9月歌舞伎座の第4部は、午後7時15分開演。お勤め帰りにもぶらりと行ける時間帯ですね。
9月の4つの演目の中で、初めて歌舞伎を見るならば、1部か2部をお勧めしたいと思っていましたが、実際に観てみると、4部もおすすめでした。(3部もしみじみといいですが!)
玉様とともに、歌舞伎座ツアー
4部は、ザッツ玉三郎! 映像と舞踊の特別公演。
前半は、口上というので、どういうことかと思っていましたが、玉様が、歌舞伎座の舞台裏を案内してくれるという趣向でした!
舞台があけば、なんと背景は歌舞伎座。歌舞伎座の前に玉三郎丈が正座して私たちを迎え入れてくれるではありませんか。くるりと映像が一転すると、舞台からみた観客席などが映り、意外と役者から観客席は丸見えなのね~などと感じられます。
それから玉三郎丈は、にこやかに微笑みながら、私たちを椅子に座らせたまま、歌舞伎座の奈落(舞台の地下)まで案内してくれます。セリから下がって舞台からスーッと玉様の姿が見えなくなると、映像で舞台裏を案内してくれる仕組み。 私たち観客はただうれしく、後をついていくのみです(椅子に座ったまま(笑))。そしてすっぽんの下のセリから、玉様がエレベーターに乗ってすーっと再び上がって行けば、映像から今度はリアルにすっぽんから玉様が姿を現すのでした。そのあたりの自然なことは、さすが映像のプロ、玉様です。
「歌舞伎座の舞台裏って、こんなに倉庫みたいなのかー」とか、「奈落の底って10メートルも下なんか、ヒョ~。ビルの4階くらいあるんだって、うわー」とか、「260年前に日本で発明された回り舞台は…半周55秒。1周は約2分弱」と誇らしくお話する玉様に「ほー」と唸る私たち。
具体的に知る知識に加えて、玉様に案内されながら共にめぐる楽しさ、そして玉様が本当に楽しそうに微笑んで案内してくれることが、何やらうれしくてうれしくて。得難い経験だと思えるのです。だって、こんなことないでしょ。
「鳥屋にいる時間は、閉ざされているけれども役者にとっては特別な時間でもあります」なんて話してくれる玉様に、これからは鳥屋で待つ役者さんにも思いを馳せます!と、心の中で誓う私です。
私たち観客は、口を閉じ、マスクをしつつも、エレベーターを上がったり下がったり、ゆっくり歩いたり、つぶやいたり、心は玉様とともに、自由自在に歌舞伎座舞台裏を楽しんだのでした。
コロナ禍にあって、どんな演目を出そうかということになったとき、こんな趣向にしようというのは、観客の気持ちを考えていなければできないこと。玉様のその気持ちが本当にうれしく思えるのでした。
後半は鷺娘
そして、後半!鷺娘です。
先日のブログでも書きましたように、鷺娘はもうフルバージョンはしないと玉様は明言しているので、2度とあの素晴らしい鷺娘を見ることはないと思っていたのに、また見られた。もちろん映像が主体なんですが、思っていたよりずっとリアル玉様も多く踊ってくれました。
あの鷺娘というのは、なんというか日本舞踊を超えている(といったら 日本舞踊に失礼に当たるのかな)。先日、先代の雀右衛門の「鷺娘」を観る機会があったけれど、振り付けも全く違う。まさに玉様のための玉様ならではの、玉様のみの鷺娘なのです。
玉様の振り付けはアンナ・パブロワの「瀕死の白鳥」を取り入れており、最後は息絶えるのですが、最後の一瞬まで、美しい踊りです。
日本舞踊はわからないなあなんて先入観にはとらわれず、初心者の方でも楽しめる4部。ぜひ見てくださいね! 玉三郎の「鷺娘」を直接観たことは、必ず将来の宝物になりますよ♪映像は大きいので、3階からも見やすいのではないでしょうか。
余談ですが、私は2009年(平成21年1月)鷺娘を、玉三郎ファンの叔母と見ました。先日もブログに書きましたが、詳しくはこちら。
http://munakatayoko.hatenablog.com/entry/2020/08/31/234109
今回、4部を観て、亡くなった叔母もみていたらさぞかし喜んだだろうなあ。あーあ。と思いながら観ていたんです。そして、はっと気づいたら、その日私が着ていたブラウスが、叔母の形見でもらったものでした。全然そんなこと気づかずに着ていて、偶然だったのですが、それがわかったとたん、叔母と一緒に観ている気持ちになって、何やら温かいものに包まれた気持ちがしました。
叔母もなかなかやるもんです。
9月歌舞伎座は、26日(土)まで。
チケットはチケットweb松竹、または直接歌舞伎座下木挽町広場のチケット売り場にて。
http://www.ticket-web-shochiku.com/t/