「初めての歌舞伎を楽しもう」munakatayoko’s blog

すばらしき日本の芸能、歌舞伎。初心者にわかりやすく説明します♪

「恋飛脚大和往来」こいびきゃくやまとおうらい

恋飛脚大和往来(こいびきゃくやまとおうらい)

※(こいのたよりやまとおうらい)という読み方もあります。

 

元になった実話 宝永年間(1704~11)亀屋忠兵衛が金銀を盗んでその金で遊女を身請け

 

近松門左衛門が 冥途の飛脚 その後改作の末、歌舞伎化されたのが恋飛脚大和往来。

長い話の中の、封印切りと新口村の場面が現在ではよく上演される。

 八右衛門のキャラクターなどが変化。冥途の飛脚では、八右衛門が、親身になって忠兵衛のことを思いやっている親友なんですねー。文楽ではこっちが上演されることが多いようです。

 

 

■簡単なあらすじ

飛脚屋亀屋忠兵衛が、遊女を身請けするために公金に手を出してしまい、破滅する話。

 

■登場人物

・忠兵衛(仁左衛門) 亀屋の養子。(実家は大和の百姓) 遊女梅川と恋仲。人当たりはいいので人気はあるが、軽くて調子がよくて、粗忽。飛脚屋のボンボンだが、自分で自由になる金はない。

・梅川(孝太郎) 遊女だがピュアで、忠兵衛に心底惚れている。

・八右衛門(愛之助) 梅川に惚れているので忠兵衛の存在が面白くない。人望はないが、金はある。梅川を身請けするために250両持ってきた。

・井筒屋の女将おえん 忠兵衛と梅川の恋に、理解を示しており、久々に来た忠兵衛を梅川に会わせてやる。

槌屋治右衛門 梅川を抱えている親方。こちらも人間味があり、梅川の幸せを考えてくれている。

 

■詳しいあらすじ

 

一場 会えない時間が愛を育てる!?の巻

 

幕開けは、井筒屋の座敷でお大尽が遊んでいる様子。梅川は忠兵衛と会えず、元気がない。

忠兵衛は、梅川を身請けするべく、50両の前金を支払ったが、残金の支払い期日を過ぎてしまった。そんな中、八右衛門が身請けをすると言い出したためますます気が重い。忠兵衛に手紙も出したのに返事が来ない。おえんを相手に愚痴っている。

 

忠兵衛が登場。蔵屋敷に為替の金をおさめに行く途中、ついつい足が梅川のいる井筒屋に向いてしまう。

蔵屋敷に、はよ行きましょ、行きましょ。でもなあ、せっかくここまで来たのに、なんや心残りー」

なーんて、ぐずぐず、ふらふら。きょろきょろとうろちょろする忠兵衛。

手ぬぐいを頭にのっけて「梶原源太は、わしかしらんえ~」ってのは、梶原源太という2枚目のことを言っているので、まあまあチョウシのってます。

 

「おえーんさん」なんて高い声を出して、おえんを呼び出し、やっと梅川と会えました。

 

二場 せっかく会えたのだもの。少しゆっくりしていってよの巻

 

久しぶりに来た忠兵衛を見て、おえんが二人だけになれるようウラの離れの外に案内してやる。

 

忠兵衛は、早く蔵屋敷に行かなければいけないので、気が気ではないが、それでも梅川に会えた喜びで、ついイチャイチャ。

イチャイチャしたり、ちょっとわざといじめたり、まあ、普通の恋人同士ですね。

 

三場 えーい!もう我慢できない!封印切り!!の巻

 

座敷にもどった梅川のところへ親方が戻って来る。八右衛門に身請けされるなんて嫌だ。忠兵衛がいいと泣く梅川に、そうしてやるかという気持ちになる親方。

 

八右衛門が来る。忠兵衛は二階の座敷へ。

八右衛門は、身請けするつもりで来たのに、断られて腹が立ち、忠兵衛の悪口を言い始める。

 

マシンガンのようにあることないこと言う八右衛門(多少は真実もあるから余計腹がたつ)に、2階で聞いている忠兵衛は、イライライライラ。

ついに我慢ができず、下に降りてくる。

その後、さらに八右衛門の挑発が続き、ついに忠兵衛は、親からもらった小遣いだと嘘を言って、切ってはいけない公金の封印を切ってしまう。

 

身請けの金だと喜ぶ人たち。あっけにとられる八右衛門は、しかし紙包みから公金であることがわかり、役所に走っていく。

 

二人だけになったときに、忠兵衛は梅川に実はこの金は公金であることを伝え、こうなっては死罪をまぬかれないから、一緒に死んでくれとたのむ。

 

喜び沸き返る人々の中、二人は悲痛な思いで、道行へと出ていく。そのギャップがなんともな幕切れです。

 

新口村は、その後の二人の道行の話です。新口村も良く上演されます。封印切りの話の続きかあ。と思って観てくださいね。

 

■見どころ

今月は、松嶋屋祭りだ!忠兵衛が仁左衛門。おえんが秀太郎(仁左衛門兄)梅川が孝太郎(仁左衛門長男)上方のふんわりした和事の芸を堪能しましょう。

 

1忠兵衛の、前半から後半への変化

仁左衛門が軽い関西弁の男を、軽やかに演じる前半。そして、八右衛門の話を聞きながら、2階でイライラしていく様子。そして、ついに階下に降りて八右衛門と直接対決をしていき、次第に感情が高ぶっていく様子。最後、封印を切るところの心理描写では、三味線も効果的に使われている。忠兵衛はしょうもない奴だけれども、やっぱりどうも憎めない。仁左衛門が天下一品。

 

2憎々しい八右衛門

ちゃらんぽらんしているようでも人気は絶大な忠兵衛に比べ、アブラムシだのなんだのと悪口を言われてますますひねくれる八右衛門は、それでもやっぱり憎たらしい。愛之助がポンポンガンガンガツガツと関西弁で追い詰めていく。

 

3いい味をだしているおえん

女将おえんが、いい味。

最近はおえん役が多く、「おえんといえば秀太郎」とまで言われますが、ご本人はじつはその評価はとても寂しいんですって。

2019年6月1日のブログでは

http://hidetarokabuki.blog65.fc2.com/page-1.html

よくお褒めの言葉で「秀太郎と言えばおえん。おえんと言えば秀太郎 」と言われるのはとても寂しいです。私の梅川を見てくださっていたご贔屓もだんだん少なくなってしまったし、今元気に舞台を勤めているのを、ありがたく思わねばなりませんね~

とポロリと胸中を明かしています。

ちなみに仁左衛門丈は、八右衛門役のほうが好きらしいですよ♪

今回は、八右衛門役を演じた愛之助、だみ声炸裂の関西弁で、すごくよかったですね。

 

千日前とは…

おえんさんが、最後に門出を祝う気持ちで「名残は惜しいが、千日言っても仕方がない」と言います。がその時の忠兵衛の胸中は、実は穏やかならざるものがあります。

大阪みなみの千日前は、昔は墓地や刑場があったところ。もう自分は生きていても刑場に行くしかないと思えば、ああもう一刻もこんなところにいられない。早く、少しでも遠くへ。3日なりとも夫婦でいたいという梅川を連れて、早く!そんな気持ちになったことでしょう。

 

おもしろかった。何度もみたかった封印切り。

今度は誰の封印切りが見られるのかな?と思っていたら、巡業でやるのね。

 西コースで観られます。ぜひどうぞ!

www.kabuki-bito.jp