こんにちは。今日は7月歌舞伎座で上演されている「高時」のご紹介です。
予習にお役立てください♪
■概況■
上演時間54分。
■登場人物■
北條高時 市川右團次
秋田入道 市川寿猿
衣笠 中村児太郎
■あらすじ■
簡単に言うと。
人間よりも犬を大事にし、闘犬やお酒におぼれる、傲慢で愚かな北條高時が、天狗にさんざんこらしめられるというお話です。
全体は、3つのシーンに分かれます。
シーン1
幕開けは、立派な籠に犬がのり、家来が数人いるところです。
家来たちは「人と生まれた身の上で、犬のお供はまっぴらだ」
「早く家に帰って酒でものみたい」などとぼやいています。
この犬「雲竜」は、闘犬として負けたことがないので、高時のお気に入りなのです。
渚(安達三郎の母)という女性と孫がそこを通りかかります。小さな犬が飛び出すというアクシデントがあります。これを見た雲竜が籠から飛び出し、慌てた犬が渚にぶつかり、雲竜は渚にかみついてしまいます。
そこで、安達三郎が犬を打ち殺し、雲竜を殺した罪で捕らえられ引っ立てられていきます。
このシーンはストーリーにとりわけ意味を持つわけではありません。執権北条高時は、犬を籠に乗せ、人間よりも大切にするような愚かな君主であることを表すエピソードです。
高時は、闘犬にあけくれ、田楽舞にうつつを抜かして政務をおろそかにしているのです。
浅葱幕が落とされて、一瞬のうちに舞台が変わり、北条家の奥殿です。
シーン2では高時が登場します。
美しい女性たちを侍らせて、お酒を飲んでいます。そこで愛犬を殺されたことを報告され、怒りに燃えます。
打ち殺したものを死罪に致せとわめく高時を、大仏陸奥守(おさらぎむつのかみ)が制します。
何卒寛大な処置をという大仏に
「こいつを死刑にしなければ、また愛犬を殺す奴が現れるかもしれない。なぜ止める」という高時。
「たとえ愛犬であっても、獣のために人命を失うのは、正しい道とは言えません。万民の手本であるならば、助命が正しいかと思う」
と言っても「お前の言うことは聞かぬ」と言って聞きません。
「ご先祖様が、正しい道を貫いてきたからこそ、向かう敵を切り、今の繁栄を得ることができたのです。そこから何代も続き、謀反を企てるものもなく、天下平穏だったのに、人命より獣を大切にするようなことがあれば、頼りない君主だと下々の者から言われかねません。なにとぞ助命を」と嘆願すると、
高時は
「もっともだ。これからは犬を殺すものがあっても、死刑にはするまい」納得するのです、ところが、死罪にしないのは、次回から。今回はどうしても許せないから、安達三郎を死刑にすると言います。一同困り果てたところへ現れたのが、秋田城之介入道延明
「どうしても聞き入れないならしょうがない。けれどもご先祖さまの命日にあたるのでそのようなことは、ご先祖様も悲しむでしょう」と諭します。
そこでようやく高時は、安達三郎を助命する気になります。
家来はその場を去り、女たちを相手に酒をのみ始めたところ、雷がなり、女たちも怖がって去っていきます。
シーン3
部屋の明かりが消え、天狗が現れます、田楽法師かと勘違いし、喜ぶ高時ですが、天狗たちに翻弄され、一緒に舞ったり、くるくると回されたり、すっかり馬鹿にされてしまうのでした。
後に残ったのは、天狗の無数の足跡と、はははははという天狗の笑い声のみでした。
■見どころ■
天狗の跳躍や、ダンス。ここかと思えばあそこ。まさに天狗のように飛んだり跳ねたり、回ったり。歌舞伎役者の身体能力の高さも見てくださいね。
高時をこらしめてくれるのが、痛快です。
今回高時を演じるのは、右團次。今回は3回目とのことで、生き生きと演じています。
■余談■
今回高時登場の場面では、歌舞伎では珍しく、横向きに座っているんです。つまり上手から下手に向かって座っています。
そのため、上手側の観客席だと、少々セリフが聞きづらいかも。
幕見席などで、今から席を選べるなら、なるべく下手側にいたほうがよく聞こえそうです。
とはいえ、天狗に翻弄されるシーンではまったくそれはお構いなし。さんざんやりこめられてばったり倒れちゃいますよ。お楽しみに。