちになっていると、人形が動き出す。魂こめて作ったので魂が宿ったのだけれど、なんと甚五郎の魂が宿ってしまったので、美しい人形なのに、動きが武骨!

おもしろいですね。尤も、人形に魂が宿る話は、結構ありますね。2月の菅原伝授手習鑑の「道明寺」もそうでした。

昔は今よりもずっと、人形に魂が宿るという考え方が一般的だったのでしょうね。

 

さて、顔はきれいなのに、動作がおっさん。これは困った。そこで気づいたのが、甚五郎が持っていた小車太夫が落とした鏡。

甚五郎が鏡をすーっと京人形のたもとに入れると、とたんにしなしなと花魁の風情に。

踊っているうちに、鏡が落ちると、またおっさんに!

前半は、そのやりとり。二人の踊りも楽しいし、気のいいおとくもいい味を出しています。

美しすぎる七之助

 本当の京人形より美しい。そうです。京人形の七之助が美しすぎる!なぜ七之助はあんなに美しいんでしょうねえ。ナウシカクシャナ役のときも、顔が美しすぎて、決まりすぎていて怖いほど。どの場面も決まっていた。

そこに人間の個性が感じられないほど、完璧に美しい。そしてうまい。

 

七之助曰く、京人形はなかなか難しいとのこと。そりゃそうでしょ。人形のふりもカクカクしていてむずかしいのに、おっさん人形だったり、一瞬にして花魁人形になったり、それも花魁そのものにもなったりして。

七之助自身、先日の中村屋生配信で語っていました。
「なかなかむずかしいんです。人形振りとも違うので、どこに気持ちを入れていいかが、前にやったときはむずかしくて、ん-と考えながらずっとやっていた思い出があります。今回はどうにか」だそうです。いやはや、初日から完璧でした。

ユーモラス。上品なコントを観るよう

 京人形が動き始めて、腰が抜けるほど驚く甚五郎や、喜んで一緒に踊ったり、鏡をとって自分の髪を撫でつけていたら人形がまたおっさんになってしまったり。

 

こう書いてみると、とても上品なコントですよねえ。みていてこちらの顔も思わず緩んでしまいます。見ているみなさん幸せな気分になっています。最近のお笑いは、何がおもしろいのか私には理解しかねるような品のないものが多いですが、ぜひお笑い芸人さんたちにも歌舞伎をみてもらいたいものです。

 

歌舞伎って難しいんじゃないの?と思われる方も多いですが、こんなにゆるーい、こんなに楽しい演目もあるって知ってほしいですね。

七之助人形は、顔ももちろん美しいですが、衣裳もとってもきれいですよ。

大工道具を使ったユニークな立ち回り

 後半は、ちょっと趣向がかわって、大騒ぎになります。

いきなり姫君が出て来たりして、よくわからない展開になるけれど、実は甚五郎夫妻は、昔の上司の娘を自分の娘としてかくまっているのです。それが悪い奴に知られてしまったので、逃げなくちゃ!となります。

そこへ来たのは姫君の忠臣照平。甚五郎を姫を奪った悪者と勘違いして、バサーと右腕を斬ってしまう。 

姫がとりなし、誤解が解け、平身低頭謝る照平。姫君と忠臣照平の二人は逃げていく。そこへ入ってくるのは、姫を奪おうとやってきた大工たち。(なぜ大工?)。そこで大立ち回りになるのです。

歌舞伎の立ち回りは、大仰だったりスローモーだったりと楽しいですが、この「京人形」の立ち回りは、大工さんたちに襲われるので、大工道具を使った立ち回りとなります。

大工さんたちは大工道具をもって襲ってくるので、甚五郎はその大工道具を奪ってやっつけます。たとえばトンカチを奪って、大工さんをトントン頭から打って沈めたり、カンナでシャーっと足元からお尻、背中と大工さんを削って行ったり、とってもユーモラスですよ。

 

子どもといっしょに見ても楽しい「京人形」。ぜひこの機会に歌舞伎座に足を運んでみてくださいね。

あ。上演時間はわずか38分。子どもでも飽きる暇もありません!

概況

天保14(1843)年に江戸市村座で初演されたものをもとに、改訂が繰り返され、万延元年(1860)年江戸市村座河竹黙阿弥が作ったものが本作の初演となる。

・三代目桜田治助作詞、四代目岸澤式佐・二代目杵屋勝五郎作曲。常磐津と長唄の掛け合い(異なる邦楽を交互に演奏)が華やか。

登場人物

左甚五郎 芝翫

女房おとく 門之助

娘おみつ実は義照妹井筒姫 新悟

奴照平 福之助←芝翫の次男

京人形の精 七之助

 

上演スケジュール・チケット値段・チケット購入場所

第1部

11時~11時38分

開場は開演40分前

休演は8日(木)、19日(月)

1等席 8000円

2等席 5000円

3等席 3000円

 

チケットは、歌舞伎座木挽町広場チケット売り場、または

チケットWeb松竹 

 にて購入できます。

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 2021年6月大歌舞伎の「京人形」についてはこちら!

munakatayoko.hatenablog.com