その3金丸座の魅力 から続きます
こんぴら歌舞伎、駆け足で振り返ります。
昼の部は「義経千本桜のすし屋」と「心中月夜星野屋」。
グーっと来ちゃうすし屋のあとに、お腹を抱えて笑える星野屋で打ち出し。気持ちよくスッキリでした。
昼の部
すし屋
すし屋は、昼夜5演目の中で、個人的には一番良かった。
12月に京都で仁左衛門丈のすし屋を観たあとなので、入り込めるかどうかと思っていましたが、勘九郎の熱演で、しびれました。
仁左衛門丈がやるときには前段の「木の実」、「小金吾討死」もかかりますから、話の流れがよくわかります。
なぜ、いきなり弥左衛門はコソコソと荷物をもって帰ってきたのか。権太の金と違う桶に入れたものは何だったのか?なぜそれは首だったのか。そして、身代わりに家族を差し出す権太は家族を愛していなかったのか?
その辺が、すし屋のみだとわかりづらいですよね。でも前段を理解していると、弥左衛門が出てきたときからもう緊張して、舞台を食い入るようにみてしまいます。
こんぴら座では、中車演ずる弥左衛門が出てきたときに、少しクスクスと笑い声が起こっていました。どういうことでしょう?弥左衛門が何かやらかす悪者に見えたのでしょうか?本来弥左衛門は実直で忠義者で、今も主のために必死になって身代わりの首を手に入れて、なんとかかんとかやっと家に戻ってきたところなのです。クスクス笑うのはまったく意味が不明です。笑いを期待した客がいたのか。それとも中車さんの演技が悪かったのか?
12月の南座では弥左衛門は誰がやったのかと思ったら、左團次さんでした。
権太は、若葉内侍と六代君の身代わりに自分の妻子を梶原景時に渡します。その時の顔!じっと妻子を見送る。子どもが振り返る。こっちをみるんじゃねえ、行け、行くんだ!みたいな顔が、涙を誘います。勘九郎の熱演にしびれます。
権太はごんたくれでしたが、家族のことは非常に愛していて、かわいがり、仲良く暮らしていたのです。それがわかるのが「木の実」、最後に親孝行をしようと思い切った策に出たわけですが、父弥左衛門はそれを理解する前に、権太を許せず、斬ってしまいます。あとから権太の想いを知っても後の祭り。仁左衛門型は、父に褒めてもらおうと話しかけた瞬間に刺されます。勘九郎は、ホッと油断していたときに、後ろから刺されます。どちらも悲しみ。
勘九郎さんには、ぜひ将来前段からやってほしいものです。
星野屋
さて、まったく毛色の違うのが、星野屋。これは2018年8月納涼歌舞伎で初演、今回が2度目?かな。ちょいちょい再演されそうですね。落語がもとになっているお話ですが、そのまんまではありませんね。
歌舞伎が好きな旦那というところにしたのが、歌舞伎バージョンのおもしろいところ。歌舞伎風のセリフに、ついつい調子よく合わせちゃうのが愛人のおたか。そのため心中の約束をさせられちゃうのですが、どちらもしたたかで、おいそれとは相手の手にはかからないし、どちらかというと天然なおたかについているのが、さらに上手を行くおたかの母ちゃん。だましだまされ、だまされだまし、の怒涛のばかしあいで最後まで笑いっぱなしです。
たくましい江戸の庶民が、まぶしいよ。
七之助も扇雀も中車も、観客と一体になって、ノリノリでやっていました。
というわけで、楽しく気持ちよく笑って打ち出し。
夜の部
夜の部は、「傾城反魂香」と「高坏」と「芝浜革財布」
わかりやすい演目ばかりで、楽しかったですね。初めての方も多いに楽しめたのではないでしょうか。「高坏」は下駄のタップダンス。足元が見えず、残念でしたが、それでも勘九郎の身体能力の高さ、しなやかな動き、ほほえみ、ジャンプ、足ピーンなど、十分満喫することができました。
こんぴら歌舞伎は、1部2部とも時間が短くて、他に楽しむ余裕もあり、その辺もいいなと思いますー。1部は11時から2時。2部は3時から6時過ぎくらいだったかな。
来年も行けるものならぜひ行きたいです(´▽`*)