さて、コクーンです。
コクーン歌舞伎に行く前に、ちょっと予習をしておきましょう。
シアターコクーンは、1989年渋谷に誕生した大型複合文化施設Bunkamuraの中にあります。そのシアターコクーンで上演される歌舞伎がコクーン歌舞伎です。
こちらにコクーン歌舞伎の詳しい説明を書いた記事はこちら!後編は三人吉三の観劇レポだけれど、前編はコクーン歌舞伎についてです。
では今回上演される「切られ与三郎」とは。
通常演じられるのは、「木更津浜辺の場」と三幕目の「源氏棚妾宅の場」のみ。
「木更津浜辺の場」
★金持ちのボンボン与三郎と、親分の妾のお富が木更津の浜で出会い、お互いに一目ぼれ。
★しかし、親分の妾だったため、与三郎は全身34ヶ所も切られた上で簀巻きにされる。お富は海に飛び込むが、和泉屋の大番頭の多左衛門に助けられる。
★お互いに死んだと思っていた。
「源氏棚妾宅の場」
★3年後、与三郎はごろつきになっている。蝙蝠安というごろつきに誘われて、とある家に、小遣いをせびりに行く。
★なんと、そこの妾がお富だった。
「いやさ、お富、久しぶりだなあ」というセリフが有名で。「死んだはずだよ、お富さん」なんて歌もありましたね。若い人は知らないか…。
ここで、俺がこんな大変な思いをして生きてきたのに、お前はのうのうと妾になっていやがったのか!というショック
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多左衛門の「そんな関係ではない」というセリフを当然信じられない
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実は、多左衛門は、お富の実の兄だった
てなところで幕切れ。ざっくり過ぎて、すみません。
なわけですが、お富の色っぽさ(お化粧をしたり、番頭をいなしたり)や、与三郎のごろつきにはなったものの、どこか若旦那っぽさが匂うところとか、しびれどころがたくさんあります。
さて、通常はこの2幕ですが、本当はもっと長いお話です。今回のコクーンはその長いお話を忠実に読み起こして作っているということなので、楽しみです。
前々回の「三人吉三」が面白かった理由の一つがそれで、複雑なお話の謎解きをしてくれるので「そうだったのか!いつもなんとなく観ていたその部分は、こういうことだったのか」というストーリー全体、人間関係の複雑さがわかって、とても深いお話になっていました。その後、同じ三人吉三を観るうえでもとても深い見方ができたので、そういう意味ではコクーン歌舞伎の意義は大きいものがあると思います。
今回は、櫛田和美の演出・美術はそのまま。木ノ下歌舞伎主宰の木ノ下裕一が補綴ということで、とても楽しみです。
木ノ下裕一氏は、一度すべて昔の本のまま芝居を役者にさせ、そこから削って変えて補ってという作業をコツコツやるそうです。(木ノ下歌舞伎では。)
音楽は邦楽を捨ててしまうところが、コクーンの残念な部分で、今回はジャズだそうですからどうなることやら。マハーバーラタ(2017年10月歌舞伎座)のように、ほかの音楽を入れてもいいから邦楽の良さを生かしてほしいなと切に願います。
途中のお話に深みが加わり、七之助が舞台を疾走し、ジャズが響き渡るというその舞台を楽しみに、観に行ってくると致しましょう。観劇レポはのちほど。