「初めての歌舞伎を楽しもう」munakatayoko’s blog

すばらしき日本の芸能、歌舞伎。初心者にわかりやすく説明します♪

於染久松色読販(おそめひさまつうきなのよみうり)柳島妙見~大詰めまで 2018年歌舞伎座12月昼の部

大阪で起こったお染・久松の心中事件がベースのベース。「新版歌祭文」などで劇化されたが、「於染久松色読販」は、舞台を江戸に移し、四世鶴屋南北が1813年(文化10年)江戸森田座で初演。七役早替わり(7人の登場人物を次々と一人で早替わりしてみせる)、魅力たっぷりの悪人のゆすりなどが出てきてエンタメ性たっぷり。

序幕は、早替わりで見せ、中盤はストーリーで見せ、大詰めは立ち回りと早替わりで魅せます。

早替わりは、面白いのですが、あくまでも「着せ替えショーで終わってはいけない」というのが先人の教え。7人は、性別、環境、身分、性格、すべて違いますから、衣裳だけではなく、中身もキチンと替えないと、平板な「着せ替えショー」になってしまうというのです。

とはいえ、とにかくすごい。最初のうちは「お、かわったぞ。」なんて余裕で観ていますが、最後にはもうなんでそうなるの?なんで???え?の連続。観ているだけでも目が回るので、本人及び、早替わりを支えるスタッフさんは戦争でしょうね。特に大詰めはすごいです。

ストーリーや背景もしっかり把握しつつ、早替わりは肩の力を抜いて思う存分楽しみましょう~!


★登場人物!(下線部分は、お染七替わりで一人で早変わりをする役)

お染
久松:油屋に丁稚奉公(お家の再興を願っている)
竹川:久松の姉であり、奥女中。お家の再興を願う。
清兵衛:お染の花婿候補。
善六:油屋番頭。お染に横恋慕し、油屋乗っ取りをたくらんでいる。
お光:久松の許嫁。恋して、狂っちゃう。
小糸:芸者.多三郎と恋仲。鈴木弥忠太(喜兵衛に義光を盗ませた張本人)に横恋慕されている。
貞昌:お染の継母。お染には清兵衛と結婚してほしいと思っている。
土手のお六:悪婆(あくば)。悪婆とは、女方の役柄の一つ。ちょっとどすのきいたかっこいい中年の女性。昔の命の恩人である奥女中竹川から頼まれて、百両を工面したい。

鬼門の喜兵衛(松緑)お六の亭主
盗んだものを質入れしちゃってその百両を使いこんでしまったので、何とか工面したい。
多三郎:お染の兄。小糸と恋仲

 

キーアイテム

名刀義光と折紙(保証書)
折紙がどこにあって、どう移動していくかは把握しておきたい。

 

今日のお話に入るまでの経緯

・千葉家の家宝名刀義光と折紙(保証書)が紛失したため、久松の父は切腹、お家断絶となっている。
・久松と姉、竹川はお家の再興を願い、紛失した名刀義光と折紙(保証書)を探しているが、どうも油屋にあるらしいとの情報を得て、久松は油屋に丁稚奉公にはいった。久松はお染といい仲に。
・お染の母(継母)貞昌尼は、お染に山家屋清兵衛と結婚してほしいと思っている。
・油屋では、お染に横恋慕する善六が、乗っ取りをたくらんでいる。
・千葉家の家宝名刀義光と折紙(保証書)を盗んで油屋(質屋)に入れたのは、喜兵衛。質に入れて得た100両は使い込み。


【柳島妙見の場】


ここでは、折紙がどう移動していくのか。丁稚の久太はどうなっていくのか、野菜売りの久作はどうなるのかしっかりチェックしておきましょう。

油屋のお染が、久松と柳島妙見に参詣に来るというシーンです。お染・久松がクルクルと早替わりをします。

 

・善六は、蔵にある名刀義光と折紙(保証書)を持ち出してしまうよう多三郎(お染の兄)をそそのかし、盗ませた。
・その悪だくみを丁稚の久太が見ていた。
・善六は、その現場を見られたので、悪事が露見すると困ると思い、丁稚の久太を体よく江戸から追い出す。(その後、久太はフグともち米を食べて目を回して失神。死んだと思われる)

・善六は手に入れた折紙を嫁菜売りの久作の籠の中に隠す。

・善六は、その籠から折り紙を取ろうとするが、渡す渡さないで久作と喧嘩になる。
・善六の手下(油屋の使用人たち)も巻き込んでの喧嘩となり、久作は額に傷を負ってしまい、袷のそでも破られてしまう。

・山家屋清兵衛が、喧嘩の仲裁にはいる。久作に詫びて袷と一分金を渡す。

 

 
【料理屋橋本の場】→早替わり重視

 

ここは、早替わりを見せるためのシーンなので、ストーリーにはあまり関係ない。下線のある人を一役でやっているので、どうぞびっくりしてください♪


弥忠太は小糸(多三郎と恋仲)を追いかけまわす
善六はお染を追いかけまわす。どちらもふられる。
ふられたふたりは、部屋へ入る久松の姿を見て、お染久松の密会と思い、踏み込むが中にいたのは奥女中の竹川だった。

 

【小梅莨屋(たばこや)の場】ストーリー重視


いよいよ、面白いところです!土手のお六と鬼門の喜兵衛が出てきて、ますますストーリーが面白くなってきます。ここと瓦町油屋の場は、早替わりはありません。

 

悪の魅力たっぷりの夫婦(お互いに別の理由で百両を工面しなければならない)のが、ひょんなことから丁稚の死骸を手に入れ(のちに蘇生)、ゆすりを思いつく。

【瓦町油屋の場】ストーリー重視


土手のお六と喜兵衛。ゆすりを決行!しかし失敗して、すごすごと退散する。

莨屋と油屋のあらすじに関しては、以前書いたこちらを参照してください。

munakatayoko.hatenablog.com


【瓦町座敷の場】→早替わり重視


貞昌尼は、お染に清兵衛と結婚するよう説得。一方、久松は土蔵に閉じ込められています。お染久松は、もはやこれまでと心中を決意します。お染は籠に乗って先に隅田堤へと向かう。

 

【裏手土蔵の場】


鬼門の喜兵衛、土蔵を破って刀を盗み出そうとしますが、久松が中にいたので見つかり、二人はもみ合いに。どう見ても久松のほうがなよなよで弱そうですが、争った末、久松は喜兵衛を切り、お染の後を追い、隅田堤に向かう。

 

大詰め
向島道行の場】ここの早替わりは、もう本当に謎!

 

立ち回りと早替わりで楽しんでください♪


・駕籠かきがお染を善六の元に連れ去ろうとしているが、久松が取り返す。

・久松の婚約者のお光が、久松とお染の噂を聞き、久松恋しさで気が狂う。

お染久松は追手に囲まれるが土手のお六が登場して助ける。

 

立ち回りがあり、早替わりがあり、見得あって、チョンとはいって、「本日昼の部は、これぎり~」と壱太郎クンの朗々とした声が歌舞伎座内に響き渡り、幕。

 

壱太郎クンは、玉三郎丈に「土手のお六は、歌舞伎座全部を強請るつもりでないと、4階まで声が届かないよ」と言われていたそう。立派に4階まで届きました。立派でした~。

まだまだ若い壱太郎クンですが、その覚悟、これからの歌舞伎座をしょって立つその気概や、よし。そんな気合のこもったお染久松でした。

 

幕見

序幕が11:15売り出し 12:50~13:52 1000円

柳島妙見の場~小梅莨屋(たばこや)の場

 

2幕目 13:05売り出し 14:02~14:48 900円

瓦町油屋の場~裏手土蔵の場

 

大詰め 14:15売り出し 15:03~15:40 900円

向島道行の場

です。通してみることもできます。

 

ではでは、お楽しみを~。

 

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