絵本合法衢(えほんがっぽうがつじ)。私は、全部で5回見ました。(3階席1回。マクミで3回。1等席で1回)
千穐楽の日、午後に有明で用事もあったこともあり、朝の時点では、東銀座に行こうとは思っていなかったのです。
でも朝何気なくバッグにオペラグラスを入れたのは、やはり潜在的にそのつもり満々だったということでしょうか(笑)
有明で用事を済ませて、スマホで乗換案内を見てみれば、あら?東銀座近いじゃないの。とまるで今気づいたかのように、オペラグラスを握りしめる私笑。
千穐楽を見たかったのは、やはり一世一代だから。
この素晴らしい舞台を2度と見ることはできない。
歌舞伎は何度も同じ演目を上演しますから、違う役者で舞台を観ることは可能でしょうでも、仁左衛門さん以外では今月と同じ感動を得ることはないだろう。
というか、ほかの役者さんではたぶん見ないだろうなと思うと、やはり「これぎりー」の感動を得たくて、東銀座によりました。
混んでてすでにソールドアウトだったら、素直にあきらめて帰ろうと。
4時20分、売り出し時間過ぎてからの到着だったんだけれど序幕が57番、大詰めは41番で楽勝で買えたんですよね。
みんな!いいの?最後よ!という気持ちでした。
でまあ、5回目であっても素晴らしくて、「本日はこれぎりー」の挨拶が終わっても、拍手が鳴りやまず。
歌舞伎ってのは通常カーテンコールはないんです。ワンピースなどでは、やっていますが通常はなく特に仁左衛門さんはカーテンコールはやりません。
有名なエピソードとしては、「女殺油地獄」をやはり「一世一代」で終わったときに、終演後拍手が鳴りやまず、その後幕がスーッと空いたら殺されたお吉が、遺体のまま舞台に転がっていたということで、観客は「あー」となってあきらめて帰ったという話。
それくらい「仁左衛門はカテコをしない」というのは常識になっていますから、我々もそれを期待はしていない。そして、歌舞伎はそれでよいのだという気持ちもある。踏襲してほしいという気持ちもあった。
だから、仁左衛門をまた幕から出すために拍手をしていたわけではなくて、ただただ素晴らしかったから、拍手をしていたんです。わーっと立ち上がっている人もいましたし、そうでない人も。私もただただ「素晴らしかったなあ。ありがたかったなあ」という気持ちで拍手をしていました。手が痛くなるほどね。
そしたら、幕がもぞもぞ動いて、何やら気配がすると思ったら、幕があいて、そこに仁左衛門丈が正座していました。
「えーーー!うそー!」と、その時の観客のどよめきというか、驚きというか、感動というか。
仁左衛門丈は静かに歌舞伎座を上手から下手まで見渡して、そして手を合わせて深々とお辞儀をしたのです。
このときの映像が孝太郎さんのブログで掲載されていましたが、それを見てすごくビックリしました。
「え?こんなに短かった?」とびっくりしたのです。もっともっともっと長い感覚でした。
その場にいなければわかりませんが、たぶん5分くらい拍手をしていたらしいので、そこから全部ひっくるめての「感動の感覚・記憶」だったからでしょうか?
またそのご挨拶(言葉はないよ)が、本当に心がこもっており、観客の心に届く、胸を打つ挨拶だった。だから、長く感じたのでしょうか? おそらくどっちもでしょうね。
ちなみに、彌十郎さんのブログによれば、このとき、仁左衛門さんは彌十郎さんや時蔵さんとあいさつをして、着替えて、それでも拍手が鳴りやまないからまた元の衣裳に着替えて出てきてくれたそうです。
いやもう、涙が出ましたよ。本当にね。本当に行ってよかった。
本来であれば、4月26日に書きたかったブログ。今まで書けなかったのは、消化していなくて書けなかった。そして、早くも5月の初日が開けてしまいました。
早く5月について書かなければ。
すばらしい舞台を作ってくださったすべての方、ありがとうございます!
ちなみに3月も私は仁左衛門さんに呼ばれて(笑)、不思議な経験をしましたがその話はまた今度(笑)。