3月の歌舞伎座。昼の部最初の演目は予習不要の肩ひじ張らずに楽しめる「女鳴神」です。もともと歌舞伎十八番に『鳴神』という作品があります。この主人公の男女が入れ替わった作品です。
・登場人物
鳴神尼 片岡孝太郎
雲野絶間之助 中村雁治郎
・あらすじ
松永弾正の娘が、尼となって龍王ヶ峰の山深く籠っています。松永弾正は、信長に滅ぼされたため、鳴神尼は信長を恨んでいます。
法力で信長を困らせようと、近くの大滝の滝つぼに龍神たちを封じ込めたのです。龍神たちは雨を降らせる神様ですから、世の中には雨が降らず日照りが続いてしまっています。
信長はその呪いを解くために、イケメンの雲野絶間之助を鳴神尼のもとに遣わします。
鳴神尼は、最初のうちこそ、弟子の白雲尼、黒雲尼に向かって話をしている絶間之助を無視して、修業中を装っています。しかし次第に気になって、ついつい話に引き込まれ、しかも絶間之助は、許婚の富若丸に似ていて、とっても素敵じゃないの♪ 次第に夢中になって戒壇から転がりおちるところがかわいいですね。そこは鳴神と同じです。
気絶している鳴神尼に気付けの水を口移しで飲ませる、ニクイ絶間之助。
鳴神尼はすっかりポーっとなり、二人は奥の座敷へしっぽりと…。
しばらくして一人ででてきた絶間之助は、「今だ!」とばかりに滝つぼにあるしめ縄をばさーっと切ります。どーっと龍神たちが天にのぼり、雨が降り、雷が鳴ります。(作り物の龍神たちがちょっとかわいいです)
「はて、雨が降る。雷が鳴る!さては行法やぶられしか!」
鳴神尼は怒り狂います!かわいさ余って憎さ百倍!そりゃそうですよね。鳴神尼の怒りはごもっとも!
そして、恐ろしい姿に変身するのです。衣裳は白地に真っ赤な炎がグアラグアラ燃え盛っています。髪は派手に逆立ち、隈取はこの世のものではない青の筋が入り、おお怖!
鳴神尼を退治にしに来た佐久間玄蕃盛政が、ノシノシと花道から舞台へ鳴神尼を戻していく「押し戻し」と言われる演出でさらに盛り上がります。
「松嶋屋によく似た化け物めーーー!」なんて台詞も飛び出し、丁々発止で見得でおわり。
鳴神と女鳴神。演目はどっちが好きかと聞かれたら、個人的に言えば鳴神のほうが好きかな。どうしてかと考えたのですが、なんだか女鳴神は、鳴神尼がかわいそうになっちゃって(笑)。
男鳴神の場合は、強そうな人(男)に、弱そうな人(女)が勝つから痛快。女鳴神は、なんだか男にだまされてかわいそう!って思っちゃうんですよね。まあ私が女だからかもしれませんが。
・見どころ
・尼さんが、ポーっとイケメンに騙されていく様
・弟子の白雲尼、黒雲尼も結構コミカルな役回りで楽しい
・ぶっかえり(衣裳の糸をさっと引き抜き、着物の上半身を裏返すと、衣裳も変われば性格や状況も変わる演出) しおらしい尼さんが、恐ろしい化け物に変身!
・押し戻し 荒れ狂う妖怪や化け物を花道から舞台へ押し戻す演出
楽しめますよ!!どうぞお気楽に!
・上演時間
11時から12時5分(65分)
幕見なら
チケット販売開始は10時半。1200円です。やっすー!
3月27日まで。ぜひどうぞ。