「初めての歌舞伎を楽しもう」munakatayoko’s blog

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曽我綉俠御所染(そがもようたてしのごしょぞめ) 御所五郎蔵

2019年の團菊祭で上演される曽我綉俠御所染(そがもようたてしのごしょぞめ) のあらすじと見どころをご紹介します。

 

●元治元年(1864年)江戸市村座で初演。

●作者 河竹黙阿弥 

 

◆登場人物

  • 御所五郎蔵(松也) 元は陸奥国大名浅間巴之丞に仕えていた須崎角弥。腰元の皐月といい仲になってしまい、土右衛門に密告されて追放され、今は五郎蔵と名乗っている。皐月とは夫婦になったが、ちょっと短気なところがある。殿様が金の工面に困っていることを知り、何とか200両を調達したいと思っている。

 

  • 星影土右衛門(彦三郎)  元は陸奥国大名浅間巴之丞に仕えていた。五郎蔵の昔の同僚だが、皐月に横恋慕し、皐月と五郎蔵の仲を密告した。皐月を思いきれず追ってきた。五郎蔵にとっては仇敵。天敵。何とか皐月を手に入れたい。

 

  • 傾城皐月 (梅枝) 五郎蔵の妻。昔、浅間家に仕えていた腰元だったが、今は甲屋の傾城。

 

  • 傾城逢州 (右近) 浅間巴之丞が、入れあげている甲屋の傾城。浅間巴之丞は逢州に入れあげすぎたため、200両の未払いとなってしまっている。

 

  • 土右衛門の家来たち へっぴり腰で情けなく、小心者で意地汚く、小ずるくて滑稽な4人組。

 

◆あらすじ

・200両工面したい五郎蔵とそれを助けたい皐月。

・皐月を自分のものにしたい土右衛門は、200両をやるから、五郎蔵と別れるように迫る。

・窮した皐月は、本心とは裏腹に五郎蔵への別れ状を書き、それに激怒する五郎蔵。

・たまたま皐月の打掛を着て土右衛門と出かけた逢州を、見間違えて殺してしまう五郎蔵。

 

 

<みどころ>

 

■序幕 

ココで会ったが百年目!にくい天敵に再び出会う!の巻

 

廓町が舞台なので、華やかな幕開けです。最初は、あんまと台屋(廓で料理を整える仕出し屋のこと)が、けんかとなっています。仲裁されて去っていきます。

そこへ五郎蔵一味と天敵・土右衛門一味が登場。久しぶりに会って、土右衛門は皐月を身請けしたいなどといい、五郎蔵はけんもほろろに断ったものだから一触即発となるところ、兜屋与五郎に仲裁されます。

 

美しい廓町の様子や、ずらりと並ぶ若衆。一触即発のピリピリ感。最後に与五郎に仲裁されるところもビシっとポーズが決まりますよ。

 

■二幕目 第一場 五條坂甲屋奥座敷の場 

縁切りは本当なの?愛する人を信じられないの?の巻

 

昔の主、浅間巴之丞が200両の支払いをできなくて困っているということを聞き、何とかしてあげたいと悩む皐月と五郎蔵。

 

そこへ土右衛門が来て、金をやるから自分になびけというわけです。

「金が手に入らずば、のめのめと、よもや生きてはおられまい。生かすも殺すもそなたの心、ひとつ性根を据えて、返事をしやれ」

愛する五郎蔵は金ができなければ死んでしまうかもしれない。そういわれて

しぶしぶ去り状を書き、五郎蔵に渡します。

「これを手切れにさっぱりと切れる心になったれば、後、お前の顔を見るも今日を限りと明日からは、世の習いでござんすわいな」

でもこの言い方、籠鶴瓶の八橋みたいに非情ではなくて、ホントに辛そうに言うんですよ。気づけよ!五郎蔵。と思います…。

 

しかし、短気な五郎蔵は激怒。今月はカッとする役がなぜか似合う松也ですから、はまりそうです。

 

それをなだめるのが奥から出てきた逢州です。

美しく、さすが殿様が入れあげるだけはある、気品と優しさと凛としたところが感じられないといけませんね。今月は右近クン♪

「どうぞ、こらえてくだしゃんせい、なあ」

 

五郎蔵も殿様の寵愛を受ける逢州から止められてはぐうの音も出ず、こんな金はいらねーや!と投げつけて去っていきます。

晦日に月の出る廓(さと)も、闇があるから覚えていろ!」

 

その後、土右衛門は早く皐月を連れていきたいのですが、皐月は癪を起してしまいます。

「一緒に行かなければ色になった甲斐がないわい」とごねる土右衛門。優しい逢州は、土右衛門と皐月、二人の気持ちを考えて、皐月の打掛を着て、私が一緒に行ってあげるというのです。他の人から見たらわからないからいいでしょ。というわけです。

逢州に、本心を書いた手紙を託す皐月。

「月も出ぬのに啼くカラス、心ならねば胸騒ぎ。ああ、苦労の絶えぬことじゃなあ」と心を痛めるのです。

 

見どころとしては、皐月の苦悩と、それを全然わからない五郎蔵の哀しさと無念さです。

 

■二幕目 第二場 五條坂廓内夜更けの場

後悔先に立たず!短気は損気!覆水盆に返らず!の巻

 

五郎蔵は、待ち伏せています。そして打掛を着た逢州を、皐月と間違えて殺してしまうのです。その後、土右衛門と対決をします。

 

見どころは、逢州の死にざまが美しく哀れです。遠くに新内が聞こえ、暗闇の中でのスローな斬り合いは、残忍で美しくも哀れな場面です。

 

そしていよいよ土右衛門との対決となります。

 

大体上演はここまでですが、この後どうなるのか気になるところですよね。

 

通常上演されませんが、この後に、「五郎蔵内腹切の場」があります。

ただでさえ殺人は許されぬことなのに、こともあろうに逢州は、浅間巴之丞が寵愛している傾城。五郎蔵は腹を切り、皐月とともに死んでいきます。

 

2019年團菊祭では、美しい逢州が右近、哀しみの皐月が梅枝、かっこいいけど短気な五郎蔵が松也、声の良く通る彦三郎が土右衛門です♪

 

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