5月25日(金)歌舞伎座ギャラリーにて歌舞伎夜話。ちょっと不明な点は「?」にしてあります。わかればご指摘ください。
爽やかなブルーのジャケットの米吉クン。ブルー系のチェックのジャケットの歌六さん。どちらも真っ白なパンツで、さっそうと登場してくれました。
▲ピンぼけですみません。米吉さんスペインでご購入のジャケットお似合い。
おしゃべり好きの米吉クンと、穏やかで渋い歌六さんの絶妙なコントお話に、会場はドッカンドッカンと終始笑いの絶えない、でも昔の貴重なお話、今年に入ってから演じたお役についてもたっぷり聞かせてくれた 内容の濃い夜話となりました。
紫綬褒章受章
「はい!司会の米吉です」と最初からハイテンション。戸部さん、今日はゲストらしい。
全員にお土産のフィナンシェを配る米吉さん、マメですねえ。
・授賞式の後日?パーティー?には、博多座があり出られなかったのがとっても残念。
山城屋さんには「(博多座)休んだらええがな~」と言われたけれど、弥陀六がいないわけにはいかなくて。(ここ、いつのことかよくわからず)
今年の出演演目について
1月勧進帳
歌六「常陸坊は、意外なことに初役。四天王も2回目。白鷗(初代)、紀尾井町(松緑2)が弁慶をやるときには、四天王の役は吉右衛門、辰之助の兄さんたちのところにいく。兄さんたちが弁慶をやるころになると、四天王の役は若手にいってしまうので、谷間だったんですね」
1月浅草
米吉「浅草に出てました。お早(引窓)が難しくて四苦八苦。お早が丹平(巳之助)にすがるところで、巳之助に「修ちゃん、お、重い…。右手、重い」と言われた。
恒例のお年玉は、みんななんて言おうか、うんうんうなって困っている。ぶつぶつ練習している種之助に話しかけて怒られる。種之助に「楽しみにしているのはお前だけだ。お前に20分やるからずっとしゃべれ。芝居には出なくていい」と言われた(笑)
2月一條大蔵譚
歌六・一條大蔵譚は昭和56年の歌六襲名のときにやった思い出のある演目。いずれやるときにはぜひ勘解由をやらせてほしいと常々思っていたので、今回は立候補した。
歌六襲名時(昭和56年)の思いで。
勘三郎17 にみっちりけいこをつけられた。その時の配役は
鬼次郎 仁左衛門13
お京 芝翫7
鳴瀬 我童13
というそうそうたる面々。
勘三郎17が先輩たちに気を遣って、けいこ中に休憩をしましょう。こちらで休みましょう。どうぞどうぞと案内するのが舞台の真ん前の席、ズラリとお歴々が目の前に並んでじーっと見ているのでつらかった。(笑)
もっぱら勘三郎17に教わっていたが、途中でダウン(?)していなくなったところ、歌右衛門6が「これからは私がみますよ」といってみてくれた。
歌六「ちなみに勘解由は立候補したけれど、常陸坊は立候補していません。しかし、襲名の狂言に出させてもらうのはうれしいことです」
3月 滝の白糸
新派「滝の白糸」に出た。米吉→桔梗。歌六→春平
米吉「僕も新派。こちらも新派。家族で新派」
結構大変だった。
あらかじめビデオを集めて観たが、どれも台本が違う!
白糸の殺しの場面が詳細に描かれているものもあれば、春平が出てこない本もあった。
歌六「ちょうど新派に、春平に適した役者がいなかったんでしょうね」
結局、大江良太郎モノを参考にした。(昭和48年玉三郎主演のもののことか?違うかも)
4月御園座
御園座は、役者にとって使いづらい。トイレもお風呂も少ない。エントランスが悪い。正面から入りたいだろう。
米吉「1フロアにトイレが大の個室2 小が3しかないんです!トイレからあふれて廊下にまで並んでいる。石切が始まる前に、左團次のおじさんと父が並んで待っている。大庭と六郎太夫がトイレ待ち。ププ」爆笑
戸部「え!拵えの格好で?」
栄之丞(籠釣瓶)
歌六 禿役で出たことがある、成駒屋が抱いてくれて「出るときに教えてね」と言われた。
栄之丞をやるにあたっては、守田勘弥の印象が強かったので、そこに準じたいと思っていた。播磨屋に教えを乞うたところ、
「あ。喜の字(勘弥)だよね~」
白鷗に教えを乞うと、やはり
「あ。喜の字だよね~」
兄弟で同じこと言いやがると思った。
骨太で男らしい栄之丞になるよう、一生懸命務めた。
米吉「それにしても、(歌六は)口上、栄之丞(籠釣瓶)、六郎太夫(石切)、喜左衛門(吉田屋)と4役ですからねえ、忙しかったですよねえ」
歌六「ほんと。なんで人の家の襲名に、こんなに出なくちゃいけないのかと」
米吉「しんせき!しんせき! 親せきだから!」爆笑
歌六「最近は、加齢、加齢ってそればかり言われちゃって」
米吉「カレー、カレーってナイルのおやじじゃないんだから」
歌六「あいつ(ナイルの親父)、最近紋付作ったんだ。それがだんだん似合ってきやがった。困ったよね」
戸部「紋って、どんなんですかね?」
米吉「インドの神様らしいです。こんな感じ(とポーズ。そっくり返った手と横顔)」爆笑
このあたり、ほとんど漫才となっております。
歌六 「4月の御園座の石切では、歌昇、種之助、米吉は、なにすっかわかんねーから、花道から出るときもチラチラと気になってそっちを見ちゃう」。切られて倒れてからも3人をじーっと薄目でみる。刀の持ち方が違うやつがいた!
舞台を親子で出ることについて
ハラハラするが、全然違う劇場で何かやらかしているのも心配だから、そばにいる方がまだいい。目の届くところで迷惑をかけてほしい、近くにいれば謝るのもすぐできるし(笑)
今後の出演
6月
米吉 野晒悟助と夏祭浪花鑑で出ます!
会場の中でこのお芝居(野晒悟助)を観たことのある人はいますか?誰もいませんでした。
野晒悟助は、菊五郎の相手役
米吉「モテ男がいて、金持ちの女の子と、貧乏な女の子がどっちも好きになるんですけれど、タッチの差で、金持ちの女の子が勝つって話でーす!僕が金持ちの女の子。貧乏な子は児太郎クン。たぶん児太郎ファンから、いやがらせが来るんではないかと。本当はあっちが金持ちだけど」笑。
歌六「夏祭浪花鑑の釣船三婦で出ます。今回は吉右衛門の団七ですので別格でしょう」
米吉「今回は和史クンがでるので、観客席キャーっとなって全部持って行っちゃいそうですね」
7月は巡業で~す。
勘三郎17の思い出
・勘三郎さんが水戸黄門をやったとき。久里子さんも出演していた。話の中では久里子さんと歌六さん(?)が兄弟というのがメインテーマの芝居だったのに、勘三郎さん中日を過ぎたころにやっと「久里子と兄弟だったのねえ~」。筋わかっていない。
米吉「書き抜き(自分のセリフだけ書きぬいたもの)ですもんね。全体の筋、知らない。リチャード3世も書き抜きだったという…笑」
・リチャード3世 1964年の?
勘三郎17「バッキンガム公」とどうしても言えなくて、「バッキン公」に変えちゃだめかと監督に頼んだ(もしくは、「浅利君、監督に頼んで」といった?)
勘三郎17花道から出てきて、間違えて敵をハグしてしまった。敵が小声で「違います、敵です。敵です」と言ったところ、スッと離れて「お、お~の~れ~」爆笑。
先輩方の教え方
舞台でパッと困るようなことを言う。髪結新三で「それは、どこから買ってきたんだい?」なんて突拍子もなく聞くから、あわてて「深川」と答えると、「ずいぶん遠くから来たんだねえ~」。次のときにそう答えると、またさらにアドリブで聞かれる。
舞台であっても地理を理解していないといけない。深川では遠すぎてリアルではない。今舞台の上で自分はどういう世界にいるのかよく理解しておけという教えだった。
中村錦之助(歌六さんの叔父にあたる)は、子役で「五人男」(だったか?)に出たときに「小僧、なんて名だい?」と聞かれて「おがわきんいち」と舞台で本名を言ってしまい、怒られたそうだ。「三太」でもなんでもいいからその舞台での自分の背景などをしっかりと把握しておくことを教えられた。舞台の上でいろいろなことを覚えてきたと言っていた。
歌六さん。ポンと刀で押されるところを、立ち位置が悪くて、ぐぐぐーーーと押されて本当にみぞおちに食らって、ブホっとなって息ができなくなったことも。
歌六「立ち位置が悪かった自分がいけないのです。相手役が一番美しく見えるような位置にちゃんといないといけない」
戸部「なんすか、最終的にいい話っぽくなってますね」笑。
歌六さんは、叔父の中村錦之助、中村嘉津雄、祖父3代目時蔵にもとてもかわいがられたそう。現時蔵さん、又五郎さんは少し年下なため、祖父3代目時蔵のことも覚えていない。
【その他】
・携帯問題。米吉 浅草でびっくりしたのが、ふすまをスーッと開けたら、客席から携帯の着信音が鳴った。それが「ジュピター」だった。ふすまを締めたら音がやんだ。(苦笑)
最後は
米吉「あのー。今日の戸部さんのギャラ、僕につけといてくださいね」
歌六「戸部さん、仕事していないね」
戸部「ギャラといっても、残業代ですけれど、いいすか?」
米吉「え~!?そうなの~」
まだまだしゃべりたそうな米吉クン。今度は夜話3時間バージョンでとか、松也兄さんとスイーツバージョンでとか、いろいろ種は尽きまじ。
結論。
1.米吉クンは相当おしゃべりだが、惣領息子の惣領としてしっかりしている。よく親せきに一人はいる「あいつに聞けば、親せき関係から、何から何までなんでもわかる」やつ。でした。
2.お土産のフィナンシェはおいしかった。ごちそうさまです。
3.歌昇、種之助とはボロクソに言うほど、仲が良いということがわかった。
(従兄弟だし、特に種ちゃんとは同い年だしね)
4、一家に一人米吉がいたらうるさい( *´艸`)だろうなあ。でも修学旅行とかで不在だと家の中が静かで急に寂しくなっちゃいそう。はっ。今は地方に行くことも多いから、お母さまは、米吉クンがいるときといないときのギャップが激しいだろうなあ。
5、米吉クン、お母さまに似ていた。
6.弟君がいたらしいが、わからなかった。悔しい。
舞台上、素晴らしい存在感を放つ、歌六さん。かわいらしくチャーミングな米吉さん。これからもますますご活躍ください!
以上。