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「親子で歌舞伎を楽しもう」munakatayoko’s blog

あなたとお子さん。あなたとあなたの親。親子で歌舞伎を楽しめば、すばらしき日本の芸能も継承されていくのではないかな。

【文楽】曽根崎心中・絵本太閤記

文楽

文楽は、大学時代から観ていた。

最初に文楽を観たのは、一番いい席でも歌舞伎に比べるとぐっとお安い(確か当時は4000円くらい)という貧乏学生らしい動機だった。

国文科だったから、文章が美しく、床本ですべて読めるのもうれしい(今でも600円という安いパンフレットを買えば床本がついてくる。昔はもっと安かったはず)。義太夫でセリフが歌舞伎より聞き取りやすいというのも理由のひとつ。

 

何回か見るうちに、歌舞伎より好きかも…と思いつつ、卒論は「心中天網島」にして、世話物を中心にせっせと観に通った。

 

それから文楽は何回も観たけれど、子育て中は何十年も見ていなくて(どんだけ~?)、ここ3年くらいでまた見始めている。途中でグースカ寝たりもするから、友達を誘うのも恥ずかしく、ひとりで観て。

そうすると、ほかのおひとり様が話しかけてきたりして、それはそれで楽しかったりして。文楽の観客の雰囲気も好きなのだ。

ただ、あまり時代物は見たことがなかった。

今回は、たまたま曽根崎心中と絵本太閤記と両方を観るという縁に恵まれた。

曽根崎心中は絶対大好きだから、友達を連れて行って期待通りで大満足。

絵本太閤記は、今までの自分だったら絶対選ばない演目だけに、「どうなのかなあ」と思いつつ、チケットが2枚あったので、おずおずと友達を誘って行ってきた。

そしたら、とんでもなく良くて、それはガクガクするほどで、予想をはるかに超える素晴らしさだったのだ。

 

シンとした美しさの曽根崎心中も大好きだが、絵本太閤記の迫力はまたなんと言ったらいいのだろう。

 

腹の底から唸り出す義太夫の表現力の素晴らしさ。日本語の美しさ。色っぽさ。結構エロいところもあるけれど、人形だから生臭くない。それは、曽根崎もそうだけど。

加えて津軽三味線のようなド迫力の太棹三味線。これがすごかった。

 

 

ちなみに、絵本太功記ではどんな風に色っぽいかって?

たとえば森蘭丸と腰元しのぶ。蘭丸は躊躇しているんだけれど、しのぶがイケイケで誘うところなど。

ここに勤めに来たのだって、あなたのそばにいたいからなんだから~といって

「互ひの胸の下帯も、解けて嬉しい新枕、変はるまいぞのお詞が直ぐに心の誓詞ぞと、片時忘れぬ女房が、お側にいるがお嫌ならいっそ手にかけ給はれ」と、ぴんと拗ね木の糸桜

と迫ると、蘭丸も

心のほかの曲者(くせもの)にとりひしがれて背ななでさすり ←ここ、いいねえ!

でも今日は当直だからさあ、やめとくよーというところをさらにしのぶが

無理に引っ立て奥の間へ、入るや入るさの月影に、しのぶの乱れ、乱れ合ふ、わりなき

夢や結ぶらん

って、いろっぽくないですかー!

 

話がそれた。

 

絵本太閤記は、織田信長(尾田春長)を討った明智光秀(武智光秀)と羽柴秀吉(真柴久吉)のお話。だが、男性的な話ばかりではなくて、女性たちの物語もいろいろと絡み合っている。

女性は、さっきの腰元しのぶのほか、光秀の母さつき(老婆)、妻操(妻)、嫁初菊(許嫁)と出てくるが、なんといっても出色なのは、母さつき。矍鑠(かくしゃく)として、主君を討った息子を許せない気丈なババと、孫の凛々しさに目を細め、「顔を和らげる」ババと、「おもおもと腰をあげる」ババとどれもこれも、なんで人形なのに表情変わるの?と思うほどに表情がかわる。

 

たとえば、妻と嫁が三つ指をついてお辞儀をするときも、微妙に顎のひきかたが違うから母らしさ、嫁らしさがうまく表現されている。どの動作ひとつとってもその調子。

 

そして、太棹三味線の圧巻は、最後の尼崎の段。ベンベンベンベンと途中糸がちぎれたって、弾き続ける。光秀は母を失い、子を失くし、失意の中ベンベンは響き渡り、久吉とあらためて勝負をしようぜーというところで幕となる。

 

なにせ太閤記だから真柴久吉はかっこいいけれど、光秀がカッコ悪すぎてかわいそうなくらいだよね、と後で口の悪い友達と笑ってしまったけれど、長くなるからもうやめる。

やっぱり私、歌舞伎より文楽の方が好きなのかも…と、また思っている。

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幕間に熊本震災募金活動に自ら熱心に声掛けをする真柴久吉氏(笑)。

「親友加藤正清のために」と言ってました(笑)。もちろん募金投入。ツーショットで写真もとりましたよ、もちろん。

 

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パンフレット表紙には光秀とその母さつき。

 

ご縁をいただき、人形遣い吉田幸助さんに楽屋でお会いすることができた。感激である。

その話はまたいつか書ければうれしい。